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 今宵は新月だった。

 冷たい針のような風が吹くなか、大きな建物の屋根の上に二つの人影があった。

「ほんっと、女の好みに関しては遺伝だと思うわよ? だってあの子、アタシのフィーちゃんとよく似てるもの」

 人影のうちの一人、大昔この国で至高の暗殺者と呼ばれた老人は自分の孫に向かってそう笑んだ。

「……そういえば、僕の婆様ってどんな人だったの?」

 その老人はもう片方の人影、細かい傷だらけの状態で冷たい屋根の上に仰向けに倒れ満天の星空を仰いていた彼の孫が痛みに顔をしかめながらそんな疑問を口にした。

 その疑問に彼は顔をぱあっと輝かせる。

「聞きたい? 聞きたい聞きたい聞きたい? うっふふふふ、そういえばちゃんと話したことはなかったわねえ、やっだ〜、アタシとしたことがそんな肝心な事を話し忘れてたなんて」

 いきなりテンションを上げた祖父に少年は思わずやってしまったとでも言いたげなうんざりとした表情を浮かべる。

 こうなった彼の祖父はそう簡単には止まらない、かつて彼の祖父が自分の娘、彼にとっての母親に当たる人物の昔話をした時も、それはそれは長く喋り続けたのだ。

 今夜は眠れなそうだと少年は思わず溜息を吐いた。

「いいわ、話してあげるあの子のこと。世界一可愛いあの子のことをね」

 早くもげんなりしている自分の孫の様子に気付いていないのか、あるいは気付いた上で気にしていないのか、老人はそう笑って本当に嬉しそうな表情で口を開く。

 そして彼が語り始めたのは、以下のような話だった。

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