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222話 激動の3日目

 大会3日目の朝。

 俺は一足早く控え室に移動して、今日のことを考えていた。


 今日の試合は、順調ならば準決勝と決勝の2試合。

 あるいは、準決勝と3位決定戦の2試合。


 どちらにしても2回、戦うことになるのだけど……


「まさか、準決勝が一番緊張することになるなんて」


 セルア先輩とセリス先輩の日常を脅かす、ミリフェリア。

 彼女との試合で、俺は絶対に勝利しなければならない。


 ユスティーナが圧力をかけて、グラスハイム家を動かして……

 それと同時に、俺が直接引導を渡す。

 完膚なきまでに叩き潰すことで、致命的な心のダメージを与える。


 そうすることで、俺に対する異常愛を止めることができる。

 また、それに伴うセルア先輩とセリス先輩に対する無茶振りもなくなるだろう。

 その状態で二人に自由を与える交渉をすれば、わりとスムーズにいくのではないか? ……という作戦だ。


「うまくいくといいが……さて」


 昨夜のユスティーナの話もあり、不安は残る。


 それに、当初思い描いていた状況と現実に、齟齬が生じ始めている。

 グラスハイム家の当主が殺されるなど、予想すらしていなかった。


「ミリフェリア・グラスハイム……か。いったい、なにを考えているのだろう?」


 俺に好意を持ってくれているらしいが……

 しかし、好意を持たれるようなことをした覚えがない。


 それ以前に、顔を合わせたこともまともに話をした記憶もない。


 学院ですれ違ったり……

 軽い挨拶を交わしたことくらいなら、あるかもしれない。

 でもそれ以上となると、まるで記憶にない。


 それなのに、どうして俺に好意を持っているのか?


「……謎だ」


 女の子の心は、相手が誰であれ、不思議なものでいっぱいだ。


 ついつい、ため息をこぼしてしまう俺だった。


「はい?」


 そんな時、コンコンと扉がノックされた。


 まだ早い時間なのだけど、誰だろうか?

 ユスティーナ達は、なにかあった時に備えて、今はセルア先輩達についているはずなのだけど。


「どうぞ」

「ふふっ、失礼いたします」

「あなたは……!?」


 扉が開いて、ミリフェリア・グラスハイムが姿を見せた。


 こちらの驚きを知ってか知らずか、ペコリと一礼すると、部屋に入ってくる。

 そのまま俺の隣に座る。


 とことんマイペースな性格をしているのか……

 それとも、周囲が見えないほどに図々しいのか。


 後者のような気もしたが、今はまだ、なにも言えない。


「あなたは、グラスハイム先輩……ですよね?」

「あら、うれしいですわ。わたくしのことを知っていらしたのね?」

「それは、まあ……今日の対戦相手ですし、それに、五大貴族の令嬢ともなれば有名ですから。それに、以前、少し話をしたでしょう?」

「ふふっ、家のことなんてあまり気にしたことはありませんが、今日は感謝しなければいけませんね。おかげで、わたくしのことを気にかけてもらうことができました」

「はあ……」


 適当な相槌を打ちつつ、内心で混乱する。


 彼女の態度を見ていると、俺達の間に面識がないことは理解しているようだ。

 それなのに、俺のことを好いている?

 いったい、どんな理由で?


 軽く混乱してしまい、ついつい、じっと彼女を見つめてしまう。


「あら、どうかしたのですか? わたくしの顔に、なにか?」

「いえ……」

「ふふっ」


 ややあって、彼女はうれしそうに笑う。


「アルトさまの顔がこんなにも近くにあって、そして、その視線をわたくしが独占している……なんていう幸せなのでしょうか。あぁ、わたくしは今、幸せでどうにかなってしまいそうですわ」

「それは、どういう……?」

「言葉にしないと、おわかりになりませんか?」


 試すような視線。


 少し考えた後、口を開く。


「俺を好いている……から?」

「はい、正解ですわ」


 意外というべきか、あっさりと好意を認められてしまう。

 いや。

 彼女だからこそ、簡単に認めてしまうのだろうか?


 こうして顔を合わせて言葉を交わしているのだけど、いまいち、彼女のことがわからない。

 掴みづらい性格をしているというか……

 空気を押しているような感じで、確かな反応というものがまるでない。


「こんなことを尋ねるのもなんなのだけど……」

「はい、なんでしょうか? わたくし、アルトさまとお話することを楽しみにしていましたの。どんな話でも構いませんわ。なんでも答えますわ」

「あなたは、俺に好意を持っている」

「はい、お慕いしておりますわ」

「それは……なぜ?」

「なぜ、ですか?」

「だって、そうでしょう? 今までまともに話をしたことがない。それなのに、好意を寄せていると言われても、俺としては、正直なところ困惑しかありません。なのに、あなたはなぜ……」


 それなりに踏み込んだ質問をしてみた。


 彼女は、どんな言葉を返してくるだろうか?

 俺が覚えていないだけで、なにかしらの接点があったのだろうか?

 それとも、自分で言うのもなんだけど、色々な意味で知名度がある俺のことを知り、遠くから見ていたのだろうか?


 色々な可能性を考えるのだけど……

 その予想は全て外れて、考えもしない答えが提示される。


「それはもちろん……運命だからですわ」

「……運命?」

「はい、運命です」


 にこにこと笑いつつ、ミリフェリアは断言した。


 いったい、どういう意味なのだろう?

 その言葉の意味を理解できず、俺は混乱するしかない。


「アルトさまは、学生の身でありながら、数々の事件を解決に導いて、勲章を授かる英雄。そして、わたくしは、五大貴族の一つ、グラスハイム家の生まれ。アルトさまもわたくしも、共に至高の存在。なればこそ、わたくしたちが結ばれることは運命なのですわ」

「えっと……?」

「そう! アルトさまにふさわしいのは、同じ人であり、そして高貴な血が流れているわたくしですわ。あの竜の少女などではありません。わたくしこそがふさわしく、運命の相手。前世から、そう定められているのですわ」

「……」


 まずい。

 ミリフェリアがなにを言っているのか、ぜんぜんわからない。


 至高の存在とか高貴な存在とか、運命の相手とか前世から定められていたとか……

 まるで意味不明。

 理解不能だ。


「なので、わたくしとアルトさまが結ばれることは、ごくごく自然のことなのですわ。それこそ、世界の真理と言っても構いません。そう、これこそが運命なのです」


 そう断言するミリフェリアは……おぞましいほどの狂気と愛に包まれていた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 恋は盲目、そして過ぎると毒薬とはよく言ったものだ。
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