3話
目の前に女の子がいた。
デカい……胸!!
「ど……どなた?」
次の瞬間、ビンタされた。
「絶対失礼なこと考えてたでしょ!それに、流れ的にネルしかいないわよね!?」
それは人の姿になったネルだった。人と契約すれば人の姿になれるらしい。
年の頃は十代前半から中くらいだろうか。十八歳の俺よりは確実に歳下に見える。控え目に言っても美少女だ。
そして巨乳だ。年の頃にも小柄な身体にも似つかわしくない巨乳だ。
「人の姿になれるなら、先に言ってくれよ。そして、結婚して下さい」
胸なんて飾りだ!ただの脂肪だ!と言う人がいるが、何を言ってるのか分からない。そんな奴らはこの素晴らしさを目にしたことがないに違いない。巨乳万歳!
パーン!!
そしてまたビンタされた。さっきよりも強め。脳が揺れるぜ。
–––俺は気を失った。
気がつくと、目に入ったのは知らない天井だった。いや、ダンジョンの天井だ。さっき見た。
なんだか頭のしたが柔らかい。ああ、ただの天国か。
また目を閉じようとしたが、頭上から声がかかった。
「起きた?あ、アンタが悪いんだからね!また失礼なこと考えるし、剣と、けっ……結婚とか言うから!剣なのに!」
「ああ、さっきのは俺が悪かった。稀に見る美少女だったから、この機を逃してなるものかと、つい。俺はトール。よろしくな、ネル」
言ってやった。『キリッ』と効果音が付きそうな顔で言い切った。
「……トール、その体勢のままだと、全然かっこよく無いわよ?」
そう、俺はネルに膝枕をされている状態だ。なぜ起きないか。もったいないからだ。実に明快。
その後すぐに、俺は膝枕から落とされて固い地面に後頭部を強打する。
「痛い……。地味に痛い」
俺は後頭部をさすりながら愚痴をこぼした。ネルは特に何のリアクションもくれない。
「そう言えば、ネルが剣で剣がネルなんだよな?」
「うん?そうよ」
「だったらなんで目の前にネルがいるのに、俺の手元に剣があるんだ?」
そう、ネルが剣であるはずなのに、俺の手元には剣があるのだ。
どうやら、ネルが人化している時には、剣は『固くて斬れない剣』であり、ネルが同化することで、障壁貫通の性能のが付き、威力も向上した完全版となるらしい。
剣と融合した状態で人化、つまり人モードのネルの中に剣を入れることも可能らしい。
危ない。聞いておいて良かった。
「それで、トール、これからどうするの?」
「うん、とりあえずこのダンジョンから出ないとな」
「そうね。でもトール、ずいぶん軽装だけど、荷物とかは?地図も持ってないみたいだけど、帰り道は大丈夫よね?」
「……」
「……大丈夫よ……ね?」
「どうしよう……」
僕、おうち、帰れない。




