5章 ハートの女王の裁判
どれくらい歩いただろう、いままではチェシャと話ながらだったからどれだけ歩こうと楽しい時間だった、だけど今はどちらからも話そうとしない、空気は重く、戻った記憶の分心も重くなる、おそらくこの先に落ちている記憶の欠片もいい記憶ではないのだろう..でも拾わなければいけない、帽子屋さんにも言われたことだ、それはわかっている、でもこの不思議の国は楽しかった、私の記憶とは違い、
そんなことを考えながら歩いているとまた開けた場所へでた、そこは..
「私を待たせるなんてなんてやつだい!早く台に上がりな!被告人アリス!」
芝生の上に椅子や机などが並べられ、まるで裁判所のようだった、
「被告人..」
そんな記憶残ってないのになにか嫌な響きだ
「なにを黙ってんだ!兵士ども!台に上がらせろ!間違えても猫は一緒に上がらせるんじゃないよ!」その号令とともにトランプに顔と手足を付けたような兵隊が何人もやってきて私を引っ張り台にあげようとする
「ちょっ..離してっ!痛い!自分で上がるから!」
ちらっとチェシャを見るとそっちにも兵士は向かっていったが兵士の手が届かない場所まで浮かんでうつむいている、またパーカーのフードを被ってる..
そうか、チェシャは悲しいと顔を隠すんだね..なんでそこまで悩んでるって最初に気づいてあげられなかったんだろう..
私は叫ぶ
「チェシャ!さっきはごめん!ううん!今までずっとごめん!頼ってばかりで、記憶の欠片を探すことばっかり考えてて、自分のことしかかんがえてなかった!チェシャがなにか悩んでることにも気づかず!悲しんでる理由も聞かなかった!」
そこまで言って一息つくそして
「ごめんなさい..」
「アリス..」
チェシャ猫がこっちを見た、フードの下のその顔は、まるで迷子の子供のようだった
「アリス!!」
次の瞬間そう叫ぶとこっちに飛んでこようとする
「っ!はなせっ!」
しかしその隙をつかれてトランプ兵に捕まってしまう
その間に私は台まで引き釣りあげられた
目の前の裁判官のところにいる女は王冠をかぶり真っ赤で派手なドレスを着ている
後ろの襟はハートの形をしていた
「貴方はだれ!?チェシャを離して!」
そう私が言うとその女は睨みをきかして叫ぶ
「この私を誰だって?笑わせるんじゃない!この世界で一番偉いハートの女王さ!」
「さあ!白ウサギ!この被告人の罪状を!!」
白ウサギと呼ばれた白いウサギの耳を生やした腰のベルトいっぱいに時計を付けた男が叫ぶ
「はい女王陛下!この女、アリスの犯した罪は、チェシャ猫をたぶらかし自身の記憶をこの世界にばらまかせ不思議の国を混沌に陥れたことです!」
「っ!」
チェシャが顔を歪ませる
「..どういうこと?」
「違うんだアリス!」
チェシャが叫ぶ
「その猫を黙らせろ!」
「いっ!」
「チェシャ!」
ハートの女王の言葉でトランプ兵がチェシャを押さえ込む
「私はチェシャをたぶらかしてなんてない!それよりどういうことなの自分で記憶をばらまかせたって!」
「被告人は黙れ!証言者をここに!」
そこに連れてこられたのは帽子屋さんだった
「帽子屋さん..」
「さあ!帽子屋!証言を!」
帽子屋さんはため息をつく
「やはりここまで来てしまったか、しかし女王陛下、残念だが今回は私は証言しない!」
「なんだと!」
女王はその言葉に怒りたくっている
「今回は私はチェシャ猫側についているのでね、申し訳ない」
「誰だこんな証言者をつれてきたのは!その者の首をはねろ!」
女王が叫ぶ
「お待ちください陛下!今回はもう一人証言者をつれてきております!」
白ウサギが慌てて言う
「ではそいつを早く連れてこい!」
「はいいますぐ!さぁ!」
そうして次に連れてこられたのは公爵夫人だった
この騒動に被告人であるはずの私はまるでいないように無視されている
公爵夫人が叫ぶ
「はい!女王陛下!私が証言いたします!この女は私の飼い猫であるチェシャをたぶらかし自分の手足のように使い今回も自分の記憶の欠片を探させて楽しんでおりました!!」
「私はそんなことしてない!」
私も叫ぶ
「さぁ証言者が証言をしたぞ!判決を!」
だが私の言葉など聞こえないように寸劇は続けられる
周りに座っていた顔の見えない人たちが一斉に叫ぶ
「「有罪だ!有罪だ!犯罪者には罰を!」」
「やめろ!」
チェシャ猫は押さえつけられているのを必死でとこうとしながら叫んでいる
だが当然のようにそれも無視されている
ハートの女王が叫ぶ
「満場一致でこの女は有罪!!罰は私の持つ記憶の欠片を返してこの国から追放とす!!」
「だめだ!!やめろ!!」
チェシャ猫が今までで一番の大声をあげる
「え..?」
私はそのチェシャの声に驚いたが気づく、チェシャがこれほど嫌がるということはまたこの記憶は私にとって良くないものなのだと、それも今まで以上に、
でも帽子屋さんは記憶を手にいれてそれでもあがけと言っていた、だがあんなにチェシャが嫌がっている記憶だと思うと素直に受けとるのも怖く逡巡する
だがそのあいだに女王はもう目の前まで来ていた
「待って!!!」
私は慌てて叫ぶがもう遅かった
女王の持つ記憶の欠片は大きい光を放ち私の中に吸い込まれていった
「こいつ自分の兄貴殺したんだぜ!!」
「まじー、ありえない近く来ないで」
「そうだ!そうだ!」
「「人ー殺し!人ー殺し!」」
違う!違う!好きで私が生き残ったんじゃない!!
自分の意思で体が空に舞うそして堕ちていく、、