244話 もっともっと
学院の保健室にユスティーナは寝ていた。
苦しそうにはしてなくて、すぅすぅと穏やかな寝息を立てている。
戦術武闘大会の決勝戦。
俺はギリギリのところでユスティーナに勝つことができて、優勝することができた。
ただ、そのために使用した技は、相手の力を全て叩き返すというカウンター技。
さすがのユスティーナもたまらなかったらしく、気絶して……
そのまま保健室に運び込まれた。
自分でやっておいてなんだけど、俺はユスティーナの様子を診ることに。
本当は授賞式などが控えているのだけど……
彼女以上に優先することなんてない。
「……んぅ?」
ややあって、ユスティーナが小さく動いた。
ゆっくりと目を開けて……
ぼんやりとした顔で周囲を見て、俺のところで視線が固定される。
「アルトだー」
「ユスティーナ?」
「えへへ、起きてすぐにアルトの顔が見れるなんて、幸せー」
こちらに手を伸ばして、起き上がろうとして、
「あいてててっ!?」
顔をしかめて、すぐにベッドに戻る。
「うー……体のあちこちが痛い……」
「無理をしない方がいい」
「えっと……こうして寝ているっていうことは、ボク、負けた?」
「ああ」
「……」
「ユスティーナ?」
「悔しい!」
むすっ、とした顔に。
ただ、子供が拗ねているような感じで、特に迫力はない。
むしろ、かわいらしいとすら思える。
「あー! アルトなら、もしかして、って思っていたんだけど、まさか本当に負けちゃうなんて! ボク、けっこう全力でいったんだよ!? それこそ、やばいアルトを殺しちゃう、って思うくらいに。それなのに負けちゃうなんて……あーもー、なんか、本当に悔しいよ!」
「……ははっ」
「なんで笑っているの?」
「いや。ユスティーナでも、悔しがるんだな……って」
「まあ、それはボクもちょっと意外かも。自分のことなんだけどね」
ユスティーナが苦笑する。
確かに、意外と言えば意外だ。
彼女はここまで勝負にこだわるタイプではないと思っていた。
負けたとしても、「負けちゃったかー」というような感じで、笑って流すようなものだと。
でも、違う。
今、ユスティーナは悔しがっている。
それは……
俺のことを強敵として、ライバルとして認めてくれたということだろうか?
だとしたら、素直にうれしい。
その域に達することを、ずっと願い、目標にして歩き続けてきたのだから。
「ねえ、アルト」
「うん?」
「負けた直後でこんなことを言うのもなんだけど……また、試合をしない?」
「また試合を?」
「うん。今になって気がついたんだけど、ボク、けっこうな負けず嫌いみたい」
ユスティーナが、てへへと笑う。
ちょっと恥ずかしそうにしているものの……
でも、その顔は子供のようにキラキラと輝いている。
早く俺と戦いたい、再試合をしたい、というような感じだ。
以前、ククルに負けた時は複雑な感情を見せていたが……
あの時とは違い、今はとてもわくわくしているらしい。
全力を出して……
それでも負けてしまったことに、悔しさよりも闘争心が勝ったのだろう。
そう思えるような相手に俺が選ばれたことは、とても誇らしい。
「それと……」
今までの凛々しい表情をころりと一転させて、頬を染める。
恥ずかしそうに、それでいて瞳を軽く潤ませつつ、こちらをじっと見つめる。
「今まで以上に、もっともっとアルトのことを好きになっちゃった♪ かっこよかったよ、アルト」
そんなことを言われたものだから、ものすごく心が揺れ動いてしまい……
今、このまま告白をしてしまうか? などと考えて、ものすごく迷ってしまう俺だった。
『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、
ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




