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274話 今こそ!

 夕暮れの公園。

 見えるのは、とても綺麗な街並み。


 ユスティーナは照れているものの、怒っているわけじゃない。

 むしろ、これ以上ないくらいに心を高ぶらせているだろう。


 全ての条件が整っているような気がした。

 告白をするとしたら、最高のシチュエーションだ。

 たぶん、これ以上のものはないだろう。


「ユスティーナ、その……少し俺の話を聞いてくれないか?」

「話? うん、どんな話?」

「あー……なんていうか、その」


 きちんと告白をしようと、旅行に出る前から決めていたのだが……

 いざとなると尻込みしてしまう。


 もしも断られたら?

 もしも失敗したら?


 そんな悪い想像ばかり浮かんできて、どうしても言葉に詰まってしまう。


 体も思うように動いてくれない。

 まるで、水の中にいるかのようだ。


「あー……ダメだな、俺は。覚悟を決めたつもりなのに、ぜんぜん、覚悟が定まっていない」

「覚悟?」

「いや、こっちの話だ」


 これまで、それなりの修羅場をくぐってきたという自負はあるものの……

 その経験がまったく役に立たない。

 いざ告白しようとなると、戦闘時とはまったく別の緊張が襲いかかってくる。


 これを乗り越えないといけないのか。


 世の恋人達、あるいは既婚者達は、いったいどのようにしてこの緊張に打ち勝ってきたのだろうか?

 できることならば、アルマさんに話を聞いておきたかった。


 いや。

 そうなると、フレイシアさんにまで話が伝わる可能性もあるから、やめておいた方がいいのか?


 とりどめのない思考が並び、半ばパニックに陥ってしまう。


「アルト」


 そんな俺を正気に戻したのは、愛しい彼女の声だった。


 優しくて、澄んでいて、甘くて……

 そして、鈴が鳴るような綺麗な声。


「たぶん、だけど……なにか大事なお話があるんだよね?」


 俺の態度から、ユスティーナはなんとなく察しているみたいだ。

 頬を染めつつ、じっとこちらを見ている。


 その瞳は熱っぽく潤んでいた。

 期待するような、不安そうな……そんな視線を向けられる。


「そう……だな」


 ユスティーナの瞳を見て、改めて気持ちが定まった。


 俺は、この子が好きだ。

 いつもまっすぐで、優しくて、明るくて……

 そんな彼女に、どれだけの勇気をもらうことができたか。

 どれだけ救われてきたことか。


 これからもユスティーナと一緒にいたい。

 ずっとずっと一緒にいたい。


 彼女を愛しく想う気持ちで胸がいっぱいになり、さきほどまでの不安は消し飛ぶ。

 なにを迷う必要があるか。

 なにを不安に思う必要があるか。


 俺はただ、やるべきことをやるだけ。

 口にするべき台詞を言葉にすればいい。


 たった、それだけのことだ。


「ユスティーナ」

「ひゃ、ひゃい……!?」


 こちらの意図を察しているらしいユスティーナは、ここにきて緊張してきたらしく、声を裏返らせていた。

 そんな彼女もかわいらしいと思うのは、それだけ心を奪われているということなのか?


 変われば変わるものだな。

 自分自身に心の中で苦笑しつつ……

 今は、やるべきことをしっかりとする。


「大事な話があるんだ。聞いてくれるか?」

「う、うん……もちろんだよ」

「その、なんていうか……あー」


 うまい言葉を探そうとするものの、なにも出てこない。

 華麗に告白、というのは俺の柄じゃないか。

 なら、愚直だとしても、ストレートに想いを伝えよう。


「俺は話がうまい方じゃないから、ガッカリさせてしまうかもしれないが……でも、ストレートに言うことにした。あれこれと言葉を考えるよりは、その方が素直にわかってもらえると思う」

「う、うん……」

「俺は……ユスティーナが好きだ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のセリフ言うのに、275話かかりました。
[一言] ついに告白!
[一言] やっとアルトくん告白出来たね( *´ω`* )/ ずっと読んでて早い段階でお互いの好意に気付いてたからいつ告白するのかなぁとモヤモヤしてたけどようやくしてくれてホッとしてる! ユステ…
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