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136話 侵攻

 ククルに連れられて学院の外へ。


「あれを!」


 ククルが指差す方向……街を見ると、あちらこちらで煙が上がっていた。


「うそ……街が……」

「燃えている……」


 予想外の光景に、俺とユスティーナは呆然としてしまう。


「……いや」


 驚いて固まっている場合じゃない。

 こうなる可能性は事前に伝えられていた。

 ならば、今するべきことは?

 それをしっかりと見極めて、行動していかないといけない。


「ククル、街の状況はわかるか?」

「……さきほど連絡がありまして、厳しい状況みたいです」


 まず最初に、王都の外に大群が出現。

 それに対処するため、大半の竜騎士が出て……

 その隙を突かれて、次は王都の内部で魔物やならず者たちが出現。

 対処できる人員が限られていて、即座の鎮圧ができないでいるらしい。


「……王都内部に敵の侵入を許したのが痛いな」


 避難命令も出ていない状況で、こんなことになればパニックに陥ってしまう。


 敵の目的は、おそらく、狼藉を働くこと。

 秩序なんて気にする必要はないから、好きに暴れればいい。


 一方で竜騎士や憲兵隊は、そうして自由に動けるわけではなくて……

 制限を課せられてしまい、厳しい戦いを強いられているのだろう。


 しかし、そうそう簡単に王都に侵入できるわけがない。

 内通者がいれば可能かもしれないが……つまり、そういうことなのだろうか?


「ユスティーナ」

「うん」

「竜は動いてくれるのか?」

「大丈夫。前もってお父さんとお母さんにお願いしたから、いざという時……つまり、こんな状況では動いてくれると思うよ。あっ、ほら」


 ユスティーナが遠くに見える山を指差した。

 距離が離れているためよくわからないが、竜らしき影がいくつか飛び立つのが見えた。


 おそらく、王都に迫るという大群の殲滅。

 及び、王都内の敵の掃討に繰り出してくれたのだろう。


 ただ……数は少ない。

 両手で数えられるほどだ。


「うーん……すでに、外の陽動でそれなりの数を割かれちゃったのかも。ボクたち、個体数は少ないから、幅広い展開っていうのは難しいんだよね……あと、王都内部の細かいところに潜む敵を叩き潰す、っていうのも苦手かも」


 竜の力は圧倒的だけど、小回りが効かない。

 周囲の被害を気にしなければ、街中であろうとどこであろうと、無敵の力を誇るのだけど……

 さすがに、好き勝手に戦われてしまうと困る。

 たぶん、周囲の被害がとんでもないことになるだろう。

 敵を好きにさせておいた方がマシ、ということになるかもしれない。


「ユスティーナ、もう一つの方は?」

「うん、それも大丈夫。お母さんがなんとかしてくれる、って」

「アルト殿、もう一つ、というのは……?」

「それは……」


 説明をしようとしたところで、こちらに近づいてくる影を見つけた。

 魔物、魔物、傭兵、魔物、傭兵……

 津波のように圧倒的な物量を持って、こちらに迫ってくる。


「説明している時間はなさそうだ」

「アルト、他の方向からも来ているよ!」


 ユスティーナの視線を追うと、左右からも敵影が。


 王都内部で敵は暴れているみたいだけど……

 学院にこれだけの戦力が集中するなんていう偶然は、普通に考えてありえない。


 敵の狙いは……


「最初から学院を狙っていた、というわけか」


 学院を物理的に消去するつもりなのか。

 それとも、俺たち生徒が狙いなのか。


 敵の詳細な目的はわからないが……

 この侵攻を許すわけにはいかない!


「アルト!」

「アルト君!」


 グランとジニーが駆けてきた。

 それぞれ武器を手にしているところを見ると、今の状況を理解しているのだろう。


「アルトさま!」

「僕の助けは必要かな?」

「あうっ!」


 アレクシア、テオドール、ノルンも駆けつけてくれる。

 それだけじゃない。


「おいおい、なんだよあの魔物の群れは!?」

「よくわからないが……向こうはやる気たっぷりだな」

「なら、迎え撃つしかないな。俺たちの学院は、俺たちが守らないと!」


 他の生徒たちも武器を手に、表に出てきた。

 みんな、とても頼もしい。


「アルト、みんなの指揮をとって!」

「えっ、俺が?」


 ユスティーナにそんなことを言われて、思わず困惑してしまう。


「これだけの人数がバラバラに動いたら、収集がつかなくなって、各個撃破されちゃうよ。誰かが指揮をとって、まとめないと」

「しかし、俺でいいのか……?」

「ばっかやろう! アルト以外の適任はいねえだろ」


 グランに叱られてしまう。


「今やアルト君は、学院の上位ランキングにいるんだから。その上、勲章持ち。誰も反対なんてしないわよ」

「付け加えるのならば、わたくしはアルトさまを推薦いたします。そうしたのならば、後で問題が起きることもないでしょう」

「僕も、イシュゼルド嬢と同じように、アルトを推薦しようか」

「……わかった、やるだけやってみるさ」


 みんなにこれだけの期待をされているのだ。

 それに応えるのが男というものだろう。


「あうあうっ」


 ノルンが隣に来て、俺の服を引っ張る。

 何事かと見ると、かわいらしく力こぶを作ってみせた。

 自分もがんばる、と言いたいのだろう。


 その愛らしさから忘れがちではあるが、ノルンは竜だ。

 しかも、バハムートの次に強い力を持つと言われている、エンシェントドラゴン。

 これ以上、頼もしいことはない。


「よしっ」


 俺は気合を入れて、背負っていた槍を手にした。


 俺たちの学院。

 そして、仲間たち。

 街の人々。


 全部、守ってみせる!

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