237話 待っていてくれた
紆余曲折あったものの……
ミリフェリアの暴走を止めることができた。
セルア先輩とセリス先輩を枷から解き放つことができて、巻き込まれたジニーとアレクシアの救出も完了した。
これで事件は解決したが、しかし、全てが終わったわけじゃない。
まだ、戦術武闘大会は続いている。
続いているのだけど……
「これはもう、失格かな」
ミリフェリアの件を解決するまでに、かなりの時間が過ぎていた。
準決勝から開始されるはずなのだけど……
それに必要な三人が姿を消している。
なにかしらのトラブルが起きたと判断されて、待ってくれているか。
それとも、時間は限られているということで、残った一人が繰り上げで優勝になっているか。
どちらにしても、まともな形で大会を続けることは不可能だろう。
ミリフェリアを止める。
ジニーとアレクシアを助ける。
その選択を後悔するつもりはないが……
それでも、多くの人に迷惑をかけてしまい、大会に最後まで参加できないことを残念に思う。
「……仕方ないか」
「ううん!」
俺のつぶやきに反応して、ユスティーナが手を差し出してきた。
その手はいったい……?
「アルト、大会のことを考えているんだよね? 大丈夫。まだ、諦める必要はないよ」
「それは、どういう……?」
「ボク、アルトの応援にやってきたんだけど、もう一つ、伝言を預かっているんだ」
「伝言?」
「仕方ないから、なんとか場をもたせてあげる。だから、さっさと片付けて戻ってきなさい。あんたのためじゃないわ、かわいいユスティーナちゃんのためよ……ってね」
「それ、もしかして、フレイシアさんのモノマネ?」
「似てたでしょ?」
正直似ていない。
ただ、なぜか今は、そんな彼女が無性におもしろくて……
ついつい、くすりと笑ってしまう。
「あっ、なんで笑うの!?」
「いや、すまない。あまりにも似ていないものだから、逆におもしろくて」
「ぶー」
ユスティーナは、リスのように頬を膨らませた。
ただ、そんなことをされても怖いと思わない。
むしろ、かわいらしい。
「でも……それは、本当のことなのか?」
「うん。今回のことを伝えたら、大会の運営委員の人も色々と考えてくれて、決勝戦を遅らせてくれる、って。せっかくの大会なのに、決勝ができなくて、優勝も決まらないなんて意味がないとか」
「決勝? もう一人、いたはずだろう? 時間通りに開催されているとしたら、その人が繰り上げて優勝になるんじゃないか?」
「うーん……それが、直前に辞退しちゃったみたい。ボクが相手だったからかな?」
十分にありえる話だった。
俺も、自分の事情がなければ、あえてユスティーナに挑もうとは思わない。
「なら、大会は……」
「今、中断しているよ。だから、早く戻らないとね」
アランさんを見る。
深く頷かれた。
「後始末は任せておくといい。やることがあるのだろう?」
「はい! ありがとうございます」
「アルト、ボクが送っていくよ、背中に乗って!」
屋敷の外に出た後、ユスティーナが竜形態に戻る。
その背中に素早く乗り……
ふと思う。
学院でのユスティーナの知名度は高いが、街では、まだ彼女のことを知らない人が多い。
そんな中、街の人々も観戦する会場に竜が降り立つと、どうなるか……?
「まった、ユスティーナ。やはり徒歩で……」
「いくよー!」
止める間もなく、ユスティーナは空高く飛び上がってしまう。
――――――――――
「急いでいることはわかりますし、こちら側としても一秒でも早く来てくれることはありがたいのですが、もう少し移動方法を考えてください!」
「「……すみません……」」
竜形態のユスティーナが会場に飛来したことで、案の定、人々は驚いて……
俺達は、大会運営委員からこってりと絞られていた。
「この街の人なら、そんなに驚かないと思ったんだけどなあ……」
「なにか事件なのか? と思うだろう、普通」
「むう。難しい……」
「そこっ、話を聞いていますか!?」
「「はいっ」」
その後、30分ほど説教をされて……
俺達はようやく解放された。
ただ、ここからが本番だ。
ユスティーナと戦い、勝つ。
そして、隣に並ぶ資格があると証明してみせる。
その目的を達成するために、色々な鍛錬をして……
そして、ここに来るまでの間、色々なことが起きた。
まるで、俺にはそんなことは不可能だから諦めろ、と運命が意地悪しているかのようだった。
それでも、最後まで貫くことができた。
諦めず、走り続けることができた。
「このまま、最後まで……」
駆け抜けるだけだ!
「アルト、どうしたの?」
「うん?」
「なんだか、楽しそうにしているよ。笑っている」
「そう……なのか?」
俺は、笑っていたのか?
自覚はないのだけど、そういうことらしい。
「アルト?」
「……色々とあったが、無事に決勝戦を迎えることができて、うれしいんだと思う」
「んー? アルトってば、そんなにボクと戦いたかったの? なんていうか、アレ? 日頃の鍛錬の成果を試したいとか、そんな感じ?」
「大体、間違っていない。付け足すのなら、ユスティーナにも関係することだ」
「ボクも? え、うーん……さっぱりわからないんだけど」
「今はそれでいいさ」
というか、今理解されたら、それはそれで困る。
ユスティーナに告白するのは、俺が彼女に勝利してからだ。
自分に自信を持つことができて、彼女と対等であると示せた時だけだ。
だから、絶対に勝利したい。
「ユスティーナ」
「なに?」
「良い試合をしような」
「うんっ」
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