245話 これからもよろしく
三日間に及ぶ大会が終わり……
俺は、ユスティーナに勝利をして優勝する、という目的を達成することができた。
それとは別に、セルア先輩とセリス先輩を、ミリフェリアの呪縛から解き放つことに成功した。
当初、思い描いていた以上の成果だ。
最高の結果を出すことができたといっても過言ではないだろう。
そういうわけで……
「アルトくんは優勝を、そして、エルトセルクさんは準優勝を……」
「「「おめでとう!!!」」」
ジニーが乾杯の音頭を取り、みんなでグラスを重ね合わせた。
チンという音が響いて、それから、みんなの間に笑顔が広がる。
俺の優勝、ユスティーナの準優勝をみんなが祝ってくれることに。
セルア先輩とセリス先輩も駆けつけてくれた。
ミリフェリアのこともあり、二人共、まだまだ大変だと思うのだけど……
友達を祝いたいからと、笑顔で言ってくれた。
本当にありがたく、そして、うれしく思う。
「おぉ、すっげえ料理……こりゃ、食べ甲斐があるな!」
「あまりがっつかないでよ、兄さん。今日の主役は兄さんじゃなくて、アルトくんとエルトセルクさんなんだからね?」
「わかってる、わかってる。おっ、この肉めちゃくちゃうまそうだな」
「絶対にわかってないわね……」
ジニーに呆れられながらも、グランは気持ちのいい笑顔で料理に手を伸ばしていた。
あちらこちらのテーブルを回り、どこにその量が入るのか? と疑問に思うほど口に運ぶ。
ちなみに、打ち上げの会場は寮の食堂を使わせてもらっている。
食堂のおばさんも俺の応援をしていてくれたらしく……
打ち上げのことを相談したら、快く会場を提供してくれた。
感謝だ。
「あう~♪」
「あっ、ノルン。もう、そんなに口元を汚して」
「あう?」
「はい、じっとしてて」
「うー」
「ふふっ、そうしているところを見ると、エルトセルクさんは母親みたいですね」
「え? ノルンがボクとアルトの子供に見える? やだなー、そんなことを言われちゃうと照れるよぉ」
「そこまでは言っていないのですが……」
ユスティーナ達が楽しそうにおしゃべりをする中、
「むぅ」
ククルがものすごく真剣な顔で料理を見つめていた。
「やあ、ミストレッジ嬢。そんなに真剣な顔をして、どうしたんだい?」
「いえ……実は最近、少し体重が気になっていまして。制限するべきか、なかなかに悩ましいところなのであります」
「ふむ? 見たところ、気にするレベルではないと思うのだが」
「本当でありますか?」
「女性にウソはつかないさ」
「なら、食べるのであります!」
ククルがキラキラと目を輝かせた。
見た目も相まって子供のように見えて、少し微笑ましい。
「アルト」
声をかけられて振り返ると、セルア先輩とセリス先輩の姿が。
出会った頃に比べると、二人は晴れやかな顔をしていた。
ミリフェリアの問題が片付いて、心労から解放されたせいかもしれない。
「まずは、優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
「まさか、竜の王女さまに勝ってしまうなんてね。前々から規格外なところがあると思っていたのだけど、今回はとびきりよ。さすがというかなんというか、とんでもないのね」
「わりと運に助けられたところもありますけどね」
もう一度、ユスティーナに勝ってみせろと言われても、実現できる可能性は限りなく低いと思う。
カウンター技を見せた以上、対策はされてしまうだろうし……
なによりも、カウンター技を知られていなかったとしても、勝率はものすごく低かっただろう。
俺とユスティーナの勝敗を決めたのは、運以外の何物でもない。
そう考えている。
「そして……ありがとう」
「アルトは命の恩人と言っても過言ではないわ。本当にありがとう」
「えっ、ちょ……」
二人は深く頭を下げた。
いきなりのことに慌ててしまう。
「あ、頭を上げてください。そんなことをしなくても……」
「結局、アルトに助けられてばかりで、僕らはなにもできなかったからね」
「せめて、お礼くらいきちんと言わせてちょうだい」
「えっと……はい、わかりました。でも、本当に気にしないでください。俺はただ、当たり前のことをしただけですから」
「あれだけのことを、当たり前のことだと?」
「友達の力になることは、当たり前のことですよ」
「「……」」
二人は目を丸くして、次いで小さく笑う。
「そっか。アルトはそういう人だよね」
「ふふっ、おもしろい人」
「えっと……?」
「なんでもないよ。とりあえず……」
「これからも、よろしくね?」
笑顔で言うセルア先輩とセリス先輩と握手を交わすのだった。
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