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186話 ひとまずの完成

 グランとテオドールは、驚異的な瞬発力で、俺との間合いを一気に詰めてきた。

 二人は多くの修羅場をくぐり抜けてきている。

 その経験が力を底上げてしていた。

 故に、以前とは比べ物にならないほどの速度だ。

 瞬きをする間に、すぐ目の前に迫っている。


 数値化することはできないため、正確なことは言えないが……

 グランとテオドールの実力は、おそらく、学院の上級生に匹敵するだろう。

 それほどまでの威力、速度を備えていると思う。


 そんな二人の全力の一撃が繰り出される。

 それぞれに剣を振るい、叩きつけるような苛烈な一撃が迫りくる。


 俺は目を逸らすことなく、閉じることなく、攻撃の軌道をしっかりと見極める。

 そして……密かに練習を続けてきた、新技を発動させる。


「……」

「……」


 グランとテオドールと交差した。


 二人は剣を振り抜いている。

 しかし、その斬撃が俺に届くことはない。

 俺はダメージを負うことなく、変わらずにその場に立っている。


 そして……


「ぐっ……!?」

「うあっ!?」


 苦痛のうめき声をこぼして、グランとテオドールは剣を手放して、そのまま地面に膝をついた。

 苦しそうに、それでいて、不思議そうな顔になる。


「な、なんだ……?」

「今、なにが……?」


 二人は狐につままれたような顔をしていた。

 一方で俺は、自分の手を見て、深く頷く。


「うん。うまくいったみたいだな」


 ぶっつけ本番にしては、なかなかの成果だ。

 ただ、完全な成功というわけじゃない。

 事前の予測通りなら、グランとテオドールは、すぐに起き上がれないほどのダメージを負っているはず。

 しかし、そんなことはなくて、すぐに体を起こしている。


 まだまだ、練習と改良が必要だな。

 無意識に発動できるようになるくらい、何度も何度も繰り返して、体に染み込ませていきたいところだ。


「いつつ。なあ、アルト。今、なにをしたんだ?」

「気がついたら、僕たちは地面に膝をついていたのだけど……ふむ? 今のが新技なのだろうが、なにをされたのかまったく理解できていない」

「そうだな。なんていえばいいか」


 一言で、単純に説明することはできる。

 ただ、それでも、どうしてそんなことができる? という疑問は残る。


 なので、きちんと説明したいところではあるが……

 俺自身、この技を完全にマスターしたわけじゃないので、説明しきれないところがある。

 どう言えばいいか迷い、間が生まれてしまう。


「どうしたんだ、アルト?」

「なんて言えばいいか、迷っているんだ」

「どういう技なのか、説明することもできないのかい?」

「仕組みを説明しようとしたら、かなり面倒なことに……まあ、一言で言うのなら、諸刃の刃、っていうところか」

「諸刃の刃?」

「成功すればダメージを与えることができるが、失敗したら一撃でやられてしまうような……そんな感じの、ハイリスクハイリターンの技だ」

「よくわからないが、とんでもない技ということは理解したぜ」

「よくもまあ、そのような技を使おうと思ったね」

「これくらいしないと、ユスティーナに勝つことはできないだろうから」


 二人を相手に試したところ、確かな手応えを感じた。

 このまま洗練させていけば、ユスティーナを相手にしても通用するようになるはず。


「二人は大丈夫か? できることなら、もうしばらく付き合ってほしいのだけど」

「アルトのヤツ、俺らを木人と勘違いしてないか?」

「しているかもしれないね」


 二人は、やれやれとため息をこぼして、


「学食、一週間な」

「同じく、それで手を打とう」


 仕方ないな、という顔をしつつも、了承してくれた。

 申しわけないという気持ちと感謝の気持ち、両方が湧き上がる。


「ありがとう」




――――――――――




「戦術武闘大会……でありますか?」


 アルトが訓練に励んでいる頃、ユスティーナはククルと一緒に学食でのんびりしていた。

 昼だけではなくて、放課後も学食は開放されている。


 仕事に追われて休憩を取ることができなかった教師たち。

 あるいは、自主訓練の前にエネルギーを取ろうとする生徒たちに利用されることが多い。


 それだけではなくて、カフェとして利用する生徒もいる。

 味は普通なのだけど値段は安いため、金欠の生徒がよく訪れている。


 ユスティーナはそれほど金に困っているわけではないが、学食のミルクティーが好きだった。

 商品としては甘すぎるところがあり、あまり人気はない。

 ただ、その甘いところがユスティーナの好みのストライクで、ちょくちょくと通っている。


 途中、ククルを見つけて一緒にお茶を……という流れになっていた。

 そこで、戦術武闘大会に出場することを告げる。


「そういえば、そのようなものもありましたね。どこかで見かけた覚えがあります」

「アルトに誘われて、ボクも出ることにしたんだ。優勝賞品が旅行のペアチケット! これはもしかしたら、ボクと一緒に旅行に行きたいっていう、アルトの遠回しな誘いなのかも。えへ、えへへ」


 アルトに甘い言葉を囁かれるところを妄想して、ユスティーナがくねくねと悶える。


「……旅行のペアチケット……」


 ユスティーナの言葉を受けて、ククルが考えるような顔に。

 その頭の中では、彼女と同じように、アルトの幻影が作り上げられていた。


 一緒に旅行へ行こうと誘われる。

 二人きりの密会。

 同じ部屋に泊まり、そして夜は……


「ふぁっ!?」

「わっ!? なになに、いきなり大きな声を出して」

「い、いえっ、なんでもありません! なんでもないのであります! うぅ……自分は、なぜこのような破廉恥なことを」


 赤くなるククルは、妄想を振り払うように、顔をブンブンと横に振る。

 しかし、欲望たっぷりの甘い妄想は消えてくれない。

 それどころか、心の深いところに潜り込んでいき、ククルをその気にさせてしまう。


 深く考える必要はない。

 ちょっとした機会があるから、友達と二人で旅行に行くだけだ。

 それ以上の深い意味なんてない。

 そう、なにもない。


「……エルトセルク殿は、戦術武闘大会のチラシを持っていますか?」

「うん、持っているよ。ほら。この前、大会本部に行って、詳しい説明が書かれたチラシをもらってきたから」

「見せていただいても?」

「いいよ。はい、どうぞ」


 チラシを受け取り、ククルは自身が出場しても問題ないことを確認した。


「どうしたの?」

「……自分も参加してみようと思います!」

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

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別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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