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あの時が聞こえる  作者: end&
間奏:過去の過去「クラリネット消失事件」
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33/42

ただ嘘がゆるせなかった

「――っ!!」


 教室に雄叫びが響き、椅子が倒れる。

 留海が里音につかみかかろうとするのを、聖良が羽交い絞めにして止める。

 二人の間にいた二年生たちは廊下側の壁に身を寄せ合って逃げる。

 里音は肩で息をしながら留海の怒り狂った様子を見ている。


「留海、落ち着けって!」

「ふざけるな! スカートに挟んだ? 楽器をなんだと思ってんの!?」


 やがて、嗚咽がと共に留海の瞳から涙が零れ落ちる。

 飛びかかる気力も失い、教室の床に座り込んで泣く彼女を、聖良が抱きとめる。


「あとは、探しに行くフリをして、優穂のケースに留海のクラリネットを入れて、見つかったと言えばいい、そう言うことだな? 深澤」

「そうです」

「ちょっと待ってください! それなら、誰にでもクラリネットを盗むことができて、私一人が犯人扱いって――」


 里音の言葉が途切れる。

 誰も彼女を擁護しようとしない。

 同じ、音楽をやってる人間として、侮蔑のまなざしが注がれる。


「私じゃない、私のせいじゃない! 物的証拠ってやつ、なにもないじゃん!」

「たぶん、家に持ち帰ったクラリネットも元のケースに収めているだろうし、証拠は指紋とか、警察沙汰になっちゃうんですけど」


この後に及んで冷静な理世に、里音は噛み付く。


「お前みたいな部外者がしゃしゃり出てくるから悪いんだろ! いや、みんな私を貶めようって、そうなんでしょ? 新夏! あんた優穂と仲良かったよね? そうよ、みんな優穂に何か握らされたんじゃないの? 紗久乃先輩だって、優穂と同じ中学だったんでしょ? 私一人仲良い人がいなくて、窃盗犯? は? 親に言いつけてやるから! こんな学校、どうなったって私には関係ない! コンクールだって全国に行けない弱小じゃん!」

「じゃあなんで、吹奏楽部に入ったの?」


 冷静で、それでいて純粋な質問だった。理世は質問を続ける。


「コンクールなんてどうでもいい、だったらなんで吹奏楽部に入ったの?」

「それは、中学の時からやってて――」

「他に居場所がなかったからじゃないの?」


 刹那、里音が目の前の椅子を蹴り上げる。

 二年生たちの悲鳴が上がる。


 机を押しのけて歩く里音。理世の顔に平手打ちがもろに決まった。

 理世は少しだけ首をかしげただけ。

 だが、爪が引っかかったのか、頬に血がにじんでいる。

 目はまっすぐ里音を見つめている。


「私は、ただ嘘が許せなかった。それだけだから」


 それだけ言って、理世は教室を出る。


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