261話 ドラゴンエッグ
なにも知らない人が見れば、それは丸い石に見えるだろう。
事実、硬く重い。
ただ、知る人が見れば、その正体はすぐにわかる。
「えっ……竜の卵、ですか? その石のようなものが?」
「うん、間違いないよ……」
レイラは半信半疑という顔をしているが、ユスティーナは確信を抱いていた。
なにしろ、自分の種族の話なのだ。
間違えるわけがない。
「でも、それが本当なら、どうしてこのようなところに竜の卵が……?」
「わからないけど……」
困惑しつつ、ユスティーナは軽く卵を叩いてみた。
カンカンと、鉄を叩いたような音がする。
化石化しているというわけではなくて、これが普通だ。
卵も規格外で、そこらの鉄よりも硬い。
合金のようだ。
なぜ、このように硬い卵なのか?
諸説あるが……
竜はとても優れた種族ではあるが、それ故に、子孫を残さなければいけないという本能が薄く、生殖能力が低い。
卵を生む機会が皆無というわけではないが、他の生物と比べると、圧倒的に少ない。
故に、貴重な卵を敵などに食べられないため、壊されないため、鉄壁の要塞のように硬くなったのだと言われている。
そんな卵から、どのようにして孵化すればいいのか? という疑問はあるかもしれないが……
幼体であろうと、史上最強の生物の竜だ。
鉄のように硬い卵も自力で破り、生まれてくると言われている。
「うん、やっぱり、これは竜の卵で間違いないよ。ボクが見間違えるわけがないし、断言できるよ」
「そうなんですね……でも、どうしてエルトセルクさんは、そこまで詳しいんですか?」
「え? えっとぉ……」
実は竜です。
とバレたら、色々と問題になりそうだ。
特に竜の王女であることがバレるのはまずい。
一応、お忍びの旅なのだ。
周りに迷惑はかけられないし、領主の不正を暴くこともできなくなってしまうかもしれない。
なによりも、下手に騒ぎを起こしたら、帰った時に母親に説教されてしまうかもしれない。
それを想像して、ユスティーナはぶるりと震えた。
「ひ、秘密で♪」
人差し指を唇に当てて、パチリとウインク。
「……わかりました」
納得してくれた!?
内心、ユスティーナは驚きつつも、これ幸いと話を先に進める。
「どうしてこんなところに竜の卵があるのか、その理由が知りたいかな」
竜の卵を所持するということは、人間で例えるならば、赤子を誘拐するようなものだ。
もちろん、違法である。
ただ、ほぼほぼありえないことではあるが、卵の産みの親……竜の許可を得ていたのならば、違法性はない。
赤子を預かっているようなもので、罪に問われることはない。
「卵がここにある経緯を知りたいかな。違法な経緯があるとしたら、この卵一つで、領主を蹴落とすことができるよ」
「そうですね。では、その卵に関する資料を探しましょう。ここにあるかわかりませんが……卵がここにある以上、可能性は高いと思います」
「うん、そうだね」
二人は部屋の捜索を再開した。
卵に関する情報はないか?
あるいは、不正の証拠はないか?
見逃しがないように、念入りに重点的にチェックしていく。
「うーん、見つからないなあ」
あちらこちらを探してみるものの、目的の証拠や卵に関する情報は見つからない。
もしかしたら領主に感づかれるかもしれないし、あまり時間はかけられない。
ユスティーナは焦りを覚えるのだけど、しかし、こればかりはどうしようもならない。
焦る心をなんとか収めつつ、ひたすらに情報を求めて……
「あっ!?」
「どうしたんですかっ?」
「これ、そうじゃないかな? なんか、卵についての情報が書かれているっぽいんだけど……」
「えっと……あ、はい。そうですね。これは確かに、竜の卵についての情報です。えっと……どうやら、違法に手に入れたものらしいですね。目的はわかりませんが……それは間違いないと思います」
「やった、証拠ゲットだね!」
「はい!」
ユスティーナとレイラは笑顔で喜び、
「おや……どうやら、ネズミが紛れ込んでいるみたいですな」
突然、聞こえてきた第三者の声に、ピシリと顔と体が固まる。
諸事情により、一週間ほど更新を休みます。
次回更新は17日(水)を予定しています。
詳細は活動報告にて。




