241話 VSユスティーナ・その3
「……あぶな!? でも、ギリギリセーフ!」
「いや、アウトだろう」
槍はユスティーナに届いていた。
刃は潰されているとはいえ、確かに捉えた。
それなりの衝撃を与えたはずなのだけど……
しかし、ユスティーナは平然としていた。
驚いてはいるみたいだけど、ダメージを受けた様子はない。
一度、互いに跳んで距離を取る。
「すごいね、アルト! 槍を投げてきた時は、ヤケになったのかなー? なんて思ったけど、全部、計算づくなんて」
「あれくらいしないと不意はつけないと思ったからな。ただ、不意をうまくつけたとしても、あまり意味はなかったが」
「うーん……褒めてくれているのはわかるんだけど、乙女としては複雑。ボク、鉄とかじゃないんだけど」
「体が頑丈とか……まあ、褒め言葉ではないか」
それにしても……
まいった。
平常時の全力を出した。
ユスティーナはガードできず、まともに直撃した。
それなのに、ダメージはゼロ。
かなり絶望的な状況だ。
「よーし、だいぶ体も温まってきたかも」
しかも、まだ本気ではないときた。
彼女の底は計り知れない。
ユスティーナに勝つためには、やはり、アレしかないか。
「じゃあ……そろそろ本気でいくよ?」
「ああ、それを待っていた」
「なにか作戦が?」
「多少は考えているが……それよりも、全力のユスティーナに勝つことが目標だからな」
「楽しみにしているよ」
ユスティーナが不敵に笑う。
俺も笑う。
こんな時ではあるが、いつも以上に心の繋がりを感じることができた。
「なら、俺も切り札を使わせてもらおうか」
「切り札?」
「はぁっ!!!」
竜の枷の特訓で得た力。
身体能力を100パーセント引き出してみせる。
これでも、まだユスティーナに追いつくことはできない。
それに時間制限があるため、なるべくなら使用したくなかったのだけど……
ただ、こうでもしないと一瞬で勝負がついてしまうだろう。
それほどまでに、彼女の全力は底が知れない。
「ボクの全力、受け止められるかな?」
「受け止めて……いいや。乗り越えてみせるさ」
「……やばいかも」
「え?」
「アルトがかっこよすぎて、その台詞だけでノックアウトされちゃいそう」
「いや、さすがにそれは……」
あまりにも締まらない結末だ。
「ちゃんとがんばるよ。アルトは、全力のボクと戦いたいんだからね」
「ああ、その通りだ」
「なら、それに応えるのが未来の妻っていうものだよ!」
「えっと……」
そうなることを望んではいるが、まだ違う。
なんともいえず、コメントに困る。
「それじゃあ……いくよ?」
「っ!?」
ブワッと、ユスティーナから圧倒的な闘気が放たれた。
一瞬、気が遠くなってしまう。
それほどの力、それほどの気。
最大のピンチが訪れるのだけど……
しかし、俺にとって都合の良い流れだった。
事前に思い描いていた、ユスティーナに勝つ唯一のチャンスが舞い込んでくる。
「いくぞ!」
「うんっ!」
最終ラウンドが展開される。
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