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8 白き閃光

『リカバリーモード起動』

 暗い視界の中、機械で合成されたような声が聴こえた。


 血の海の中、ただ一人、嬉しそうな顔をする青年がいた。


「白き、閃光……」

 シエルが青年を青ざめた顔で見つめる。


「私を懐かしい名前で呼ぶ君は誰だい? 私はあまり人の顔を覚える事が出来なくてね。永く生きていると忘れてしまうんだよ、色々とね」

「あなたが忘れても、私はあなたを忘れない。忘れることなんて出来ない! 家族を――殺されたんだから」


『破損部位特定……頭部切断により体液の流出を確認。これより再起動に向けて修復作業にとりかかります』

 まだ世界は回っている。

 ビチャビチャと粘り気のある水の中を回っている。


「そうですか。ですが、殺される方が悪いと思いませんか? 力が無い者は淘汰される。それは自然の摂理だと私は思います」

「私の両親を殺したのは、弱かったからだと言いたいの?」

「ええ。君の事も、その私が殺したという両親の事も覚えてはいませんが。それでも、あの方が造り上げた作品を評価するのが私の使命ですから」

 自分の使命を遂行する。結果の為なら過程はどうでもいい。

 そう言いたいのだろう。


『頭部パーツの回収に成功。再接続を開始――――完了。最小限のダメージのため、外傷の治癒も同時に完了しました。続いて、不足した体液の補充作業を行います』

 回っていた世界が停止する。

 水の中から引きあげられ、懐かしい場所へと戻って来た。


「………………」

「………………」

 沙耶と母は動かない。

 その瞳はまるで無機質なガラスの球体のようだ。


 それを見てシエルは言う。

「やっぱり――白き閃光。あなたが現れると機巧人形(マシンドール)は停止してしまうのね」

「そのようですね。まぁ、そのように造られた存在ですので。むしろ、私には何故君が動けているのか不思議でなりませんよ」

「私には対抗策があるから……目の前で動けなくなった両親を無惨にバラバラにされたあの日、お前が去った後、先生から託された物が」

 シエルはぎゅっと手を握りしめ胸の辺りに置く。


『修復完了。これより起動シークエンスに移行します…………』


「そうですか。では、私と戦いますか? 君は私に怨みがあるのでしょうし、ここで相見えた(あいまみえた)のは運命でしょうからね」


『リカバリーモード終了。通常モード起動』


 体に通る全ての神経が脳からの信号を伝達する。


「そうね。そのための対抗策だもの……え?」

 青年の問いに対しシエルは同意した。


 ――その瞬間、眼前に白い刃が出現した。


「う、おおおおおおッ!!」


 間に合うか?

 知らん! それでもシエルが気付いてないのはわかる。このままだと確実に、死ぬ。

 状況はわからねぇが、俺にしか出来ないのだろう。俺にしか助けられないのだろう。俺がやらなければならない。俺が奴を殺さなければならない。そのためには最速で動くしかない。


 光の速度を超えて。


 白き閃光となりて。



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