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207話 ストーカーは厄介

 突然のことに驚きながらも……

 まずは、セルア先輩とセリス先輩の話を聞いた。


 そして、頭を抱えたい気持ちになる。


「むぅ……まさか、アルトにストーカーができちゃうなんて」

「あはは。ストーカーって……まあ、その通りなんだけど、言葉にするとおもしろいかな」

「セルア。アルトにとっては、笑い事じゃないわよ」

「いえ。俺のことはいいんですが……」


 俺なんかに、ストーカーができるというのは、正直なところ意外だ。

 まさか、と驚いた。


 ただ、それほどの危機感は覚えていない。

 なんとかなるだろう、と楽観的に考えていた。


 それよりも、問題はセルア先輩とセリス先輩のことだ。

 グラスハイム家の娘……ストーカーである、ミリフェリアの言うことを聞くしかない。

 その命令は無茶苦茶なものであり、ライバルになるであろう、ユスティーナとジニーを排除しろと言う。


 ミリフェリアからしてみれば、実行して当然の命令。

 そして、成功して当たり前の命令。


 しかし、セルア先輩もセリス先輩も、いい加減、無茶を言い続けるミリフェリアに嫌気が差していた。

 どうにかしたいが……しかし、どうすることもできない。

 相手は、自分たちが仕えるべき家。

 しかも、五大貴族。

 どう考えても、現状を覆す方法はない。


 一点を除いて。


「なるほど、なるほど。それで、アルトとボクを頼ってきた、っていうわけなんだね?」


 二人の事情を知り、ユスティーナは納得顔で頷いた。


 少し、ほっとする。

 ユスティーナは、なんだかんだ言っているものの、基本的に正義感が強い子だ。


 さすがに、世界中の困っている人全てを救うなんてことは言えないが……

 顔見知りであれば、助けたいと思う。

 二人のためなら、その力を行使することも、ためらわないだろう。


 それ故に、今すぐにグラスハイム家を叩き潰そう、なんて言い出すのではないかと思っていたが、そうはならないみたいだ。

 さすがに、少しは考えているみたいだ。


「ねえ、アルト」

「なんだ?」

「この国って、バカなの?」

「え?」

「また、五大貴族がバカをやらかしているじゃない。アレクシアの家はそうじゃなかったけどさ、今度は、アルトにひどいことしてたあの家の人間と同じだし……学習って言葉を知らないのかな? 知らないのなら、ボクが教えてもいいよね?」


 まずい。

 ユスティーナは、今すぐ叩き潰そう、というような感じで闘気と迸らせていた。


「ねえ、セルア。グラスハイム家って、どっちにあるの?」

「え? それなら、えっと……ここからなら、東の方向になるけど」

「よし」


 ユスティーナは気合を入れるようにして、身構えて……


「待て、なにをするつもりだ?」

「焼き払おうかなー、って」

「やりすぎだ」


 許せない気持ちはわからないでもない。

 だからといって、私刑をするなんてもっての他だ。


 この国は法治国家だ。

 ならば、私刑は許されない。


「相手が法をかいくぐっているんだから、こっちも法を無視するしかないんじゃない」

「それは……」

「ダメだよ、アルト。バカな人間は、とことんバカなんだから。甘い顔をしていたら、つけあがるのみなんだから」

「むう」


 納得してしまいそうになるが、どうしたものか。


 後ろの方で、セルア先輩とセリス先輩が、顔をひきつらせているのがちらりと見えた。

 まさか、ユスティーナが速攻で実力行使に出ようとするなんて、思ってもいなかったのだろう。


「やっぱりダメだ」

「えー」

「ミリフェリアだけが暴走しているのか。それとも、一族ぐるみなのか。その点は、まだわからない。あと、どれだけの協力者がいるのかもわからない。グラスハイム家の関係者が協力していたとしても、二人のように、無理矢理従わされているだけかもしれない。そうなると、その人たちも被害者だ」

「それは……」

「なにかするとしても、そこをしっかりと調べてからでないと」

「……うー、そうだよね。ごめんね、アルト。ボク、ちょっと冷静さを失っていたかもしれない」

「いいさ」


 ユスティーナが真剣になるということは、それだけ、セルア先輩とセリス先輩のことを気にかけてくれたということ。

 それを褒めることはあっても、咎めることはない。


「力で解決するにしても、懸念はまだ残るんだ」


 セルア先輩が口を開く。


「ミリフェリアは、ちょっと常人と思考回路が違うんだ。なんでもかんでも、自分の思い通りにならないと気が済まないタイプで、そうならないと、癇癪を起こす」

「そして、なにをしても自分の望みを叶えようとするの。下手に退場させても、想いを余計にこじらせて、アルトに今まで以上の妄執を寄せるかもしれないわ」

「そういうものなの……?」

「ええ。ストーカーっていうのは、そういうものよ」

「怖いね……」


 真顔で言うセリス先輩に恐怖を感じたらしく、ユスティーナはぶるりと体を震わせた。


 俺にはよくわからない世界ではあるが……

 セリス先輩がそう言うのならば、そういうことなのだろう。

 単純に武力で制圧をしても、後々に尾を引く可能性が高い、ということか。


「厄介だな。そうなると、どうしたものか」

「……消す?」

「瞳から光を消して、そんな物騒な台詞を口にしないでくれ」

「あははー、やだなー。冗談だよ」


 1割くらいは本気だったように思えた。

 やぶ蛇になりそうなので、掘り下げることはしないが。


「一応、僕たちの方で、対策は考えているんだ」

「そうなんですか?」

「助けてほしい。方法も対策も全部考えて欲しい、なんていうのは、さすがに無責任すぎるわ」


 そう言いつつも、セリス先輩は申しわけなさそうにしていた。

 セルア先輩も同じ顔だ。


 二人共、優しい人だ。

 厄介事に巻き込んでしまうことを、申しわけないと思っているのだろう。


 でも、それがなんだというのだ?

 二人は尊敬できる先輩で……そして、恐れ多いかも知れないが、友達と思っている。

 ならば、俺にできることはなんでもしたいと思う。


「俺にできることがあるのなら、なんでもしますよ」

「アルト……いいのかい?」

「はい」

「……ありがとう」


 二人は揃って頭を下げた。

 そこまでしなくても、と思うものの……

 二人からしたら、そこまでしなくては収まりがつかないのだろう。


 なので、その行為を制止するようなことはせず。

 感謝の気持ちをしっかりと受け取っておく。


「それでは、改めて……どうしましょうか?」


 話を元に戻して、対策を考える。


 相手は、厄介なストーカー。

 単に叩き潰しても、また付きまとわれる可能性がある。

 セルア先輩とセリス先輩に危害が及ぶ可能性がある。


 過激な案を採用すればどうにかなるのかもしれないが、さすがにそれはダメだ。

 他に、どうしたらいいか?


「んー……一つ、ボクに考えがあるんだけど」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] セドリックといいミリフェリアといい、貴族だから何をしても許されるとか、自分の思い通りにならないと気がすまないみたいなのに加えて、その貴族のいいなりになって甘い汁を吸う教師、こんなのをいつまで…
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