213話 VSジニー・その2
「これは……」
今、目の前で起きた現象を理解できず、思わず攻撃の手を止めてしまう。
その間にジニーが体勢を立て直して、距離を取り、再び双剣を構える。
「今、なにが……?」
ジニーの動きは封じていたはず。
それなのに、明後日の方向から斬撃が飛んできた。
どういうことだ?
「ふふんっ」
「もしかして、今の不思議な斬撃は、ジニーの切り札なのか?」
「そういうこと。あたしも、けっこうやるでしょう?」
「驚いたな。あんな芸当、聞いたことも見たこともない。いったい、どういう手品なんだ?」
「試合の後でなら、教えてもいいわよ」
「それじゃあ遅いな」
「なら、降参してくれる、って約束してくれるなら」
「悪いが、それもできないな」
「やっぱり、そう答えるわよね」
再び槍を構える。
ジニーも突撃体勢を取る。
どういう原理かさっぱり見当もつかないが、ジニーは不可視の斬撃を放つことができる。
しかも、相手にギリギリのところまで察知させない。
なかなかに厄介だ。
まずは距離を取り、切り札の正体を見極めないといけない。
そうしなければ、一方的にやられてしまうだろう。
……と、普通ならそう思うかもしれない。
ただ、俺は違う方法で戦う。
「いくぞっ、ジニー!」
「っ!?」
あえてこちらから先手をしかけた。
一瞬ではあるが、ジニーが動揺する。
その隙を逃すことなく、槍を突き出した。
一撃目は避けられるが、すぐに槍を引き戻して、二撃目。
丸く削られた矛先が、ジニーの鎧を叩く。
「っ!」
ジニーは顔をしかめつつ、一度、距離をとろうとする。
その際、不可視の斬撃を放つかのように、双剣を構えるものの……
俺は怯むことなく、そのまま突撃した。
追撃を叩き込むが、残念ながら防がれてしまう。
ただ、再び競り合う形に。
「アルト君ってば、くぅ……躊躇なさすぎじゃない? 普通、もっとためらったり警戒したりするものでしょ」
「少し迷ったけどな」
「もしかして、もう見切られたとか?」
「いや、さすがにそれはない」
ジニーが繰り出した、不可視の斬撃。
たぶん、魔法を応用したものなのだろう。
遅延魔法、というものがある。
あらかじめ唱えておいた魔法を発動することなく、遅らせて、後々で発動するという魔法の技術だ。
それを剣に応用した、という感じか。
遅れて斬撃を放つことができる。
さながら、見えない斬撃というところか。
よくもまあ、こんな技を開発したと感心する。
勲章もののアイディアではないだろうか?
ただ、まだまだ改良点が多いはず。
さきほど、不可視の斬撃を避けることができたのは、単なる勘によるものだ。
もう一度やれと言われても、避ける自信はない。
だから、今のうちに攻めることにした。
ジニーにとって、不可視の斬撃は切り札に違いない。
そして、連発できないはず。
そう読み、今のうちに勝負を決めようと、ラッシュをしかけているだけだ。
「くううう、アルト君ってば、そういう勘の良さを日常でも発揮してくれたらいいのに」
「うぐ……それは、すまない」
なにげなく言った台詞なのだろうけど、ぐさりと胸に突き刺さる。
ある意味で、不可視の斬撃よりも痛い。
「でも、ここで負けるわけにはいかない。俺は、やらないといけないことがある」
「それは、エルトセルクさんのこと?」
「それもあるが、他にもある」
「そっか……相変わらずというか、色々なところで色々な人の期待を背負っているんだね。アルト君らしいというか、なんというか」
ジニーは苦笑して、
「でも、負けられないのはあたしも同じ!」
不敵な表情で、全力で押し返してきた。
俺も負けていられない。
ジニーを押し返すために、再び全力で……
「っ!?」
再び悪寒を覚えた。
反射的に横へ跳ぶが、今度は遅い。
ガッ! と強烈な衝撃が肩に走る。
「うそっ、今の一撃も避けるの?」
「避けては、いないけどな」
「頭を狙って肩にあたったんだから、避けられたも同じよ」
「頭とか、えげつないな」
「今回だけは、全力で勝ちに行くと決めたから。というか、アルト君相手に、下手に手加減なんてしようものなら、一気にやられちゃうもの」
俺のことを評価してくれてうれしいと思うが、しかし、喜ぶべき状況ではない。
今の一撃。
頭部への直撃は避けたものの、肩にダメージが。
骨折というわけではなくて、打撲という感じか。
ただ、それでもけっこうな痛みが残る。
左手を動かすのに違和感が生まれ、槍捌きにも影響が出てしまう。
まずいな。
下手をしたら、ここで一気に畳み込まれてしまうかもしれない。
不可視の斬撃は切り札で、それ故に、連発はできないと思っていたが……
充填時間は、思っていた以上に早かったみたいだ。
そこは俺の計算ミス。
どうにかして立て直したいが……
さて、どうする?
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