表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/459

243話 VSユスティーナ・決着

 ユスティーナは己の勝利を確信していた。


 攻撃のタイミングは完璧。

 回避は不可能で、受け流すことも不可能。


 もしかしたら、強引に受け止められてしまうのでは?

 そんな可能性はあったが、しかし、それでも問題はない。


 竜の一撃なのだ。

 全力でガードしたとしても、その攻撃力の全てをゼロにすることはできない。

 半分くらいは相殺されるかもしれないが……

 残り半分のダメージは通る。


 それで十分。

 神竜の一撃ならば、例え半分のダメージであろうと、相手を戦闘不能にすることができる。


 唯一の心配があるとすれば、やりすぎてしまわないか? ということだ。


 アルトが望んでいる以上、ユスティーナは全力で応えるつもりだ。

 ただ、まだ未完成とはいえ、神竜の全力を受けて、人間が耐えられるわけがない。

 かすれば大怪我。

 直撃したら即死。

 それくらいの威力だ。


 とはいえ、アルトも身体能力を最大限に引き出しているし、正規の竜騎士に匹敵する戦闘技術を身につけている。

 最悪の事態は起こらないと思うが……

 それでも、心配なものは心配なのだ。


 アルトが望んでいるとはいえ、好きな男の子に拳を向けたくなんてない。

 それよりは抱きしめてほしい。

 ついでに頭を撫でて、キスしてほしい。


 欲望混じりの思考を巡らせつつ、ユスティーナは拳を振り抜こうとして……


 えっ?


 アルトを見て、判断に迷う。

 アルトは迎撃の構えを取らず、かといって、回避に移るわけでもない。


 身体能力のリミッターは解除したままではあるが……

 それだけ。

 なにもしようとせず、ただただ、無防備に体をさらけ出していた。


 このままだと直撃は必須。

 大好きな男の子を自らの手で殴り殺してしまうという事実が……


 ど、どうすれば!?


 ユスティーナはおもいきり、うろたえた。

 今すぐに戦闘を止めるべきだろうか?

 しかし、そんなことはアルトは望んでいないはず。

 無防備にしか見えないけど、途中で戦闘を投げ出すようなことは絶対にしないはずだ。


 となれば、これは作戦?

 あえて無防備なところを見せつけることで、ユスティーナを動揺させるという?

 あるいは、ユスティーナが見抜けないだけで、他に真意が隠されているとか?


 ああもうっ、ぜんぜんわからないよー!?


 ここまで、思考を走らせることコンマ0・3秒。

 拳の着弾まで、残り0・2秒。


 どうする?

 どうすればいい?


 ユスティーナは混乱の極みに達して……


 それから、ふと気がついた。


 アルトは、ユスティーナをまっすぐに見つめていた。

 その瞳には、あふれんばかりの闘志。

 試合を投げ出すつもりなんて、欠片もないことが見てわかる。


 それと……


 信頼の色も見えた。

 ユスティーナならば、きっと応えてくれる。

 望んでいる通り、全力を出してくれるはず。


 そんな信頼。


 それを感じ取ったユスティーナは、迷いを捨てた。

 そして、覚悟を決める。


 他の誰でもない、アルトが望んでいるのだ。

 全力の自分と戦うことを望んでいるのだ。

 ならば、それに応えるべき。


 ここで、アルトの願いを無視したのならば……

 自分こそが、彼の隣に立つ資格を失うだろう。


 いくよ、アルト!


 ユスティーナは全力で拳を振り抜いた。

 そして……意識を失った。




――――――――――




 ユスティーナがリングに倒れ……

 そして、俺は二つの足でしっかりと立つ。


 それが、試合の結果となった。


「……」


 なにが起きたかわからないという様子で、審判が唖然としていた。

 観客も同様で、声を忘れている。


 ユスティーナは……完全に気絶している。

 起き上がる気配はなくて、たぶん、数時間は意識がないだろう。


「ふぅ……うまくいったみたいだな」

「……キミは、いったいなにをしたんだ?」


 どうしても理解できないらしく、審判がそう尋ねてきた。


「ちょっとした技を仕掛けて、それが成功したんです」

「その技というのは?」

「カウンター」


 相手の力を利用して、こちらの力も乗せて……

 全てのパワーをまとめて叩き返すという、とっておきのカウンター技だ。


 相手の力を利用するため、敵の力が強ければ強いほど破格の威力が生まれる。


 話を聞くと完全無敵の技に思えるかもしれないが……

 相手の力を受け流すのに失敗した場合、こちらが全てのダメージを負うことになる。

 一歩間違えば終わり。

 諸刃の剣なのだ。


 グランとテオドールに特訓に付き合ってもらい、技の完成度を極限まで高めたものの……

 いざ実戦で通用するか、それは未知数。

 ユスティーナの力を全て受け流すことができるか、それも未知数。


 でも、うまくいった。

 賭けに勝った。


 相手の力を利用するという、ちょっと反則気味な方法ではあるが……

 しかし、ユスティーナに勝つことができた。


 俺は、勝利を宣言するかのように右手を高く高く突き上げて……


「「「オォオオオオオオオオオオッ!!!!!」」」


 街中に響きそうなほどの歓声に包まれた。

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] 何か二人の戦いを見てて、 壮絶な夫婦喧嘩に見えるような気がしたのですが、 気のせいでしょうか。(笑)
[気になる点] 読んだ限り、とにかく凄いカウンター技を研ぎ澄ませて勝った事しか分かりません。 格闘技ファンも納得の本格的な描写をしろというのではありませんが 例えばミリ秒しか持たない結界を使ったとか、…
[一言] ユスティーナの気絶した姿を小説のイラストで想像した。 ………カウンターをされたユスティーナが目を渦巻き状にして「きゅー」とか言いながらリングの上で倒れているのが似合うかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ