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3章 チェシャ猫の受難


「ねぇチェシャ、この森なかなか深いところまで来たんじゃない?」

「うーん、そうだねー」

私たちはまた自分の勘を頼りに森のなかをさ迷っていた

お茶会の会場を出たあとは途中まで普通に話していたチェシャが森を進むに連れて言葉数が明らかに減っていた

「ねぇチェシャ、もしかして迷ってる?」

「そんなわけないじゃん!ボクが不思議の国で迷うことなんてあり得ないよ!」

慌てて言うチェシャだがどうやら嘘はついてないみたいだ、だがそうなると逆に気になる

「じゃあどうしてそんなに浮かない顔なの?」

「うーん、どうしても気になる?」

どうやらチェシャはあまり話したくないようだ

「うん、特に私の記憶に関することなら」

「うっ!」

どうやら図星のようだ

「私は大丈夫だから話して?」

渋々という感じでチェシャは話し出した

「この道を進むってことはおそらく目的地は公爵夫人の家なんだ」

「公爵夫人?なんでその人の家だとダメなの?」

不思議に思いさらに問いかける

「...公爵夫人の家にあるってことはおそらくその記憶の欠片はアリスにとって良くない記憶だ」

やっとチェシャの浮かない顔の理由がわかった

さっきのお茶会でのことがあるからだ

「だから!そこはやめといてもっと明るい記憶の欠片がありそうな場所を探そうよ!森なんか抜けてさ!」

チェシャは必死な感じで言う

「だめだよ、帽子屋さんも言ってたじゃん逃げちゃだめだって」

「でもっ!」

「ありがとうチェシャ、心配してくれて、さ、行こ!ナイト様!」

「もう!アリスは一度言い出したら聞かない!いつもこうなんだから!」

文句を言いながらもついてきてくれるチェシャは本当に優しいんだと思う

だからこそ記憶を取り戻さなければいけないのだ


そんな会話をして数分後森のなかにたつ一軒家にたどり着いた

「まだ戻れるよ」

チェシャが言う

「ううん、行こう」

そう私が言うとはぁっと肩を落としてしまった

うーん、チェシャはなにか他にも隠してることがありそうだなぁと思いながらドアを叩く

返事がない

「ね!やっぱりここはやめとこ?」

まだ言うか!

「だめ、やめない、でも出てこないし留守なのかな?ねえチェシャ窓の方見てきてよ」

とチェシャに言った瞬間ダダダダダダッと走ってくる音が聞こえてドアが勢いよく開いた

「今チェシャっていったかい!?あのバカ猫やっと戻ってきたのかい!!」

出てきたのは派手に着飾った少しけばけばしい感じの女性だった、あまりの勢いに驚いて固まってい私をガン無視して隣に浮いているチェシャにずんずん近づいていき首に着いているチョーカー、いや、猫だから首輪なのかな?をむんずと掴み

「まったくほんとにバカでどうしようもないね!!」

と呟きながら家のなかにズルズルと引きずり込もうとしている

「ちょっと待ってください!」

とっさにチェシャの足に抱きつき止める

それを見た女性はキッと私を睨み

「なんだいこの小娘は!うちのバカ猫の足を放しな!!」

と怒鳴られた

あまりにチェシャのことをバカバカ言われ癪に触り怒鳴り返す

「人の連れいきなり引っ付かんでバカバカ言いながら連れてこうとする貴方こそなんですか!離してください!」

すると女性はふんっと鼻で笑い

「なにいってんだい!元々このバカは私の家の猫だ!」

とさらに怒鳴ってくる

その言葉を聞くとされるがままだったチェシャが首輪から手を振りほどいて叫んだ

「だから!ボクはもう公爵夫人の飼い猫じゃないって言ったじゃないか!!ボクはアリスの猫だ!!」

話はよくわからないがどうやらこの人が公爵夫人のようだ

公爵夫人はまたバカにするように笑い怒鳴る

「まーだバカの一つ覚えみたいにアリスアリス言ってんのかい!!いい加減目え覚ましな!お前はうちの飼い猫だ!」

チェシャはチェシャで「ちーがーうー!!バカじゃない!!」と怒鳴り返している

そんなやり取りをしたあと公爵夫人はこちらをギョロリと向き叫ぶ

「あんたがアリスだったよな!よくもうちの猫を毎回毎回たぶらかしてくれるじゃないか!!覚悟できてるんだろうねぇ!!」

あまりの剣幕に一歩後ろに引いてしまっているとチェシャが唸る

「アリスには手は出させないぞ!!」

それを聞いて暫く黙っていた公爵夫人だったが

「ああわかってるとも!アリスには手は出さないさ!腹は立つけどね!とりあえず二人とも早く上がんな!」

どうやら歓迎はされてない家の中には入れてくれるようだ

家の中に入るとひどい有り様だった

ぎゃーぎゃーと大泣きしているベビーベットの赤ちゃん、それに対してぶつぶつ怒鳴りながら台所から手当たり次第物を投げつけているコック姿の男

入った瞬間一刻も早くここを出たくなった

「チェシャは公爵夫人の飼い猫だったんだ」

そういえばと思いチェシャに言う

「違うよ!正確には元飼い猫!!もうボクは公爵夫人の猫じゃない!」

「チェシャにもいろいろあるんだね..」

ぷんぷん怒っているチェシャは一旦置いといて早く家から出たいので手っ取り早く聞く

「ところで公爵夫人、実は探し物をしていてですね」

ここまで言ったところで公爵夫人が

「記憶の欠片だろ!!確かに私の家のどっかにある!だから勝手に探して持ってきな!私はこれから女王とクロッケーをする用事がある!探すついでにその赤ん坊の面倒も見ておきな!」

そう言うと公爵夫人はさっさと支度をして出ていってしまった

「チェシャの苦労が少しわかった気がする」

今の一悶着で一年ぐらい寿命が減ったきがする

そんなことを話している間もコックは物を投げまくっている、そしてそれが赤ちゃんにも当たっていることに気がついた私は慌ててベビーベットの前に立ちコックに叫ぶ

「赤ちゃんにも当たってますよ!物を投げないで!」

コックはそんなことしったこっちゃないという感じでガン無視で物を投げ続ける

チェシャが言う

「無理だよ無理、ボクが飼われてたときからずっとこんな感じだし..早く記憶の欠片見つけてこの家を出よ」

もうほとほと疲れきった様子だ

「この辺りには人を食べるような獣とかはでる?」

チェシャに聞く

「いないけど、なんで?」

不思議そうにしていたがチェシャは答えてくれた

「そう、ならベビーベットのそっちもって!私がこっち持つから」

「え!?なにするの!?」

「こんなところにいたら赤ちゃんが怪我しちゃうでしょ?せめてあの公爵夫人とかいう人が帰ってくるまで外に置いときましょ!天気も悪くないし獣もいないならこの中よりよっぽどましでしょ」

笑いながらそう言うとチェシャは少し元気を取り戻して

「やっぱりアリスは優しいね」

と一言言うとベビーベットのもう片方を持ってくれた

ベビーベットを外に置いて記憶の欠片を探しに家に戻ろうとしたが赤ちゃんが一向に泣き止む気配がない

「どうしよう、私赤ちゃんのあやしかたとかわからない」

「最初に言っとくけどボクもわからないよ、猫だし」

「ですよね」

とりあえずベビーベットに近づくだけ近づいてみたら赤ちゃんのいるはずのベビーベットから淡い光を放つ欠片がでてきてそのまま私の中に吸い込まれていった

「アリス!」

チェシャの叫ぶ声を最後に記憶の海に溶け込んでいった



「なんでこんなこともできねぇんだ!!」

ごめんなさい

「○○とは大違いだな!」

ごめんなさいごめんなさい

「お前なんて出来損ない生まれてこなければ良かったんだ!!そうしたら○○は死なずにすんだ!」

「ごめんなさいお父さんだから物を投げないで」

「俺のことをお父さんなんて呼んでんじゃねえ!!」

物を投げないで、殴らないで、お母さんは止めてくれない、ごめんなさい、ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!生まれてきてごめんなさい..




「ごめんなさい!」

自分の声と同時にがばっと飛び起きた

「アリス!大丈夫?やっぱりこんな家来るべきじゃなかったんだ!!アリス、泣かないで」

泣かないで?ひたりと頬に触ってみる、冷たく濡れていた、悲しいな、指摘されなきゃ自分が泣いていることにさえ気づけなかったなんて、、

「もうやめよう、こんなにアリスが傷つく必要はない!」

チェシャが言うが

私はまだなにも考えれられなかった

その時またあの香りを感じた

「ダメじゃないかぁそんなにアリスを泣かせてさぁ、ちゃんと守ってあげないとねぇ、ねぇ嘘つきの猫さん」

その声は前みたいに後ろからじゃなかった

目の前にそれは立っていた


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