風の愛娘
姫は風に愛されている。しかし、国には愛されていなかった。
姫が生まれた日。竜巻が国を襲った。城下町の三分の一が失われ、人々は風を恐れ始めた。
姫の一歳の誕生日。
その日も竜巻が国を襲った。王は姫を愛していた。けれど、どうにかしなければならないと、考えていた。
それから姫の誕生日が訪れる度、竜巻が国を襲った。
王は苦渋の決断を迫られた。姫を処刑することに。国を守るため、民を守るため、王は決断をした。
五歳の誕生日の前。
姫は処刑台へ送られた。しかし、姫の涙が流れた瞬間、風が姫を守るように吹き始めた。
処刑人の首を切り落とし、国が暗闇に覆われた。
「止めて!!」
と、姫の願いを聞き、風は止んだ。
姫を殺すことも出来ず、生かしていても、国を不幸にする。
その日から、姫は国の中でも一番高い塔の中に幽閉されてしまった。
両足には鎖が繋がれ、忌む子として恐れられた。
姫は泣いた。すると風が吹いた。けれど、その風は攻撃的で人々を傷つけた。
「大丈夫だよ。だから、みんなを傷付けないで」
姫の願いは聞き届けられた。
七歳の誕生日。
姫は病に倒れた。すると風が泣き始めた。国は雨に包まれ、何ヶ月も降り続いた。
王は国外にいる魔法使いを呼び寄せ、姫の病を治させ、そして死なないよう魔法が掛けることを頼んだ。
姫は目を覚ました。
「もう泣かないで。私は大丈夫だよ」
塔の中から風に呼びかける。すると、風は喜び雨を止めた。
それからの誕生日。
姫は、風に願った。
「もう竜巻を起こさないで」と、笑いかけた。「その代わり、優しくて暖かい風で包んで」
風は喜んで、優しく暖かい風を吹かせた。
そして姫は風に乗って、聞こえてくる歌が好きだった。聞いているだけで楽しかった。姫は誰にも聞こえない声で歌を歌い続け始めた。
誕生日になると、風は姫の知らない花を持ってきた。姫の喜ぶ顔が見たくて、世界中の花を毎年、吹かせてくる。塔は花で溢れ始めた。
そして、三百七十六年が経った現在。
塔の中は花で溢れ、姫は未だに若々しく生きている。
誰にも聞こえていないと思いながら歌う姫。しかし、姫の歌は風に乗って民たちへ届けられていた。
「風の歌だ」
「今日も美しい歌ね……」
「風に愛された、娘」
姫は生き続ける。風と共に。
あとがき。
最初は300字でおさめる作品の予定だったのですが、無理でした^^;
ここからもっと広げられたら、いいのですが……。
風に関する物語は、大好きです^^
あと、水に関する物語も!!
続編のようなの書きました。
ワンライでの挑戦からです。
「風に乗って、会いに行く」
http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=7080600
(pixivへの投稿したあと、こちらにも投稿しようと思います。)