表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
220/459

220話 竜の予感

「イヤな感じ、と言われても……」


 セルアは困惑した。


 ここはグラスハイム家が所有する屋敷の一つで、本邸ではない。

 どちらかというと、ミリフェリアに与えられた別荘のようなところだ。

 危険と呼べるような危険はないはず。


「気の所為、ということは?」

「ないわね」


 きっぱりと断言された。


 セルアは迷う。

 しかし、最終的にはフレイシアを信用することにした。


 彼女は普通の人ではない。

 竜であり、神竜バハムートなのだ。

 その彼女の言葉は無視していいものではない。


「わかりました。今以上に、慎重に調べることにします」

「ええ。私も手伝うから、ちゃっちゃと済ませましょう」


 二人で書斎を調べる。

 机の引き出し、本棚の奥、テーブルの下。

 色々なところを調べてみるものの、なにも見つからない。


「セルア、どう?」


 ほどなくして、セリスが姿を見せた。


 フレイシアを見て、目を丸くする。


「って……どうして先生がここに?」

「先生も力を貸してくれるみたいなんだ」

「なるほど。改めて、エルトセルクさんには感謝しないといけないわね」


 セリスは、すぐに今に至るまでの状況を察する。

 頭の回転の速い子だった。


「それで、状況は?」

「先生の話では、ここになにかしらありそうなんだけど……」

「なにも見つからないのよね。うーん、私の勘も狂ったかしら?」


 調べても調べてもなにも見つからない。

 二人が頭を悩ませるのも仕方がない。


 あまり長時間滞在することはできない。

 それに、こうして調査をしているところを誰かに見られたら、一発でアウトだ。


 そろそろ時間切れかもしれない。

 ミリフェリアの悪事の証拠を探すことは大事ではあるが、だからといって、問題を起こしてしまっては元も子もない。

 問題が起きる前に撤退するべきなのかも……そう考えるセルアだけど、もう少し、と欲張ることにした。


 フレイシアが、なにかしらの予感を覚えているのだ。

 やはり、それを無視することはできない。


 三人で今まで以上に念入りに調査をして……

 そして、ソレを発見した。


「セルア、先生」

「どうしたんだい?」

「これを見て」


 セリスに促されて壁を見ると、切れ目が入っていた。

 巧妙に隠されているが、隠し部屋の跡だ。


「ミリフェリアが使う書斎に隠し部屋……どう見ても怪しいね」

「どこかに、隠し部屋の入り口を開くスイッチがあるはずよ。急いで探しましょう」


 セルアとセリスは書斎の調査を続けるが、


「場所がわかっているのなら、もっと手っ取り早い方法にしましょう」


 そんなことは面倒だとばかりに、フレイシアが隠し部屋があるであろう壁の前に立つ。

 そのまま壁に両手をつけて、


「むぅうううっ!!!」


 竜自慢の腕力で、鍵を壊し、強引に隠し部屋の扉をスライドさせてしまう。

 あまりといえばあまりの光景に、セルアとセリスは唖然としてしまう。


 力技で解決できるとしても、それはアリなのだろうか……?


「さすが先生ね。それじゃあ、隠し部屋を調べてみましょう」

「セリスは、切り替えが早いね……僕はまだ、ちょっと混乱しているよ」

「やるべきことの順番をハッキリとさせているだけよ」


 確かに、今するべきことは、驚くことではなくて隠し部屋を調査することだ。

 だからといって、簡単に頭が切り替えられるものではない。


 フレイシアもそうだけど、セリスもなかなかに大胆だ。


 女性は強い。

 ついつい、そんなことを思うセルアであった。


 それから、三人は隠し部屋の中へ。

 中は暗いが、採光用の小さな窓がいくつかあるため、完全な暗闇ではない。


 ほどなくして目が慣れて、なにがあるのか見えてきた。


「これは……」


 隠し部屋となれば、やましいものがあるに違いない。

 そう考えていたセルアではあるが、まるで予想外の光景を見つけてしまい、困惑した。


 床に描かれている、血のような赤で描かれた魔法陣。

 棚には髑髏や小動物などの標本。


「すごいな……まるでカルト教団みたいだ」

「みたい、ではなくて、そのものなのかもしれないわね」


 もう一つの棚にある本に手をつけたセリスが、そう言う。


「その本は?」

「呪術に関することが書かれているわ」

「うわ……」

「個人的なものなのか組織的なものなのか、それはわからないけど……どうも、ミリフェリアは危ない世界にどっぷりとハマりこんでいるみたいね」


 セリスは呆れた様子だった。


 竜の信仰を強制するつもりはないし、他の神を崇めても気にしない。

 しかし、対象が怪しい邪神となると話は別だ。

 そんなものを信仰する人に、今までいいようにされてきたのかと思うと、なかなかに複雑な気分になるセリスだった。


 セルアも同じような気分に陥っているらしく、実に複雑な顔をしている。

 その表情は二人共そっくりで、さすが双子というべきか。


「ねえ。私、人間のことはそれほど詳しくないのだけど、呪術とかは、実際に効果があるものなの?」

「大半は効果なんてありませんよ」


 それっぽいアイテムを、それっぽい文句で売り飛ばす。

 ただの金儲けとして利用されていることがほとんどで、効果なんてものはない。


「ただ、稀に本物が混じっています」


 呪いをかける、意中の相手を振り向かせる、不幸にする……そのような本物が、稀にではあるが存在することも事実だ。

 だからこそ、ミリフェリアのように、呪術を学び、邪神を信仰する人は少なからず存在して、絶えることはない。


「とはいえ、これが本物なのかどうか、それは私達には判別できませんが……」

「そうだね。雰囲気はそれなりにあって、本物っぽいといえば本物っぽいんだけど……うーん、どうなんだろう? 先生は、わかりませんか?」

「私も専門外よ。多少の魔力は感じるものの、なんともいえないわ。ただ……」


 一拍置いて、フレイシアは厳しい表情を作る。


「この部屋から、とてもイヤな感じがするわ」

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマークや☆評価をしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ