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239話 VSユスティーナ・その1

「いくよー!」


 まず最初に、ユスティーナが突撃してきた。

 その動きは……遅い?


 意外というべきか。

 普通の人と変わらない様子で、こちらに向かってくる。


 しっかりと視認できて、見えないほどの速さというわけではない。

 これなら迎撃を……


「いや、待て」


 すぐに考え違いに気がついた。

 俺は横に跳んで交戦を避ける。


 直後、さっきまでいたところをユスティーナが駆ける。

 よくよく見てみると、彼女が駆けた後、リングにヒビが入っていた。


 どれだけの力を脚に入れて走れば、ああなるのか?

 そして、そんな状態のユスティーナとまともに激突していたら、どうなっていたか?

 考えるだけで恐ろしい。


「まるで、重装騎兵だな」

「ちょっとアルト、まるでボクが重いみたいな言い方やめて!」

「いや、すまない。そういうつもりでは……」

「むうう、ちょっと怒ったかも」


 傍から見れば、緊張感のない戦いに見えたかもしれない。

 痴話喧嘩をするな、と言われるかもしれない。


 ただ、俺たちは至って真剣だ。


 いつもと変わらない日常を過ごすようにしつつ、力を競い合う。

 これが俺たちにとっての普通なのだ。

 いつもどおりにしつつ、戦う。

 気を抜いているようで、抜いていない。

 それが、俺たちらしさなのだろう。


 もちろん、手は抜いていない。

 軽口を叩きながらも、思考をフル回転させて最善手を探して……

 いかにして相手を出し抜いて、痛烈な一撃を与えられるか? ということを常に考えている。


 こう見えて、けっこう真面目に戦っているのだ。


「今度もボクの番!」


 ユスティーナの突撃が繰り返される。


 ただ、今度はさきほどよりも速い。

 パワーよりもスピードに重点を置いたようだ。


「くっ」


 風のように駆けてくるユスティーナを視界から外れないようにするので精一杯。

 それほどまでに彼女は速く、さらに、右左上下と変則的な動きをしていた。


 今までのことを思い返すと、このような動きはしていなかったはずなのだけど?


「どこでそんな動きを?」

「ボクも日々、進歩しているんだよ」

「学院の授業か!」


 ユスティーナは竜で、しかも、その頂点に立つバハムート。

 そんな彼女は、なにもしなくても最強だ。


 しかし、それに満足することなく、戦闘技術を身に着けたとしたら?


 その結果が、コレだ。

 ユスティーナは俺の視覚外からの一撃を叩き込もうと、フェイントのステップを織り交ぜつつ、こちらに急速に迫ってきていた。

 元々の基礎能力はとんでもないため、どうしても止めることはできない。


「もらったよ!」


 ユスティーナの動きに翻弄されてしまい、ついに、彼女を視覚外に逃がしてしまう。


 瞬間、ゾワっという寒気が背中に走る。

 その直感に従い、俺はその場に伏せた。


 ブワッ!!!


 一瞬遅れて、頭の上をなにかが薙ぐ音。

 空気を打ち砕くような、凶悪な響きがした。


「えっ、今のを避けるの!?」

「避けてみせるさ!」

「むっ」


 振り返ると同時に、槍を回転させて叩きつける。

 ユスティーナの小柄な体が吹き飛んで、リングの端へ。


 ただ、手応えというものはまったく感じられない。

 鋼鉄の塊を殴りつけたかのようで……

 逆に、槍を握るこちらの手がビリビリと痺れてしまう。


「わかってはいたが、やはり硬いな」

「こらー、アルト! ボクのこと、おもいきり殴りつけるなんて、どういうこと!?」

「それだけピンピンしておいて、怒るようなことなのか……?」

「怒るよ! 試合だから戦っているけど、ボク、アルトのこと好きなんだからね!? 好きな男の子から殴られるなんて、恋する乙女にとってトラウマものだよ!」

「いや、えっと……それはすまないと思うが」


 しかし、これは試合なのだ。

 本気の殺し合いをしているわけではないし、相手が憎いというわけでもない。


 その辺りを理解してほしいのだけど……


「ちょっと怒ったかも。というか、残念。アルトは、レディの扱いがなっていないみたいだから、ここで、きっちりと教育してあげないと!」


 ユスティーナの闘気が膨れ上がる。


 今までは様子見。

 少しだけ本気になって、一段回、ギアを引き上げたのだろう。


 少しだけやる気を引き出せたことはうれしい。

 俺の望みは、本気の彼女と戦い、それで打ち勝つことなのだから。


 とはいえ……


「思っていたよりも、これは厳しいな」


 少しでも気を抜けば、ユスティーナの放つ圧に飲み込まれてしまいそうになる。

 事実、審判は気絶して、別の者に交代していた。


 何度も何度も頭の中でシミュレーションを重ねてきたものの、所詮、空想上のこと。

 目の前の現実は、予想以上に厳しく……

 巨大な山となり、俺の道を阻む。


 さて、どうしたものか?

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