251話 孤児
「落ち着いた?」
「……うん」
十分ほど経って、ようやく子供が泣き止んだ。
ユスティーナが優しく問いかけると、小さく頷いて、反応を見せている。
「ちょっと場所を変えようか」
子供が泣いていたせいで、けっこうな注目を浴びてしまっている。
街の中心部から離れて、人気のない小さな公園へ移動した。
「はい、これあげる」
どこに持っていたのか、ユスティーナがまんじゅうを子供に渡した。
「え? い……いいの?」
「うん。とりあえず、それを食べて、もうちょっと心を落ち着けて」
「……うん」
子供は目をキラキラと輝かせつつ、まんじゅうを大切そうに食べる。
さすが、ユスティーナ。
子供は甘いものが好きだから、なかなかうまいやり方だ。
……どこで、いつの間に買っていたのか、それは謎だが。
彼がまんじゅうに夢中になっている間に、俺達はこっそりと話をする。
「アルト、あの子、どうするの?」
「そうだな……本気で反省をしているみたいだし、憲兵隊に突き出すのはやめておこうと思う。ただ、事情は聞きたいな」
「こんなことを言うのはなんだけど、反省しているフリかもしれないよ? うそ泣きかもしれないよ?」
「それなら、それで構わないさ。本当に困っているわけじゃない、っていうことだから、ある意味で安心できる」
「えへへ」
「どうしたんだ?」
「やっぱり、アルトは優しいね」
「甘いと思わないのか?」
「そんなことないよ。そういう優しいところは、とってもアルトらしいと思うよ。そういうところが、ボク、大好きなんだもん」
「そ、そうか」
今まで、ちょくちょくと気軽に好きと言われていた。
どうしようか? と迷うことはあったものの、惑うことはなかった。
しかし、今はおもいきり惑う。
ユスティーナに対する好意を自覚して……
どう反応していいか、迷い、惑い、わずかに反応が遅れる。
「どうしたの、アルト?」
「いや、なんでもない」
この調子では、俺が告白するよりも先に、ユスティーナに感づかれてしまうのでは?
そんな危機感を抱く。
そんなことにならないように、もう少し、自分の心を律しないといけないな。
「あの子のことが気になる。ユスティーナには悪いんだけど……」
「様子を見に行きたいんだよね? いいよ」
「……あっさりと了承するんだな」
「本音を言うと、ちょっと残念だけどね。でもでも、アルトらしくあってほしいっていうか……うん。やりたいこと、やりたいままにしてほしいな。だって、ボクはそんなアルトが好きになったんだから」
「……ありがとう」
少し動揺しつつも、理解を示してくれるユスティーナに感謝した。
ちょうどまんじゅうを食べ終わった子供に声をかける。
「おいしかったか?」
「うん……」
「なら、ユスティーナ……お姉さんにお礼を言わないとな」
「あの、その……ありがとうございます」
「うん、どういたしまして」
ユスティーナの明るい笑顔に癒やされたのか、子供はほっとしたような感じに。
怒られる、と身構えていたのかもしれない。
「少しお願いがあるんだけど、いいか?」
「な、なに?」
「キミの家に案内してほしい」
「……っ……」
「ああ、財布を盗もうとしたことを家族にバラすわけじゃない。ちょっと興味があるというか、話をしてみたいんだ」
「えっと……うん。わかり、ました……」
俺達をまだ少し警戒しているらしく、子供の態度はぎこちない。
それでも、家に案内してくれる気にはなったらしい。
まんじゅうのおかげだろうか?
その後、子供の案内で街の中を移動する。
栄えている中心部から、寂れた郊外へ。
そして……ボロボロの教会に到着した。
教会の門には、『スクルド孤児院』と刻まれていた。
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