8話
俺は、俺たちは、ギルドホームにある闘技場にいる。
騒ぎが大きくなってしまい、観客が大勢いた。
お前ら、働け。
ギルドとは冒険者の管理や権利保護を目的とした団体であり、冒険者の仕事の多くはギルドを通して依頼される。
そしてギルドホームとは、ギルド職員の職場であり、冒険者のサポートを行うための施設だ。仕事の依頼も、ギルドホームにある掲示板に張り出される。
そんなギルドホームには、冒険者の訓練、並びに、街中での私闘を禁じられている冒険者の決闘の場として、闘技場が併設されているのだ。
闘技場。目の前にはヤーナと、その背後には取り巻き二人が並んでいる。
「安心したまえ。二人は闘いを近くで見学するためにここにいるだけだ。手は出さないよ。正々堂々やろうではないか。くくく」
「はいはい。もう良いから、早く始めようぜ」
俺は知っている。ヤーナは対物理障壁の使い捨て魔道具をいつくつも持っており、その使用が間に合わない場合には、後ろの二人が同じ対物理障壁の魔道具を使ってくる。「手は出していない、サポートしないとは言っていない」という理屈か?
アホらしい。
しかし、今の俺には障壁貫通能力をもつネルがある。いくらでも障壁を張るがいいさ。
審判を務めるギルド職員がルールの説明を行う。ルールと言っても、『どちらかが戦闘不能になるか、負けを認めることで勝敗を決める』『殺してはいけない』これだけだ。武器の使用も自由。魔法の使用も自由。
そして、審判の宣言で決闘が開始される。
「始め!」
先手、ヤーナが大上段からから竹割りに剣を振り下ろす。俺はそれを余裕を持って回避する。
ネルがなかったとしても、あの時の俺とは違う。常にソロで死線をくぐってきたのだ。貴族の道楽に負けるはずがない。その上で、今はネルがある。
避けただけで反撃しない俺を見て、ヤーナがニヤリと笑う。こちらが対物理障壁を警戒して反撃しないのだと思ったようだ。
ヤーナがまた間合いを詰めて、袈裟斬り。俺は剣でそれを弾き、ガラ空きになった胴へと横薙ぎの一閃。もらった!と思った瞬間、剣が弾かれた。
なんで!?障壁貫通は!?と慌てた俺に声援が聞こえる。
「トールー!ご主人様ー!頑張れー!」
うん、良い子だネル!味方がいるのは心強い!頑張るぞ!
「おい!なんでお前がそこにいるんだ!?」
ネルが人化している、つまり今俺の手にある剣は、魔剣ネルではなく、ただの固くて斬れない剣だ。
慌てた俺の隙を狙い、ヤーナが突きを放つが辛うじて回避。これは危なかった。
事前に確認しなかった俺が悪いさ。けど、あんなにヤル気だったネルが応援に回ってるとは思わなかったんだよ……。
今から剣になったら目立ってしょうがないから、障壁貫通は諦めるしかない。
どうする?どうするよ俺!?




