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256話 俺が?

 領主の屋敷に使用人として潜入する。

 そんな作戦が採用されて、俺達はすぐに動くことにした。


 幸いというべきか、使用人は常に募集されている。

 準備をして、使用人として雇ってほしいと屋敷を訪ねれば、ほぼほぼ採用されるだろうとのこと。


 しかし、準備の段階で大きな問題が発生した。

 その問題というのは……


「……なあ、ユスティーナ」

「うん、なに?」

「どうして、俺は女装をしているんだ……?」


 ひとまず、使用人らしい格好をしてみたものの……

 俺は、なぜか女装させられて、スカートをはかされていた。


 それだけじゃない。

 カツラをかぶせられて、胸には詰め物が。

 おまけに化粧。


「うんうん、かわいいよ、アルト」

「本当ですね……まさか、ここまで化けてしまうなんて」

「レイラさんまで感心しないでください……」


 わりと乗り気なのが困る。


「どうして、女装なんだ?」

「えっと……すみません。領主さまは、今、メイドしか雇っていないらしく……」

「そうなんですか?」


 それは初耳だった。


 なるほど。

 だから女装なのか。

 納得の理由ではあるが、しかし……


「俺が女装してもダメだろう?」

「ううん、そんなことないよ! むしろ、これはこれでアリだよ!」

「ゆ、ユスティーナ……?」

「女の子バージョンのアルト、すっごいかわいいよ♪ まさか、こんなに化けちゃうなんて……うー、ボク、ちょっと女の子としての自信をなくすかも。でもでも、かわいいから、これはこれでいいなあ。うん、かわいい」


 そんなにかわいいを連呼されても、どう反応していいか困る。


 というか、冗談だろう?

 女装が似合うなんて、そんなことはないはずだ。


 救いを求めるようにレイラさんを見るのだけど、


「本当に素敵ですよ。エルトセルクさんがかわいい感じだとしたら、エステニアさんは綺麗という感じで、とても映えます」

「えぇ……」


 二人共、ふざけているという様子はない。

 たぶん、本心なのだろう。


 だからこそ複雑な気分だ。

 女装が似合うと言われてうれしい男なんていない。


「俺の女装はなしにして、別の方法を探すことは……」

「時間かかると思うよ?」

「なら、ユスティーナが潜入をして、俺がバックアップを担当するとか……」

「アルトは、ボクを一人にしちゃうの?」

「ぐ……」


 そう言われると、そんなことはできない、という結論になる。


 神竜であるユスティーナを傷つけられる存在なんて、ほぼほぼいない。

 領主が反竜組織と繋がっているなんて、そんな都合の良い展開はないだろうし……

 なにかあったとしても、彼女なら自力で切り抜けられるだろう。


 しかし、それはそれ。


 危険がないと理解していても、心配はしてしまうものだ。

 好きな女の子のことだから、なおさら心配だ。


 ユスティーナを一人で潜入させるべきか?

 それとも、女装をするべきか?


 答えは決まっている。


「……わかった。俺もついていこう」

「やった! アルトのかわいい姿が見れる」

「喜ぶところ、そこなのか……?」

「そこだよ! アルトの女装なんて、レア中のレアだからね。たっぷり目に焼きつけておかないと。できることなら、この姿を画家に描いてもらって、みんなにも見せたいところだよ」

「それはやめてくれ……本当にやめてくれ」


 心の底からの願いだった。


「女装というのは、どうしても乗り気になれないが……この際、我慢しよう」

「うんうん、前向きにならないとね。あ、そうだ。後で、その姿のまま、ボクをぎゅうってしてくれる?」


 ユスティーナが、変な性癖に目覚めそうで怖い。


「とりあえず、準備は完了だ。さっそく、領主の屋敷を訪ねることにしよう。レイラさんは、バックアップをお願いします」

「はい。私にできることは、なんでもします」

「よし。作戦開始だ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] アルトで女装と言われると、 某早乙女さん家のアルト君を思い出します。
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