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才能を選択してください

「リザードマンが居ない!」


 種族は六種選べるみたいだけど、リザードマンもアラクネも、ラミアもリッチもドラゴンも居ない! これの何処が私の好みだよ!? あ、いや別にゲームを楽しみにしてる訳ではない。全くやったことも聞いたこともないゲームでも、攻略本を見るのは楽しかったりするでしょう? それに似たような感情であり、決して頭の片隅にリザードマンが居た訳ではない。

 そんな誰に宛てるでもない言い訳を呟きつつ、まぁ設定を見るのは吝かではないので読み進める。

 ワーウルフや九尻の狐なんかを明らかにイメージしている挿し絵を見るが、見た目で選ぶなら狐人かな。でも魔法特化の種族か、嫌いじゃないけど……。狼人は物理特化、山人は物理でも防御寄りか。

 こういうゲームをプレイする場合、パーティ全てキャラメイク出来るなら最初のキャラはハイブリッドタイプの前衛防御寄りにするのが私の趣味だ。主人公っぽいし。でもこのゲームは一人のみキャラメイクっぽいなー。私がどう生きるのかって煽り文がある以上そうだろう。これで何人でもキャラメイク出来るって言われたら煽り文詐欺だ。

 そうするとNPCとパーティーを組んだりするのかな? ハイブリッドタイプは上手く育てばどんなパーティーにも入れる反面、器用貧乏になってしまったら全くいらない子になる。

 それに最大の問題は山人の見た目が私の趣味に全く合っていない。何が悲しくて花の乙女がオッサンキャラを操作してキャッキャウフフしないといけないのか。山人の女性? 太った小柄なオバチャンだよ! ちなみに人間は既に眼中にない。

 職業は前衛攻撃タイプの戦士、前衛防御の騎士、遊撃回避の野士、魔法攻撃の術士、魔法補助と回復の導士って感じなのかなこれ。ハイブリッドしやすそうなのは騎士か野士?

 どうしてもハイブリッドタイプにするなら猫人かなー。フィジカルもメンタルも回避系の才能が良く成長するけど、他は人間より少し下。才能次第で十分成長するだろうし、見た目も悪くない。盾とか水の才能を積んで防御寄りにすれば大丈夫だろう。

 けれどなー、そうするとあと一つの才能は剣か槍? 魔法を二つ振って複合魔法を試してみたいんだよねー、魔法開発とか私の好みど真ん中です。水と風で氷とか出来そう。魔法に二つ振りたい時点で前衛防御寄りは絶対に無理だこれ。

 じゃあ猫人か森人でフィジカルに期待を残しつつ、杖と炎、風で完全魔法攻撃タイプ? それならフィジカルに期待を残す意味がないな、下手にフィジカル系のレベルを上げるとメンタルにデメリットが有るみたいだし。これちゃんと組み合わせ考えて才能選ばないと、ハイブリッドタイプは長所を殺し合っちゃって残念な子になるのね。

 狼人じゃなくてリザードマンだったらなー、農民の生まれ、戦士の才能、大剣3ポイントでゴリゴリの脳筋キャラにするのに。アラクネでバリバリの魔法キャラでもいいけど。

 うーん、猫人の野士で鎌、炎、風を取って近接回避型と魔法のハイブリッド? 回避は出来るけど攻撃が残念な子になりそう。生まれを職人にすれば一応使い物にはなりそうだけど……残念なことに主人公の匂いがしない。やっぱり派手な物理か魔法がないと主人公っぽくないなー。

 生まれをランダムにした場合は後天ギフトプレゼントっていうのも気になる。

 じゃあ狐人で術士、杖、炎、風の出生ランダム? ソロが不可能な気がするなー、1度プレイして試してみたい所だけど……見た感じゲーム機が部屋に無いんだよね。キャラを決めたらゲーム機が現れるのかな?

 うーん、どうしよう。ハイブリッド諦める? 猫人の術士で武器を弓にして、後天ギフトに期待をかける? 弓でソロって出来るのかな。うーん……どうしよう……。

 そういえばこれ、先天ギフトの人物鑑定がないと自分のステータスすらわからないのかな。クソゲーだこれ、これも改善点にしておこう。手帳持ってプレイしないといけないや。

 先天ギフトは選ぶなら人物鑑定一択じゃないかな? いやでも多言語はイベントに役立ちそうだし、鑑定は定番の便利スキルか。収納上手も買物上手も、あれば便利っぽいよね。あー、でも全部1って付いてるなら、成長するのかな? じゃあ人物鑑定で多言語を持っている仲間を集めれば、自分が持っている必要はないか。鑑定も買物上手もだね。成長すると信じて人物鑑定かなー、ソロ辛そうだけど。

 そうすると自然にパーティーリーダーになるのか。リーダーするならやっぱり前に出られるキャラがいいな、個人的にリーダーなのに皆に守られるのは好みじゃない。

 黒騎士とか魔法戦士とか、ハイブリッド用の職業があればこんなに悩まないのに。職業が少ない点もクソゲー手帳に書いておこう。

 それじゃあ、主人公感は諦めて、猫人の女性術士、鎌、炎、風の人物鑑定かなー。前に出る遊撃術士って感じで、敵に狙われたらひたすら逃げる! 出生は貴族以外なら何でもいいからランダムで。

 出生ランダムって所に少し諦めきれてない感じが出ているけれど、魔法開発も出来るし、ある程度ソロも戦えるんじゃないかな? 後天ギフトに何が来るのかが心配だけど。

 ……。


「って、何を私は真剣にキャラメイクしてるのだろう……」


 これで良し! っと思い顔を上げ、このノスタルジックな空間と『種族を選択してください』のホログラムが……いや、何気に『才能を選択してください』に変化している文字が目に入り、一気に現実? へ引き戻された。

 良し! じゃない。そもそもこの空間は何なのか。白昼夢? だとしたらドンだけゲームしたいんだ私は。

 確かに最近はゲームから離れぎみだったけど、それでも半年前まではチョコチョコと狩猟ゲームをやっていた。昔のように武器を制覇しようとか、一番上のランクまで上げようとか、そこまでの情熱が湧かずに何となく放置していただけだ。

 昔のあのゲームに対する情熱はどこから湧いていたのだろうと思うも、あの頃は……とかいい始めたら歳をくった証拠という同期の言葉を思い出し考えを破棄する。私はまだ若い。若い。ちょっと昔の知識があるだけだ。恋人が居ないのは歳のせいではなく、私の眼鏡にかなう相手が居ないのだから仕方ない。これでも昔は何度か告白されたものだ、近所の小学生とかに。っていうか昔じゃない。がっでむ。私はまだ小学生だ。釣り合う。何がだ。


「あー、やめやめ!」


 暴走を始めた思考を、かぶりを振って再度無理やり破棄することに成功する。そもそもこの白昼夢がいけないんだ。さっさと目が覚めないものかと思い、ゲームでも何でもするからと辺りを見渡すと、机の上に一枚の紙が出ていることに気がついた。

 近づいて良く見てみると、それは所謂テーブルトークRPGというもので使用される、キャラクターシートだった。


「RPGはRPGでもTRPGですか……守備範囲外なんだけど……」


 やったことないよ! っていうかTRPGならゲームマスターとサイコロが必要でしょう? ましてキャラクター一人とか成り立つものなの?

 そう思いつつも、状況に何も変化がないので、仕方なく先ほど決めたキャラクターの設定を書き込んでいく。これ所持品とか装備品の欄がないけど良いのかな? 間違ってない?

 所詮一人分、しかも書く項目が少ないのですぐに書き終わり、私の手は最後の空白の上で停止した。キャラクターの名前である。


「名前かー」


 良く使う定番の名前は有るんだけど、どうしようかな。まぁそれでいいか。


「レミーリア……と。」


 そうして。最後の欄を埋めた瞬間。

 私の視界は、白い光に包まれた。

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