表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/459

216話 応えられないけど

「俺のことを諦めてほしい」

「……うん」

「なんて、そんなことは、やっぱり言えない」

「えっ」


 ジニーが驚きに目を大きくする。

 その瞳は、なんで? と問いかけているかのようだった。


「なんでも、というルールだったとしても、やはり、そんなことは言えないさ」

「でも、そうするのがベストでしょう?」

「そうだな、ベストだと思う」


 ここで、ジニーに関連することにケリをつけることができる。


 彼女はまっすぐな性格だ。

 例え口約束だとしても、それを違えるようなことはせず、しっかりと守るだろう。


 でも。


 だからこそ、諦めるように、なんてことは口が裂けても言えなかった。

 それは、ジニーの心を俺の都合で捻じ曲げるようなことだ。

 例え、事前の同意があったとしても、そんなことをしてはいけない。


 ともすれば、心を踏みにじる行為。

 俺は、それをなによりも嫌うのだから。

 かつて、いじめられていたことのある俺がするようなことじゃない。

 絶対にしてはならないことだ。


「でも……本当にそれでいいの? 私に諦めてもらうことが、アルト君にとっては、たぶん、一番のはずなのに」

「そうかもしれないが、でも、やっぱりダメだ。それは、自分で自分が許せなくなる」

「……アルト君……」

「それに、そんなことが一番であるなんて、俺は認めたくない。他に、もっといい一番があるはずだと、そう考えたい」

「なんていうか……ふふっ、アルト君らしいわね」


 ジニーがくすりと笑う。


 さきほどまでは、全てを覚悟したような雰囲気をまとっていて、ひどく落ち着いていた。

 でも、今は違う。

 いつものジニーとなにも変わらないで、らしく、あった。


「そんなことを言われたら、あたし、諦めないわよ?」

「それでいいさ。ジニーがどうするかは、ジニーが決めることなのだから」

「ずっと、アルト君を好きでいても?」

「いいさ」

「諦めないで、何度もデートに誘っても?」

「いいさ」

「本妻は諦めるから、側室にして♪」

「いや、それは……」

「ちょっと、アルト君。今までの流れなら、そこも、いいさって言うところでしょう?」

「さすがに、そんなことは言えない。というか、そんな流れで承諾されて、ジニーはうれしいのか?」

「んー……半々? ちょっと微妙かな、っていう気持ちはあるだろうけど、でも、側室になれるのなら細かいことはあまり気にしないかな」

「す、すごいな」

「ふふっ、女の子は強くてしたたかなのよ?」


 ジニーが得意そうに笑う。

 そこで得意そうな顔をするところは、実に彼女らしいと思う。

 本格的に調子を取り戻したようだ。


 これでもう、諦めるように命令して、なんてことは言わないだろう。


 思えば、ジニーはどこかでそれを望んでいたのかもしれない。

 俺を困らせるだろうからと、身を引こうとして……

 でも、内容が内容だけに簡単に割り切ることができず、迷い、答えを出せずにいたのかもしれない。

 それで、俺に委ねた。


 でも、そうならないで良かった。

 そんなことをすれば、必ず後悔することになるだろうし……

 俺が言うのもなんではあるが、どのような形であれ、答えは自分で出した方がいい。


 その結果、ジニーが諦めないというのなら、それはそれでいい。

 今はユスティーナのことしか考えられないが、もしかしたら、という可能性は消えないだろうから。


「聞いてもいい?」

「なにを?」

「あたしが……あたしとアレクシアがアルト君の側室になれる可能性は、何パーセントくらい?」

「答えに非常に困る質問を……」

「いいじゃない。せっかくだから、教えてよ」

「なにがせっかくなのか、まったく」

「で、どう? どう?」


 ジニーが目をキラキラとさせつつ、再び問いかけてくる。

 自分の問題で、しかも大事なことのはずなのに楽しんでしまうなんて……やれやれ、と呆れるしかない。


 同時に、妙な感心もしてしまう。

 このアグレッシブさこそが、ジニーらしさでもある。

 彼女の強さ、行動力にはいつも助けられてきた。


 そんなジニーをどう思うか?

 そして、アレクシアのことをどう思うか?


 女性として考えるのならば、とても魅力的という回答に尽きる。

 もしもユスティーナと出会っていなければ、間違いなく惹かれていただろう。


 ただ……


「正直なことを言うと、今は、1パーセントくらい……としか」


 やはり、今はユスティーナのことしか考えられない。

 これだけ想ってもらうことができて、ものすごく光栄なことでうれしいのだけど……

 それでも、やはり、俺の心の大部分はユスティーナで占められているのだ。


「そっか、よかった」

「えっと……どうして、うれしそうなんだ? 俺は今、けっこうひどいことを言ったと思うのだけど」

「可能性はものすごく低いけど、でも、ゼロパーセントじゃないんでしょう? もしかしたら、っていう可能性はあるんでしょう?」

「それは、まあ」


 この先、どのようなことになるか、それは誰にもわからない。

 もしかしたら……という可能性もある。


「なら、あたしはその1パーセントに賭けるだけ。ううん。単に運任せにするだけじゃなくて、1パーセントを2パーセント、3パーセント……とか、確率を少しでも上げるための努力をしていくだけよ」

「……強いな、ジニーは」

「知らなかった? 恋する女の子は強いのよ」


 ここまできたら、もう降参するしかない。

 彼女の想いに応えられるかどうか、それはまた別の話になるが……

 止めるようなことはしないし、むしろ、がんばってほしいとすら思えてきてしまう。


「ところで……話を少し前に戻すけど、勝者の権利はどうするの? なにを命令する?」

「それ、まだ続いていたのか?」

「もちろん。あたしに良い方向に話がまとまったからといって、なかったことにしたら、さすがにちょっと……ってなっちゃうじゃない。あたしから持ちかけたことなんだから、どんな命令でもちゃんと実行するわ」

「と、言われてもな……」

「大胆な命令でもいいわよ? その……パンツを見たいとか」

「ごほっ!? な、ないから……そんな命令はしない」

「残念。アルト君を悩殺できると思ったんだけど」


 ジニーの行動を止めるつもりはないが、さすがに別の方法を考えてほしい。


「とにかくも、俺が頼みたいことは決まっているよ」

「それは?」

「とある二人を助けるために、力を貸してほしい」

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマークや☆評価をしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ