待っていたのかもしれないーー続き
お題【訪れ】で書きました「待っていたのかもしれない」の続きです。
雨が降らなくなってから、もう七十四日も経っていた。村にある畑は枯れ果ててしまい、もう食べ物も底を尽きかけていた。
「もう雨が降らない……」
「あの子供を捧げよう」
「山神様に生贄を捧げ、雨を降らしてもらおう」
村人達は森の中に幽閉している子供を生贄に捧げようと森へ入っていった。
産まれた時から、人でないものが見られることから、その子供は村人達から疎まれていた。それも見た目からそう言われていただけだったのだが。
白い髪の毛、金色の瞳。村人達とは全く違う見た目。両親とさえ違う。それを理由に子供を幽閉していた。
「あの子が殺されてしまう……」
「私たちがあの子を守れなかった」
「あの子に幸せを贈りたいのに」
村人達から離れた所で、ゆっくりと歩く子供の両親。どうにか助けようと、何度も何度も、森へ足を運んでいた。けれど、全て無駄に終わってしまった。
「山の神よ! 生贄を受け取りたまえ……。そして雨を降らせたまえ!!」
子供は空を見上げる。しかし意識が遠のいっていった。
あぁ、死ぬんだ。ーー先程飲まされた酒に毒が入っていたらしく、子供は倒れていった。
子供の死体はそのまま置いていかれ、村人達は村へと戻っていく。けれど、両親だけはその場に残っていた。
「ごめんなさい……。助けてあげられなくて」
「お前は、私たちの愛する子供だ」
「いつまでも愛しているわ」
「だから、安らかに眠ってくれ」
倒れている子供を二人は優しく抱きしめる。
その瞬間、雷が落ちた。両親は抱きしめていたはずの子供がいない事に気付き、辺りを探した。
目が覚めると、目の前には一人の女性がいた。艶やかで色っぽいその女性は優しげな瞳でこちらを見ていた。
「また人は、生贄などと言うものを捧げたか。生贄など興味無い」
子供は体が起こすことが出来ない。意識だけが戻っている。
本当に死んだんだ。ーー子供はそんな事を考えながら、最後に両親から抱きしめられたことを思い出し笑っていた。
「人が憎いか、子供よ」
「別に」
「そうか。なら、生きるがいい」
「えっ」
「私は人が嫌いだ。けれど、人を憎まない者は好きだ」
そう言うと、額に口づけを落とす。
「母さん、父さん」
子供の声が聞こえてきた。木々の間から歩いてくるのが見えた。
「嘘……。生きてるの?」
「うん」
涙が溢れてくる。死ぬ時すら涙が出なかったというのに。子供は両親に抱きしめられる。ずっとこうしたかったと思いながら。
「ここから離れよう」
「えぇ」
「三人で暮らそう。この村から離れて、三人で、ずっと」
「うん」
生贄の場から離れ、村とは反対の方へと歩いていく。
その瞬間から雨が降り始めた。百四十一日もの間、一日も止むことなく雨は村を中心に降り続いた。
村人達がどうなったかは知らない。もちろん、子供と両親がどうなったかも知らない。
とりあえず幸せにしたかった。
分岐点が色々とあり、この話では両親と幸せになったかなーという感じです。
別の分岐点に行くと、本当に神様に殺されたり、神様に気に入られて、自分を殺した村人達をみんな殺しに行く子供みたいな感じで、いっぱい書きたかった^^;




