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139話 恩返し

 文字通り、ククルは一騎当千の活躍を見せていた。

 自分の背丈ほどもあろうかという巨大な剣を、己の手足のように自由自在に振り回す。


 魔物を両断して。

 まとめて薙ぎ払い。

 時に、叩き潰して。


 魔物に屍の山が築かれていく。

 その力は人の範疇を超えている。

 実は竜でした、と言われても、大多数の者が納得するだろう。


 その正体は、聖騎士。

 神から力を授かる、選ばれしもの。


 圧倒的な力で魔物の群れを粉砕していくが、


「くぅ……数が多いのであります!」


 今回はククルも苦戦を強いられていた。


 一対一の戦いならば、誰であろうと負けるつもりはない。

 例え竜を相手にしたとしても、勝利してみせるという、強い意思を持つことができる。


 しかし、今回のような戦いは別の話になる。

 津波のごとく魔物の群れが押し寄せてくる。

 一体一体は大した力を持っていなくても、数が集まれば厄介だ。


 四方八方からの攻撃を受けてしまうと、どうしても被弾してしまう。

 一撃は大したダメージではなくても、それが積み重なれば、いつしか致命傷になってしまうかもしれない。


 それと、終わりが見えないというのも辛い。

 聖騎士ともなれば、肉体的な鍛錬だけではなくて、心も強固に鍛えられている。

 それでも、考えずにはいられない。


 あと、どれだけの魔物を倒ればいいのだろうか?

 もしかして、敵は無限に湧いてくるのではないか?


 小さな不安が降り積もり、それがやがて動揺となり、動きを鈍らせないとも限らない。


「自分もまだまだでありますっ……!」


 弱気になりそうな自分を叱咤して、ククルは剣を振るう。

 振り回して、振り下ろして、振り潰していく。


「いいぞっ、ククル! 俺も一緒に戦うから、ここを絶対に守ろう!」


 アルトの声が飛んできた。


 その言葉を受けて、ククルの胸に温かい感情が生まれる。

 こそばゆいような、とても優しい想い。


 疲労が溜まり始めていた体が、なぜか、アルトの言葉一つで元気を取り戻していく。

 どこまでもがんばれる気になり、今ならなんでもできるかもしれない。


「これは……なぜでしょうか?」


 なぜこんなに元気が湧いてくるのか?

 なぜこんなにうれしく思うのか?


 まるでわからない。

 わからないが、嫌な気分ではない。

 むしろ、とても心地良い。

 何度もアルトの声を聞きたいと、そんなことすら思ってしまう。


「よくわからないですが……がんばるのでありますっ!」


 やる気を再充填したククルは、鉄塊のような巨大な剣を振り回した。

 自分に群がる魔物……おおよそ20匹を、まとめて吹き飛ばす。


「なかなか調子がいいのであります……おや?」


 視界の端で、魔物と戦う女子生徒の姿が映る。


 どこかで見たことのある姿だ。

 記憶を探り、ほどなくして、肉串屋の女子生徒ということを思い出す。


「あっ……!?」


 女子生徒がバランスを崩してしまう。

 その隙を狙われてしまい、魔物が迫る。


「させないのでありますっ!」


 今こそ、あの時の恩を返すべき!


 ククルはえぐれてしまうほどに地面を強く蹴り、超加速した。

 そのまま、女子生徒を襲おうとしていた魔物に突撃。


「はぁっ!」


 魔物を吹き飛ばしたところで、トドメの斬撃を叩き込む。

 抗うことはできず、魔物はそのまま絶命する。


「大丈夫でありますか!?」

「あなたは……」


 女子生徒もククルのことを覚えていたらしく、びっくりした様子で目を丸くしていた。


 そんな彼女に手を差し伸べて、立ち上がらせる。

 それから、ぽんぽんと服の汚れを払う。


「怪我は……ないでありますね。よかったです」

「驚いた。すごく強いんだね」

「自分、聖騎士でありますから!」

「えっ、そうなの? じゃあ、あなたが……」


 女子生徒はククルの頭から爪先を見る。

 こんなに小さいのに……とでも言いたそうだ。

 ただ、さすがに口には出さないが。


「でも、わざわざ助けてくれなくても……聖騎士なら、他に色々とやることが……」

「肉串の恩は返すのであります!」

「……」


 女子生徒はきょとんとして、


「ふふっ」


 次いで、笑った。

 そんな答えが返ってくるとは思ってもいなかったのだろう。


「ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

「ところで……一緒にいた子は? あの子、無事だといいんだけど……」

「それなら問題ないのであります」


 ククルは離れたところで、暴れるようにして戦うノルンを指差す。


「あの竜が、あの時、一緒にいたエルトセルクちゃんであります」

「……え?」

「あの時の子は、実は竜なのです」

「そういう子が他のクラスに転入したことは知っているけど……一人じゃなかったんだ。しかも、あんなにかわいかったのに……」


 世の中、広いなあ。

 そんな感じで、女子生徒は遠い目をする。


 ただ、そんな反応は少しだけ。

 すぐに力強い意思を瞳に宿して、地面に落としていた武器を拾う。


「助けてくれてありがとう。私もがんばるから……あなたも、一緒にがんばろう」

「あ、その……」

「うん?」

「自分のことは、ククルと呼んでほしいのであります。ククル・ミストレッジであります」

「うんっ、よろしくね、ククルさん」

「はいっ、一緒にがんばりましょう!」


 小さな恩返しは、新しい出会いを産む。

 二人は力強い笑みを浮かべつつ、この災厄に立ち向かう決意を新たにした。

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別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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[良い点] 一宿一飯の恩義ですね
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