173話 二人の子供?
翌日。
いつものように学院に通い、授業を受けて……そして放課後が訪れる。
「あうあうっ」
「わ、わわわっ!?」
「ノルン、そんなに引っ張らないでくれ」
俺とユスティーナはノルンに手を引かれ、街に移動していた。
見た目は幼くても中身は竜。
とんでもない力で引っ張られてしまい、ほぼほぼ走る状態になっていた。
「あっ、ユスティーナちゃん! それと……ちっ、この前の人間もいるのね」
移動した先に、フレイシアさんの姿が。
ユスティーナには笑顔を向けているのだけど、俺には舌打ちだ。
この差をなんとかしたいと思うが、果たしてどうすればいいのか……なかなかに困っている。
「それで……今日はどうしたの?」
ユスティーナがノルンにそう問いかける。
今日、街に出てフレイシアさんと引き合わせたのはノルンだ。
なにか思いついたらしいけど、その詳細は教えてもらっていない。
教えてもらっていないというか、言葉を話すことができないから、詳細な意思疎通が難しいためにわからない、ということになるが。
「あうあうっ」
「えっと……今日一日、ボクとアルトとノルンの三人が一緒に過ごすの?」
「あう!」
「それを、お姉ちゃんが見ているの?」
「あうー!」
正解、というような感じで、ノルンはニッコリと笑う。
同じ竜だからなのか、ユスティーナはノルンの言いたいことがなんとなくわかるらしい。
とはいえ、その行動の意味までは理解できなかったらしく、不思議そうに小首を傾げる。
「うーん、どういうことかな?」
「ノルンにはノルンなりの考えがあると思うが……」
その真意がわからない。
いったい、なにを考えているのだろう?
「とにかく、やってみようか。それでお姉ちゃんがボク達のこと、アルトのことを理解してくれるならうれしいし」
「私がその人間を理解するなんてこと、ありえないんですけど」
「まあまあ、お姉ちゃん。とりあえず、ノルンの言うとおりにしてみよう? 同じ竜の言うことなんだから、別に従ってもいいでしょ?」
「それは、まあ……」
「じゃあアルト、ノルン。行こうか」
「あうっ!」
俺、ノルン、ユスティーナの順に並び、それぞれ手を繋ぐ。
間にノルンが入っているため、なんていうか、これは……
「えへへ、これって親子みたいだね」
「……そ、そうだな」
意識していたことをさらりと言われてしまい、思わず動揺してしまう。
意図的なものなのか、単なる偶然なのか……間に挟まっているノルンは、変わらずににこにこ笑顔だ。
そして、後ろからついてくるフレイシアさんは……
「ぐぐぐっ……私のユスティーナちゃんと夫婦っぽいことをするなんて! それはお姉ちゃんである私の役目なのにっ!」
嫉妬の炎をメラメラと燃やしていた。
妹大好きなのはわからないでもないが……
そうだとしても、妹と夫婦っぽいことをする権利は姉にはないと思うのですが。
――――――――――
その後は、三人で街を見て回る。
ここに来て半年近く経っているものの、王都は広い。
まだ見ていない場所も多く、ただ散歩をするだけでも楽しい時間を過ごすことができた。
「あう~♪」
その間、ノルンはとてもごきげんな様子だった。
俺に甘えて、その次はユスティーナに甘える。
そんなノルンを見る俺とユスティーナは、どちらも笑顔だ。
なんていうか……
甘えてくるノルンのことが、とてもかわいいと思う。
本当の子供みたいに思う時すらある。
自然と俺達も優しく接するようになり……
ますます笑顔があふれていく。
「ぐぎぎぎっ……」
俺達の様子を見るフレイシアさんは、ハンカチを口に咥えて、ものすごく悔しそうにしていた。
嫉妬の念がすさまじい。
このようなことをしていれば、そんな反応になってしまうのは当たり前なのだけど……
しかし、なぜこんなことを? という疑問はある。
どうも、ノルンは俺達三人が仲良くしているところをフレイシアさんに見せたいようだ。
一緒に過ごすうちに、そのことは理解した。
しかし、その目的は不明。
なぜ見せつけるのか、それはわからないままだ。
「……ねえ、アルト」
ふと、ユスティーナが俺だけに聞こえる声で言う。
「ボク、ノルンがなんでこんなことをしているのか、なんとなくわかったかも」
「そうなのか? それは、どういう……?」
「たぶんだけど……ノルンは、ボク達のことを自慢しているんじゃないかな」
「自慢?」
「ボクとアルトは、自分をいつも笑顔にしてくれるんだよ。すごく良い人なんだよ。だから、悪く思う必要なんてないんだよ……っていうような感じで」
「そう……なのか?」
「ボクは、そうとしか思えないかな。ノルンって、けっこう賢いんだよ?」
その点は賛成だ。
言動のせいで幼く見えるものの、実はかなり賢い子だ。
物事の本質を瞬時に見抜いてしまうというか……
ノルンは、そういうことができるんだよな。
「俺たちのことを考えてくれていたのか?」
「あうっ!」
問いかけると、とても元気な笑顔が返ってきた。
これは……たぶん、ユスティーナの言う通りだろうな。
俺たちのことを考えて、こうして外に連れ出してくれたのだろう。
「ありがとう、ノルン」
感謝の気持ちがあふれて、つい反射的に頭を撫でてしまう。
犬猫みたいに扱うなんて、失礼だったかもしれない。
なんて心配をするものの、ノルンは気持ちよさそうに目を細くする。
「あふぅ♪」
よかった、喜んでくれているみたいだ。
「……」
仲良くする俺たちを見て、フレイシアさんはなにかを考えるように、じっとこちらを見つめていた。
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