238話 決勝戦
決勝戦の舞台に登ると、観客たちは一際大きな歓声をあげた。
待っていたぞ、とか。
楽しみにしていたぞ、とか。
どっちもがんばれ、とか。
そんな応援の声が、あちらこちらから飛んできた。
これだけの人が待ってくれていた。
期待してくれていた。
これは、下手な試合はできないな。
「おー」
向かい側にユスティーナが姿を見せた。
歓声がさらに大きくなる。
彼女の話は聞いているものの、まだ見たことがなくて、一目見たいと集まった人。
天真爛漫な姿に魅了されて、応援団になった商店の人。
密かに学院での人気が……特に女子に高いらしく、黄色い声を上げる女子生徒。
色々な人がユスティーナを応援していた。
俺の声援の倍以上。
ただ、そんなことで萎縮してはいられない。
しっかりとした足取りで舞台の中央に移動して、ユスティーナと対峙する。
「なんていうか、長かったね」
「そうだな。ミリフェリアのことで、けっこう時間をとられた気がする」
「でもでも、ようやくだね」
「ああ」
一緒に夕陽を見て……
正々堂々と戦おうと約束をして……
体感的には、かなりの時間が経っているような気がした。
ユスティーナと戦うための特訓をしたし、とっておきの技も開発した。
できることならば、もっともっと練度と精度を高めたいのだけど……
ないものねだりをしても仕方ない。
今の俺の全力をぶつけるのみだ。
「えへへー」
「ユスティーナ?」
なぜか、急に、にへらという顔に。
「どうしたんだ?」
「もう他の出場者はいないから、ボクかアルト、どっちかが優勝でどっちかが準優勝でしょ? つまり、優勝賞品の旅行ペアチケットは、ボクたちのもの!」
「あー……」
「勝っても負けても、ボクたち、旅行に行けるよ? そう考えたら、にへー」
とてもうれしそうな顔で、そんなことを言わないでほしい。
「アルト、どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
その光景を想像して笑顔になりそうだった、なんてことはいえない。
そんなことを口にしたら、ユスティーナに俺の想いがバレてしまうかもしれないし……
それは、この試合に勝利してからだ。
彼女の隣に立つことができると、自分で自分を認めてからだ。
「両者、準備はいいか?」
審判が静かに問いかけてきた。
「問題ありません」
「うん、いいよ」
俺とユスティーナは、揃って頷いた。
そんな俺達を見て、審判は、一歩後ろに下がる。
そして、片手を高く挙げて……
「決勝戦……はじめっ!!!」
最後の戦いが始まる。
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