137話 防衛戦
「ユスティーナとノルンは、左右から迫る敵を頼む! 地形を少し変えるくらいはしてもいいから、おもいきり暴れてくれ!」
「ラジャー!」
「あうっ!」
二人が光に包まれる。
ユスティーナは、漆黒の竜……バハムートへ。
ノルンは、白銀の竜……エンシェントドラゴンへ。
それぞれ元の竜形態に戻ると、まずは咆哮を響かせた。
世界が悲鳴をあげているかのような、強烈な圧が周囲に広がる。
俺たちだけではなくて、魔物の群れも足を止める。
「いっくよーっ!」
「あうっ!」
ユスティーナとノルンが別れて、左右から迫りくる魔物の群れに突撃した。
その巨体を止める術を持つはずもなくて……
魔物たちは踏み潰されて、あるいは空高くに放り上げられて、散らされる。
さすがというか、なんというか……
すさまじいの一言に尽きる。
わずかな時間で、魔物の群れの一部がごっそりと削られた。
ただ、それでも敵の姿は消えない。
むしろ、次から次に湧いてくる。
「俺たちはククルを中心に陣形を展開! 正面の敵と、ユスティーナとノルンが討ち漏らした敵を叩く!」
「「「おうっ!!!」」」
「学院の中には俺たち生徒だけじゃなくて、竜友祭に来ていた一般の人もいる。絶対に守りきるぞ!」
「「「おうっ!!!」」」
みんなの頼もしい声が響いた。
それを合図とするように、俺たちの戦いが始まる。
「せぇえええええっ!!!」
まず最初に、裂帛の気合を轟かせて、ククルが巨大な剣を振るう。
上段から下段へ。
縦一文字に振り下ろして、強烈な斬撃を魔物の群れに見舞う。
その威力は計り知れないほどに強大だ。
刃を受けた魔物は抵抗することを許されず、体を二つに両断される。
さらにそれだけに終わらず、大地が割られ、多くの魔物を飲み込む。
さすが聖騎士。
ユスティーナとの決闘で、互角以上に渡り合った実力はすさまじい。
とはいえ、一人で全ての魔物の相手をすることはできない。
敵は百を軽く超えている。
鉄砲水を壁一つで止めることができないのと同じで、多数の魔物がククルをすり抜けて、学院の方へ侵攻してしまう。
しかし、内部に侵入を許すことはない。
そんなことは、俺たちが認めない。
「うらぁあああああっ!!!」
「せぇっ!!!」
グランとジニーが背中合わせになり、それぞれ剣を振るう。
その姿は、まるで踊りを踊っているかのように優雅だ。
息がピタリと合っているから、そう見えるのかもしれない。
双子のソードダンスの前に、無数の魔物が切り伏せられていく。
「紅の三撃っ!」
アレクシアの魔法が炸裂して、
「ふっ!」
テオドールの剣技が魔物の群れの中で華麗に踊る。
色々とあった二人だけど……
その相性は決して悪くない様子で、グランとジニーに等しいほどの巧みな連携を見せていた。
瞬く間に魔物の数が減っていく。
それでもまだ、援軍が途切れることはない。
終わりなんてないというかのように、魔物の群れは学院に侵攻を続ける。
「好きにさせるものかっ!」
俺も槍を振るう。
突撃してくる魔物の頭部を一突きで貫いて、絶命させる。
すぐに槍を回転させて、隣を抜けようとしていた魔物の足を払う。
倒れたところに矛先を突き刺して、トドメを。
今度は体ごと回転して、反対側から攻撃をしかけてくる数匹の魔物を、まとめて薙ぎ払う。
ついでとばかりに、こちらから攻撃をしかける。
あらかじめ持ち出しておいた、予備の訓練用の槍を手に。
全身のバネを使い、全力で投擲。
魔物を数匹、まとめて貫いた。
「なかなかに……大変だな!」
みんなで協力して、それなりの数を倒した。
あちらこちらに魔物の死体が転がっている。
なかなかに見られない光景だ。
でも、敵の増援は未だ途切れることはない。
無尽蔵に湧いてくるのだろうか?
そんなことを思ってしまうほどに、数が多すぎる。
「……まずいな」
今のところ、学院への魔物の侵入は許していない。
みんなが獅子奮迅の活躍を見せて、鉄壁の守りを見せていた。
しかし、いつまでも同じように動くことはできない。
どうしても疲労は溜まり、時間の経過と共に動きが鈍くなってしまう。
集中力も途切れてしまう時が出てくるだろう。
敵の増援の元を叩きたいところだけど、それがどういうものなのか、どこにあるのか。
まったく情報がない。
「アルトさまっ、西側が!」
「っ!?」
アレクシアの声で振り返ると、ノルンとその他学生たちの防衛網を突破して、一匹の魔物が学院の塀に取り付いていた。
「はぁっ!」
もう一度、訓練用の槍を投擲した。
距離は離れているが……届け!
その祈りは通じて、塀に取り付いた魔物を、投擲した槍が貫き落とした。
「……すでに防衛網が破綻しかかっているか」
みんなの力が足りないのではない。
敵の数が圧倒的すぎるのだ。
このままだと、数で押されてしまう。
今の時点で防衛網が崩壊したら、立て直すことは極めて難しいだろう。
そうなると……
学院の授業で学んだ戦術を頭の中に展開させて、今後の最適な布陣を思い浮かべる。
「みんなっ、校舎の手前まで後退する! そこで、もっと密な防御を構築する!」
「えっ、いいの!?」
ジニーが驚きの声をあげるが、今はこうするしかない。
「このままだと、ジリ貧だ! まずは、交代したりする余裕を持たせないと、いずれダメになってしまう。ここは、俺を信じてほしい!」
「うんっ、了解!」
ジニーは迷うことなく即答した。
他のみんなも……学生たちも、同じように、こちらに信頼の眼差しを向けてくれている。
確かに成長しているんだという実感を得られているようで、その信頼がとてもうれしい。
「みんなっ、校舎まで後退だ!」
「「「おうっ!!!」」」
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