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138話 それぞれの戦い

 アルモート王都は、突如現れた魔物と傭兵たちのせいで、混沌とした戦場と化していた。

 あちらこちらで火の手が上がり、人々の悲鳴が響く。


 王都に残る戦力は少なく、竜騎士及び憲兵隊は苦戦を強いられていた。

 それでも、諦める者は誰一人としていない。


 人々を守るため。

 祖国を守るため。

 己の持つ力を全力で振るう。


 それは、竜騎士学院の生徒たちも同じだ。

 自分たちが通う学院を守るために。

 竜友祭の来客を守るために。

 日頃の成果を試すべきだと言わんばかりに、それぞれが奮闘する。


 その中でも、目覚ましい活躍をする者がいた。

 グランとテオドールだ。


 刻一刻と変化する戦場の中。

 二人は背を預けるように戦い、襲い来る魔物を剣で切り捨てていく。


「うらぁっ!」


 グランの剣は、押しつぶすような強烈な一撃だ。

 刃の摩擦で切るのではなくて、腕力で押しつぶす。

 その背の高さもあり、まるで、巨人が暴れ回るかのようだ。

 近づく魔物は例外なく、一撃で倒されていく。


「ふっ!」


 対するテオドールは、グランとは真逆の戦い方だ。

 ダンスでも踊っているかのように優雅に動いて、剣を泳がせるように振るう。


 その動きはとても洗練されたものであり、正確無比。

 確実に魔物の急所を突いて、一撃でしとめていく。


「やるなっ、テオドール!」

「ふっ、キミもね」


 互いに互いの健闘を称える。


 意外と余裕があると思われるかもしれないが、実のところ、二人に余力なんてものは残されていない。

 ほぼほぼ全力で動き続けているため、そろそろ体力が底をつきはじめていた。


 しかし、そんなことは微塵も感じさせない。

 疲労を表情に出すことは一切ない。


 ただの強がりだ。

 男の意地であり、プライドだ。

 でも、時にそれを貫かなければいけない時がある。


 それが今なのだ。


 誰かを倒すためではなくて、守るための戦い。

 そんな時に全力を注がず、いつ注げというのか?

 肉体の限界を超えて、精神の限界を超えて……意識ある限り、動き続けるのみ。

 そうすることが、二人の意地だ。


「もっとこいやっ!」

「今日はとことん付き合おうじゃないか」


 グランとテオドールは己を……そして、仲間たちを鼓舞するように大きく叫びながら、武器を振り続けた。




――――――――――




「紅の三連っ!」


 アレクシアは力強く叫び、魔法を発動させる。

 炎の球体が三つ、勢いよく射出された。

 それらが迫りくる魔物の群れに着弾して、爆発を起こす。


 その威力は以前とは比べ物にならない。

 他の生徒とも比べ物にならない。


 他の生徒の全力の一撃よりも、なお威力が高い。

 それを三発同時に放つ。

 以前のアレクシアからは考えることができない、急激な成長だった。


「っ……!?」


 魔法を放ち、隙ができたアレクシアに魔物が襲いかかろうとした。

 アレクシアは、ちらりとそちらに目をやり……しかし、なにも対策をすることはない。

 その必要がないからだ。


「はぁっ!」


 風が駆け抜けた。

 その正体はジニーだ。

 両手に持つ双剣で、アレクシアを狙う魔物を切り刻む。


 より速く。

 より多くの手数を。


 そんな力を求めた結果、ジニーは武器を変えることにした。

 直剣から双剣へ。

 両手に武器を装備すれば、手数が増えることになるし、攻撃力もアップする。

 そんな単純な考えから、ジニーは実行に移す。


 両手で武器を扱うということは、思っていた以上に難しい。

 アレクシアとの特訓がなければ、今も扱いきれていなかっただろう。


 しかし、それらを乗り越えることで、双剣を己のものとした。

 右手を動かして、左手を動かして。

 アレクシアを狙う魔物を、次々と屠る。


 そして、再びアレクシアの魔法が唸る。


「紅の五連っ!」


 今度は、火球が五つ、生み出された。

 じわりじわりと包囲網を形成しようとしていた魔物たちが、まとめて吹き飛ばされる。


 そんな光景を見た周囲で戦う生徒たちは、唖然としていた。


 あの二人、あんなに強かったっけ……?

 いや、そんなはずはない、言っちゃなんだけど普通だったはず。

 いったい、いつの間にあんなに……?


 そんな声を聞いたアレクシアとジニーは、わずかに唇の端をニヤリと釣り上げる。

 アルトに置いていかれないように、特訓をした甲斐があった。

 成果は着実に出ていた。

 そのことをうれしく思いつつ……


「せぇっ!」

「紅の三連っ!」


 二人は全力で戦う。

 今度は、自分たちが道標になれるように。

 周囲の生徒たちに希望を与えるように。


 それぞれ、新しく得た力を存分に使う。

 その姿は、さながら、伝説の戦乙女のようでもあった。

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