214話 VSジニー・その3
「いくわよ!」
ここぞとばかりに、ジニーは攻勢に出た。
両手に持つ剣を踊るように振るい、ありとあらゆる角度からの斬撃を繰り出してくる。
右からの攻撃を防いだと思ったら、すぐに左からの斬撃が。
縦に割るような強烈な一撃を避けて……
直後、下からもう一本が跳ね上がる。
全て、直撃は避ける。
ただ、完全に避けることは難しい。
ジニーが剣を振るう度に、かすり傷が増えていく。
今はなんともないが、時間が経てばまずいことになるだろう。
そんな状況でも、俺は素直にすごいと思っていた。
ジニーは、いつの間にこれほどの力を身に着けたのだろうか?
きっと、俺には想像もできないような努力があったに違いない。
ゾクリと震える。
ジニーの強さ。
ジニーの心の在り方。
その全てが、とても輝いて見えた。
本来はいけないことなのだけど……
今、この瞬間。
後のこと、他のこと、全部どうでもよくなり、ただ単純にジニーに勝ちたいと思うように。
「いくぞ!」
今度はこちらの番だ。
今まで余裕をもって避けていたのだけど、それをやめる。
ギリギリのところまでジニーの攻撃を引き付けて、回避。
文字通り、紙一重のところで攻撃を避ける。
一歩間違えれば、ジニーの攻撃が直撃してしまう。
完全に無防備なので、そのまま沈んでしまう可能性が高い。
もはや、一種の賭けだ。
ただ……俺は賭けに勝った。
ジニーの攻撃を一撃ももらうことなく、全てを回避。
そして、カウンターに移る。
「っ!」
竜の枷を使用していたことで身につけた、限界を超えた身体能力を行使する力。
それを使用することで、体中が燃えるように熱くなる。
そして、力が湧き上がる。
「はぁっ!!!」
「くぅ!?」
ジニーが剣を振り下ろすタイミングに合わせて、こちらも槍を叩き込む。
今までは拮抗していたところがあるが、今は違う。
俺の方が圧倒的有利になり、ジニーの攻撃を押し返して……
さらに、もう一本の剣のガードを突き破り、その体を吹き飛ばす。
「きゃ!?」
小さな悲鳴。
しかし、ジニーはまだ諦めてはいない。
吹き飛ばされながらも、猫のように、器用にくるりと宙で体勢を立て直す。
しなやかに着地。
すぐに反撃に移ろうとするが、
「いない!?」
すでに、俺はジニーの視界の範囲外に移動していた。
普段なら、そのような荒業、絶対に無理なのだけど……
限界を超えている状態ならば、問題なく実行可能だ。
ジニーの背後に回り込んだ俺は、槍を構えて……
まず最初に、そこらに転がっている石を、ジニーの横の床に向けて投擲する。
カツ、という音が響いて、ジニーの視線が横に向いた。
注意も明後日の方向に向けられた。
俺は、限界を超えた身体能力を最大限に使い、一気に疾走する。
まさに風のごとく。
「っ!!!」
数秒遅れて、ジニーがこちらに気がついた。
罠にハメられたことを理解して、苦い顔に。
すぐに剣を構えて、迎撃体勢に移ろうとするが……しかし、遅い。
「チェックメイトだ」
「くぅ……!」
ジニーの背中にぴたりと張り付くようにして、その背に槍を押しつけた。
「まだ続けるか?」
「……」
ジニーは応えない。
未だ隙をうかがっているらしく、ピリピリとした雰囲気を放っている。
ただ、隙なんて与えない。
こちらも最大限に集中して、ジニーがいつ動いても、どのような手を繰り出してきても対応できるように、一挙一動を注視する。
「……」
「……」
互いに動くことができず、視線は交わっていないのだけど、にらみ合うような状況が続く。
審判もどうしていいかわからない様子で、じっと様子を見守っていた。
次の一手で決まるのか?
それとも……
「……ふぅ」
判断に迷っていると、ジニーが小さな吐息をこぼした。
そして、ゆっくりと両手を下ろして……剣を手放す。
「残念。もしかしたら、いけるかな、って思ったんだけど」
「それは、降参という意味でいいか?」
「……いいわ」
ジニーは小さく頷いて、両手をゆっくりと挙げた。
『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、
ブクマークや☆評価をしていただけると、とても励みになります。
よろしくおねがいします!