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188話 セルアとセリス

 戦術武闘大会の参加申し込みは、問題なく受理された。

 そこで判明したのだけど、俺とユスティーナだけじゃなくて、ジニー、アレクシア、ククルも参加するらしい。

 ついでにというべきか、グランとテオドールも、せっかくだからと参加を表明。


 みんな、しっかりと授業を受けて、着実に力をつけている。

 かなりの激戦になりそうだ。


 それにライバルとなる以上、グランとテオドールに訓練に付き合ってもらうわけにはいかない。

 今日からは、一人で訓練だ。


 気を引き詰めつつ、訓練場へ。


「うん?」


 訓練場に移動すると、武器と武器が打ち合う音が聞こえてきた。

 中を覗くと、たくさんの生徒が。

 いくつかの場所が用意されているものの、全て埋まってしまっている。


 今までにも、俺以外の生徒が訓練場を使用することはあった。

 しかし、場所が全部埋まってしまうというのは初めてだ。


 もしかしたら、大会が関係しているのかもしれない。

 ここにいる全員、大会出場者で……

 俺と同じように、大会に向けた訓練をしているのだろう。


「まいったな」


 目標は、打倒ユスティーナ。

 途方もなく高い目標なので、当日まで、休みなく訓練をしないといけないのだけど……


「訓練場は無理か」


 少し様子を見るものの、空きが出る様子はない。

 俺は諦めて訓練場を後にした。


 整った設備が使えないのは痛いが、この際、体を動かすことができる広場があればいい。

 最悪、街の外で魔物を相手に訓練をしよう。


 そんなことを考えつつ、良い場所を探して歩き回る。

 少しして、住宅街から離れたところに小さな公園を見つけた。


 遊具が一つあるだけで、あとはなにもない広場だけ。

 住宅街から離れているため利用者はいないらしく、俺以外に誰もいない。

 アルモートは開発中の区画が多く、こういうところは珍しくない。


「ここならちょうどいいな」


 もしも子供が遊びに来たのなら、その時はすぐに移動しよう。

 そう決めてから、訓練を始める。


 まずは、身体能力を向上させるためのトレーニング。

 これは肩慣らしのようなもので、あくまでも体を動きやすくするためのものだ。


 それから槍を手にした。

 頭の中でユスティーナを思い描いて、そのイメージと戦う。


「ふっ! しっ! はぁあああっ!」


 己の持つ全部の力を注ぎ込み、訓練を続ける。

 しかし、イメージの中のユスティーナにさえ勝利することができない。

 何度も何度も、繰り返し負けるイメージばかり。


 本当に勝てるのだろうか?


「いや、弱気になるな」


 こんなところでつまづいているわけにはいかない。

 前に進むために、なんでもしないといけない。


「ただ、相手がいないと、やはりやりづらいな」


 一人で訓練をしても、なかなか思い通りにいかない。

 客観的な視点がないと、どこをどう改善したらいいか、気づくことが難しい。

 とはいえ、グランとテオドールは頼れない。

 今度、他のクラスメイトに相談してみようか?


「あら? 珍しい、今日は先客がいるみたいね」

「うん、そうだね」


 ふと、そんな声が聞こえてきた。

 振り返ると、一組の男女が。


 男は、俺と同じくらいだろう。

 笑顔が似合うような、優しい顔をしている。

 どことなく中性的で、それがまた、彼が持つ柔らかい印象を強調していた。


 女の子もまた、俺と同じくらいの歳だろう。

 髪は男と同じ亜麻色で、ショートカットでまとめている。

 凛とした表情。

 まっすぐな瞳。

 意思の強さを感じる人だ。


「あ、すみません。訓練の邪魔をするつもりはなかったんです」

「あなた達は?」

「僕らは、竜騎士学院の生徒で、訓練場所を探していたんですよ」

「なるほど、俺と同じですか」


 よく見れば、二人共、しっかりと体が鍛えられていることが服の上からでも見てわかる。


「あなたも、竜騎士学院の生徒なんですか?」

「はい。1年の、アルト・エステニア、といいます」

「僕は、2年のセルア・フェノグラムです」

「私は、同じく2年のセリス・フェノグラムよ」

「先輩でしたか」


 礼の一つもしていない。 

 失礼をしてしまったかと、慌てて頭を下げる。


 それに対してセルア先輩は、困ったような顔に。


「そんなことをしないでください。確かに僕は2年ですが、だからといって、無条件に偉いわけじゃないんですから」

「えっと……」

「ホント、気にしないでくれるとうれしいです」

「わかりました。ただ……」

「ただ?」

「先輩なので、その口調をやめていただけると助かります。俺としては、どうしたらいいか」

「あっ。そ、それもそうですね」


 少し恥ずかしそうにしつつ、セルア先輩は頬を指先でかいた。


「じゃあ、気楽にさせてもらうね」

「はい。その方が、俺も落ち着きます」

「……キミは、その口調なの?」

「さすがに、まあ……はい」

「うーん、残念」


 マイペースな人だな。

 そんなことを思う。


「セルア。話もいいけど、この後のことも決めないと」

「そうだね。うーん、どうしようか?」

「なにか困りごとが?」

「学院の訓練場が埋まっていたから、外で訓練をしようと思っていたんだけど、なかなか見つからないんだ」

「ここなら、と思っていたのだけど、そうそう簡単にはいかないみたいね」


 二人は揃って苦笑した。


 そういうことならば……


「よかったら、一緒に訓練をしませんか?」


『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

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【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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