233話 遅れての登場
「この声は……いったい、なんなのですか?」
ミリフェリアも気がついたらしく、一度、動きを止める。
警戒するように周囲を見るのだけど、なにもない。
それも当然だ。
声は、上から近づいてきているのだから。
「でいりゃあああああああああぁっ!!!」
ゴッ、ガァアアアアアンッ!!!
直上で轟音。
爆薬を数キロ、まとめて炸裂させたかのような衝撃波が発生した。
まったくの予想外のことに、ふんばることができず、吹き飛ばされてしまう。
やばい、と焦るのだけど……
予想外だったのはミリフェリアも同じらしく、彼女も吹き飛ばされていた。
助かった。
これがもし、彼女の策だとしたら、致命的な一撃を受けていたかもしれない。
ヒヤヒヤとさせてくれたのは、いったい誰のせいか?
体勢を整えつつ、上を見上げると、
「アーーールーーートーーー!!!!!」
屋敷の屋根を砕いて姿を見せたのは、ユスティーナだった。
綺麗に着地してみせると、タタタと駆けてくる。
手前でジャンプ。
そのまま抱きついてきた。
「っと!?」
勢いに押されて倒れてしまいそうになるが、なんとか耐えた。
そんなこちらの苦労も知らない様子で、ユスティーナは、なにがうれしいのか俺の胸元にスリスリと頬をこすりつけてくる。
「えへへー、おまたせ! ふへ……アルトの匂いだぁ」
「いや、なんていうか……」
頼りにしていいのかどうなのか、微妙な反応をしないでほしい。
「どうしてここに?」
「ノルンが教えてくれたんだ」
「ノルンと合流できたのか? ジニーとアレクシアは?」
「うん、二人共問題はないよ。薬で眠らされているだけみたいだから、今は、お姉ちゃんが見てくれているの。念のため、ノルンも一緒に見てもらっているから、これ以上、なにか起きるっていうことは絶対にないかな」
絶対に、と言い切る辺り、姉に対する信頼がうかがえる。
普段、ユスティーナはフレイシアさんにあれこれキツイ態度をとっているものの……
なんだかんだで、姉として絶大な信頼を寄せているようだ。
「で、ボクは援軍にかけつけた、っていうわけ。場所はノルンから聞いていたし、それに……」
ユスティーナは俺から離れて、ミリフェリアを睨みつける。
「とんでもなくイヤな気配がしていたから、教えてくれなかったとしても、わかっていたかな?」
「……竜の王女……」
ミリフェリアは、ギリッ、と苛立たしそうに奥歯を噛んだ。
「ここに来て、またわたくしの邪魔をするのですか。なんて、忌々しい存在なのでしょうか。やはり、彼女の言うように、竜は不要な存在ですわね」
……今、なんて?
問い詰めようとするのだけど、それよりも先に、話が進んでしまう。
「ですが、まあ……よしとしましょう。忌々しい全ての元凶を排除することができる。アルトさまと惑わせる存在を消すことができる。そのチャンスをいただいた、と思うことにいたしましょう」
ゴゥ! とミリフェリアから圧倒的な闘気が放たれた。
いや。
それはもはや、闘気と呼ぶ生易しいものではない。
殺気ですらない。
それを遥かに超えた……
死神を彷彿とさせる、濃厚な死の気配だ。
「アルト、まだいける?」
「ああ、問題ない」
リミッター解除は限界時間に達して、その効果を失っている。
今の俺の能力は、ミリフェリアよりも遥かに下。
おまけに、高い負荷がかかっている状態で、体のあちらこちらが痛む。
ただ、ここで退くという選択肢はない。
ミリフェリアの歪んだ価値観が原因になっているとはいえ……
元々の発端は、俺だ。
なればこそ、俺が決着をつけなければならない。
他人に任せるなんていうことは、絶対にしてはいけない。
「いこう、ユスティーナ」
「うん! ボクとアルトなら、どんな相手でも問題ないよ」
「その馴れ合いを……やめなさいっ!!!」
ミリフェリアは黒いオーラを振りまきながら、超速の突撃を行う。
リミッター解除の限界に達した俺では、その姿を視認することはできない。
ただ……
「甘い」
「なっ!?」
彼女の攻撃を回避。
同時に、後ろへ回り込み、背中を蹴りつけて……
体勢が崩れたところに、さらにもう片方の足を側頭部に叩き込む。
相変わらず固い。
手応えを感じることができず、体勢を崩すことで精一杯だ。
しかし、今はそれで十分。
「ナイス、アルト!」
ユスティーナは、ダンッ! と力強く踏み込む。
床が砕け、放射状にヒビが広がる。
構うことなく彼女は床を蹴り、突撃。
その勢いを拳に乗せて、ミリフェリアを殴りつけた。
「がっ……!?」
いくら呪術で強化されていても、竜の一撃を耐えられるわけがない。
ましてや、ユスティーナは、神竜バハムートなのだ。
その一撃は天を断ち、大地を割る。
ミリフェリアは大きく吹き飛ばされて、屋敷の柱に激突して……
それを砕いても、なおも飛ばされてしまい、さらに数本の柱を砕いて……
最後に壁に激突して、ようやく止まった。
「あ……く……かはっ」
たったの一撃で、ミリフェリアは戦闘不能に陥っていた。
『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、
ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




