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193話 初接近

 戦術武闘大会まで、あと1週間。

 大会に向けて、俺は毎日訓練を続けていた。


 大会まで時間がない。

 ユスティーナ対策の技はそれなりに完成してきたのだけど、まだまだ練度が甘い。

 時間のある限り、徹底的に詰めていきたい。


 放課後。

 すぐに訓練場に向かい、動けなくなるまで訓練をしよう。


 そう思っていたのだけど……


「うぅっ、うううううぅーーー!!!」


 目の前には、涙目のユスティーナが。

 放課後になり、いつものように訓練に出かけようとしたところ、彼女に掴まった。


 最近、アルトはいつも訓練をしてばかり。

 ぜんぜん、ボクに構ってくれない。

 訓練とボク、どっちが大事なの!?


 ……そんな感じで詰め寄られて、答えに迷い、そして今に至る。


 困った。

 心底困った。


 ユスティーナのことが好きだ。

 ハッキリと、そう自覚した。

 だからこそ、対等な立場にあることを自他共に証明するために、大会で激突して、勝利しようと考えている。

 それから、告白だ。


 そのために訓練は欠かせない。

 ある意味で、ユスティーナのための訓練なのだ。


 しかし、ここ最近、彼女をないがしろにしていたことも事実であり……

 ユスティーナのためを想って行動していたのだけど、結果として、ユスティーナを寂しがらせてしまった。


 俺はいったい、どうすれば……?


「アルト……ボクのこと、嫌いになった?」

「そんなことはっ」

「なら、遊ぼう? 今日で、アルトと9日と21時間47分遊んでいないよ?」


 ちょっと怖い。


「それは……」


 本音を言うのなら、大会まで、一日も欠かさずに訓練をしたい。

 そうでもしなければ、ユスティーナに勝つなんて不可能だろうし……

 それだけのことをしても、勝てるかどうか怪しい。


 でも……そうだな。

 大会のことだけを考えて、ユスティーナを泣かせてしまうのは、本末転倒か。

 先を大事にするあまり、今を疎かにしてはいけない。


「ユスティーナ」

「……うん」

「すまない」


 頭を下げると、ユスティーナは目を丸くした。


「確かに、最近、ユスティーナとの時間を疎かにしていた。反省しないといけない。すまなかった」

「……アルト……」

「今日は訓練はなしだ。一日……いや、半日か。ユスティーナに付き合う」

「いいの……?」

「ああ」


 不安そうに言うユスティーナに、間髪入れずに頷いてみせた。


 なんだかんだで、彼女は優しくて思いやりがある。

 ここ最近、俺が訓練ばかりしていることは、なにかしら理由があってのものだと気づいているだろう。


 寂しい。

 でも、自分はわがままを言っているのではないか?

 困らせているだけではないか?


 そんな不安も、同時に抱えていると思う。

 だから俺は、そんなことは気にしないでほしいと言うように、彼女の頬に手をやる。


「あ……」

「訓練は大事だ。ちょっとしたことがあって、理由は今は話せないが……すごく大事なことだということは確かだ」

「うん……」

「でも、それ以上にユスティーナのことが大事だ。寂しい思いをさせるのは本意じゃない。だから、気にしないで遊びにいこう」

「ふぁっ」


 ユスティーナの顔が、ぼんっと赤くなる。

 どうしたのだろう?


「ユスティーナ? どうしたんだ?」

「あっ、ちょ、まって……ボク、今、アルトの顔直視できないかも。かっこよすぎて、照れちゃって、あうあう、恥ずかしい……」


 どうしてここまで照れているのか理解できない。


 俺が首を傾げていると、


「ったく。アルトのヤツ、アレを無自覚で言うんだからな」

「アルト君じゃなかったら、絶対に狙ってやってるって疑うところよね」


 ステイル兄妹が、なぜか呆れた様子でこちらを見ていた。

 だから、なぜ呆れている……?


「……あうー」


 ふと、少し離れたところで、こちらの様子をうかがっているノルンが見えた。

 ぽつんとした様子で、とても寂しそうだ。

 眉を下げて、指を咥えてこちらを見ている。

 どことなく、箱に入れられて捨てられた犬猫を連想させる。


「あー……ユスティーナ? 二人きりを望んでいるのかもしれないが、その……」

「うん、わかっているよ」


 ユスティーナは苦笑しつつ、ノルンにおいでおいでと手招きをした。


 なんだかんだで、ノルンを放っておくなんてことはできない。

 それでこそ、と思う。

 そんな優しいユスティーナに、さらに心惹かれてしまう。


「あうー?」

「ノルンも一緒に遊びに行こう?」

「あう……?」


 いいの? というような感じで、ノルンが上目遣いにユスティーナを見る。


「はぅっ……か、かわいい」


 そんなノルンに心奪われた様子で、ユスティーナが軽くよろめいた。

 どうでもいい話だけど、今の仕草、フレイシアさんによく似ている。

 さすが姉妹……と言ったら、怒られるだろうか?


「グランとジニーも一緒に行かないか?」

「俺は遠慮しとく。ちと、やることがあるからな」

「あたしも同じく」

「そうか? 残念だな」

「普通に考えて、おじゃま虫になるだろ」

「そういうことに気づかないところも、アルト君らしいわね」


 なにやら失礼なことを言われている気がした。


「それじゃあ、行くか」

「うんっ!」

「あうっ!」


 元気よく頷くユスティーナとノルンと一緒に、教室の外へ。


「どこで遊ぶ?」

「えっとえっと、ケーキを一緒に食べたいし、服を見て回りたいし、あっ、アクセサリーなんかもいいかも。それとそれと……」

「あうあうっ」

「さすがに、それ全部は無理だ」

「うー、一日が48時間あればいいのに」


 ユスティーナらしい発想に、ついつい笑ってしまう。

 そんな俺を見て、ノルンも笑顔になる。


 最近、本当に訓練ばかりで……

 こんな温かい時間を忘れていたな。

 きちんと両立させることが大事なのだと、今までの自分の行動を反省した。


「すみません」


 ふと、声をかけられた。

 振り返ると、見知らぬ女性。

 それと……セルア先輩、セリス先輩がいた。


「あれ? 先輩方……それと、えっと?」

「はじめまして、アルトさま。わたくし、ミリフェリア・グラスハイムと言います」


 ミリフェリアと名乗る女性は、一歩前に出て俺との距離を詰めて、にっこりと笑った。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] ユスティーナにとって、あの過保護父娘に似ているというのは、ある意味最悪の屈辱ととらわれそう。
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