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2章 狂ったお茶会で決意を固めて



「で、この森入って大丈夫なのかな?」私はチェシャの言うとおり自分の感覚を頼りに草原を歩いていくと森の入り口にたどり着いた

最初こそ落ち込んでいたチェシャだが気づけばフードも外し、最初に会ったときと同じ少し不気味な笑顔に戻っていた

「大丈夫大丈夫!アリスの思うように進めばいいんだよ!」

あまりに軽く言うので少し不安で言う

「でもこの森深そうだよ、迷ったら出られないかも..」

そうするとチェシャはまたキャキャッと笑って言う

「だから大丈夫だって!最悪アリスが道を見つけられなくてもさっきも言ったけどボクはこの不思議の国に詳しいから迷うなんてあり得ないよ!」

「じゃあ最初からチェシャが案内してくれればいいじゃん」

と思ったことをそのまま言うと

「それじゃダメだよ!記憶は自分で探さなきゃね!まぁ導かれるから迷うこともないと思うけどー、ボクは最終手段だから簡単には案内してあげられないなー」

とニヤニヤしながら軽く流されちょっと不機嫌に言う

「優しかったと思ったら次にはすぐ人のことからかって、いじわる」

「猫だからね、猫はいじわるで気まぐれなものさ」

こんな会話でもチェシャは楽しいらしくずっとキャッキャッキャッキャッと笑っている


そんな感じで軽口をたたきあいながら自分の思ったほうに森のなかを進んで行くとなにかに誰かの喋り声のようなぎやかな音が聞こえ始めた

「ねぇチェシャ、話し声が聞こえるけど行ってみても大丈夫かな?」

さっきのこともあり少し警戒してチェシャに聞く

「このあたりってことはー、あいつらかな?うん!行って大丈夫だと思うよ!」

案外簡単にOKを貰えて少しびっくりしつつじゃあとその声をたどって歩いていく

少し歩くとすぐ開けた場所に出て一人の男と目が合う

「おお!アリスじゃないか!どうだい?君も混ざっていかないかい?」

その男は目が合うやいなや話しかけてきた

この人も私の名前を知っているようだ、記憶が砕ける前の知り合いなのかなと考える

チェシャの様子もそろっとうかがってみたがニヤニヤしているだけなので特に問題はないと言うことだろう

「貴方は誰?なにをしているの?」

一応気になることもあるので聞いてみる

「私かい?私は見ての通り帽子屋さ!なにをしているのかって?それも見たらわかるじゃないか!お茶会だよ、ティーパーティーさ、アリスも一緒にどうだい?」

帽子屋と名のる男は確かに頭の上には少し大きめのシルクハットを被っていて服装などもよく見ると帽子を作るのに使うのであろう道具が腰のベルトに沢山着けてあった

問題はお茶会のほうだ、私自身ぱっと見たときには縦長のテーブルにティーポットやカップが置いてありお茶会をしているのかと思ったがよく見るとティーカップもケーキスタンドも何もかもが空っぽなのだ

不思議に思い直球で聞いてみることにした

「帽子屋さん、でもお茶もケーキもないじゃない?準備中ってこと?」

その言葉を聞いて別の誰かが声をあげた

「それは違うよアリス!もうお茶会は始まってる!!全部食器も揃ってる!なにも足りないものなんてないでしょ!?」

あまりの声の大きさとあまりのテンションの高さに驚いてそっちを見ると頭からウサギであろう耳の生えた人が座っていた

チェシャのように手足が獣のようということも特にないが目がやばい、、確実にかかわってはいけない類いの目をしていた

慌てて後ろに数歩下がりお茶会の会場を見渡してみると帽子屋さんとヤバそうな人以外にもう一人机に突っ伏している人がいた

その人は今度は頭からネズミらしき耳が生えていて細長いしっぽがゆらゆら揺れている

後ずさった私を見て帽子屋さんが話し出す

「そうか、アリスは記憶がなかったんだね。そっちのウサギは3月ウサギ、見ての通り気が狂ってる」

そう言われた3月ウサギは

「そう!狂ってる!!なにもかも楽しいよね!!すべてが狂ってるほうが!!」

そう言ってなにも入ってないティーカップになにも入ってない角砂糖入れから角砂糖を取り出す動作をして、その角砂糖を空のティーカップに落としティースプーンで混ぜて飲む動作をした

まるで本当に紅茶を飲んでいるみたいに

それを見た帽子屋さんはやれやれという感じで話を続ける

「ほらね、正気の沙汰じゃないだろ?」

私はうなずく

「あっちで寝てるのは眠りネズミ、名前のとおりほとんどずっとあんな感じで寝てるのさ、さぁ記憶のないアリスに紹介も終えたことだしアリスも一緒にお茶会をしようじゃないか!」

帽子屋さんはそう言うが私から見れば3月ウサギだけでなく皆正気には見えない

「申し訳ないのだけど私は記憶の欠片を探しに行かないとなので..ねぇチェシャ?」

到底この人たちとお茶会をするきが起きずチェシャに助けを求める

だがチェシャはとてもニヤニヤしながら

「いいじゃないかアリス、時間は腐るほどある、お茶会に参加しなよ!」

と言った

どうやら私が困ってるのが楽しいようだ

どうしようと困っていると帽子屋さんが話し出した

「チェシャ猫の言うとおりだ時間は腐るほどある、いや、時間なんてないのかもしれないな!なにせ私の時計、いやこの世界の時間は止まったまま動かないのだから!!」

時間が止まっている?やはりこの世界の人たちは言っていることがよくわからない

「..時間が止まってるってどういうこと?」

だがそう聞いたら逆になにを言ってるんだという顔をされた

そして帽子やは言った

「なにを言ってるんだアリス、時間が動くことを否定したのは..」

「..帽子屋」

チェシャ猫が名前を呼び止めようとするが止まらない

「この世界の時間を止めたのはアリス"君自身"じゃないか!」

「帽子屋!!」

チェシャが怒鳴る

「チェシャ猫、アリスが大切なのはわかるがそう怒鳴るな、いずれ知らねばならぬことだろう、しかも今回はここにそのことについてのアリスの記憶の欠片がある、返す前に言うのが通りだろう」

「っ!」

チェシャ猫が押し黙る

「え、待って、どういうこと?..」

唯一私だけはその話の意味を理解できなかった

「私が時間を止めた..?」

帽子屋さんがティーポットに手を入れる、そしてティーポットからキラキラ光る欠片を取り出した

最初のときにチェシャ猫がポケットから取り出したのと同じ物だ

「記憶の..欠片..?」

帽子屋は答える

「ああそうだよ、さあ君の記憶だ、見ておいで」

そう言うと記憶の欠片は私のなかに吸い込まれていった






「○○が死んだ!?あんな出来損ないを庇って!?そんな..そんな..許せない!!」

「おい!お前の○○お前のせいで死んだんだってな!お前人殺しだな!」

お願い、お願い、時間を戻して!あの時に!そしてあわよくばそのまま時間を止めて!!





「..ス」「..リス」「アリス!!」

チェシャ猫の呼ぶ声で溺れそうになっていた記憶の渦から目を覚ます

「アリス!大丈夫?」

チェシャが心配そうに聞いてくる

「まって!これが!私の記憶の一部なの!?こんな!冷たくて重いものが..私が誰かを殺した..なんで!?だれを!?」

心配してくれるその言葉ではどうにもならないほど動揺を隠せず叫ぶ

名前を、アリスという名前を思い出した時とは程遠い気持ちに、記憶に焦りが隠せない

「アリス!大丈夫だから!落ち着いて!ね!」

チェシャがなにを言ってくれても全然落ち着けなかった

帽子屋が言う

「チェシャ猫!まさかまだ他の記憶は全然戻ってないのか!?」

チェシャ猫はどうしていいかわからないようにうなずく

「ボクが拾っておいた名前の記憶だけしか..」

「そうか、それではまだこの記憶は早かったか、」

帽子屋が呟く

「どうしよう!このまま記憶を探して取り戻していったらどうなるの!?」

帽子屋が言う

「アリス!落ち着きなさい!」

「でも、でも!私はどうしたらいいの..」

バシンッ!!

帽子屋さんが私の顔を両手で勢いよく挟んだ

「まず落ち着きなさい!怖いかもしれない、恐ろしいかもしれない、この先これ以上の嫌な記憶もあるかもしれない、でもアリス、君は記憶を取り戻さないといけない」

「なぜ?なぜつらくても取り戻さないといけないの?」

少し落ち着いて聞く

「それはねアリス、このまま記憶を捨ててしまえば確かに楽かもしれない、でもそれではいけないんだ!記憶はあるべきところに戻さなければならない、そしてその恐怖に勝つ強さを持たなければいけない、それがこの不思議の国で唯一アリスに必要として求められることだ、非常識で狂ったなんでもありのこの世界で唯一、それにここでやめてしまえばチェシャ猫の苦労はどうするんだ?」

「帽子屋!ボクのことは!」

チェシャが帽子屋さんを止めようとする

「いや!言わなければならない!君のことを探し、記憶を集め、君を必死に守ろうとしているナイトの頑張りを無下にするのか!」

帽子屋さんの言葉にドクンと胸がなる、この世界で、記憶をなくして、初めて話しかけてくれた、私を守ろうともしてくれた、記憶を探すのも手伝ってくれてる、その気持ちは無下にできない、うつむいているチェシャに言う

「ごめんねチェシャ、取り乱して、帽子屋さんもありがとう、私は探すよ、残りの記憶の欠片も!自分のためにも、チェシャのためにも!」

チェシャがバっと顔を上げる、その顔は泣きそうにも見えて、、

「アリス!」

そう叫ぶと私に飛びついてきた

それから何度も何度もアリス、アリスと言葉を紡ぐチェシャの頭を私は無意識に撫でていた

「ごほん!」

帽子屋さんの咳払いで我に帰り慌てて離れて謝る

「ご、ごめんなさい!」

チェシャは離れられたことに少ししゅんとしている

「チェシャ猫は猫だけど一応人の形をなしている、若い男女がそう人前でくっつくものではない」

「すいません..」

私はもう一度謝る

そうすると帽子屋さんは

「と、いうのが普通の世界では当たり前なのかもしれないがなんといってもここは不思議の国!常識なんてものは通用しない!まぁ言ってみただけだ!存分にくっついて構わないのだよ」

と笑いながら言い放った

そうするとチェシャの目が輝いてまた飛び付こうとするのを手で制止しながら言う

「帽子屋さん!ふざけないでください」

すると帽子屋さんはニヤニヤしながら言う

「いや、こっちが私の正常さ!なにせ私は狂った帽子屋、たまには異常になって真面目なことを言ってみようと思っただけだよ」

「さあ!私はお茶会の続きをするとするかね!アリスとチェシャ猫は次の記憶の欠片を探しに行くといい!」

「帽子屋さん..」

「さあお行き」

私はできる限り頭をさげ

「ありがとうございました!」

帽子屋さんにお礼を言った、そして

「チェシャ行こう」

手で制止されたことが不服げなチェシャを促してお茶会の会場をあとにした

最後に帽子屋がこそっとチェシャ猫に言った言葉は私には聞き取れなかった

「チェシャ猫、今度こそ上手くいくさ、がんばれ」

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