25話
目がさめると茜色の空が目に入った。
俺は記憶を整理する。
カマキリを蹂躙した後、ゴリの作った壁の上に上がり、倒れた。
単純明快。
なんだか頭のしたが柔らか……くない。固い。
なんだ、ただの地獄か。
俺は一気に覚醒して飛び起きた。
大の字に倒れているゴリがいた。どうやら大の字に寝ているゴリの太ももを枕にして寝ていたらしい。
「ハーッハッハッ!起きたか!」
ゴリはそう笑うが、動こうとしない。
「気絶しているトールを見つけてな、地面に着いた頭が痛そうだったから、這って来て俺の膝を枕にしておいたぞ!しかし、俺はもう動けん!」
なんというゴリの優しさ。とても大きなお世話だが、自分の身体が動かなくても他人を心配する、豪快なヤツだ。
ネルさん、ネルさんや。いるよね?なんでネルじゃなくてゴリの膝枕なんだよ!
(突然出ていくわけにもいかないでしょ!)
まあ、そうだよね。
「して、トールよ。状況はどうなった?」
ああ、それを説明しなきゃね。
俺は少し考えてから、架空の魔法使いに全てを押し付けた。
「すごい魔法使いが突然現れてな、炎の魔法でカマキリを燃やし尽くして去っていった」
「そうか、トールが燃やし尽くしてくれたのか。ありがとう」
「いや、なに言ってんの?通りすがりの魔法使い様だっての」
「そうか……。そうだな」
しばし、お互いに沈黙。
なんか感づかれたかも知れないが、証拠なんてないんだし、俺はシラを切り通すしかない。
「トール、ひとつお願いがあるんだが」
「なんだよ?」
「俺は動けん。おそらくしばらく動けないだろう。村に連れて帰ってもらえるか?」
あー、だよね。
俺はその場で跳ね起きてみて屈伸してみた。よし、問題なく動く。
俺たちは村へ帰るのだった。
村に着き、ゴリに語ったのと同じ説明をすると、歓声がわき起こった。とりあえず危機が去ったわけだ。
そのまま宴会に突入しようとしているなか、俺はゴリを担いで病院へと向かった。
ゴリは全治二週間。特に首に受けたダメージがひどく、ゴリほどの肉体を持っていなければ即死だったそうだ。
……危なかった。
ゴリは緊急オペ室に運ばれ、点滴まみれの姿になるのだった。
俺はお祭り騒ぎの村人たちを尻目に、宿へと向かった。
受付の子に「夜はこれからですか?(夕食はこれから食べられますか?)」と聞くと、まるで犯罪者を見るような目で見られた。
なぜだ。
一度部屋に戻り、ネルに人化してもらってから食堂兼酒場に降り、夕食をとった。
ネルが終始無言。たまに何かを言いたそうにこちらを見るが、目が合うとすぐにそらす。
やっぱり、あの姿はきもちわるかったのかな?愛想を尽かされたのかな?と不安になる。
ほとんど会話もないまま夕食を終え、早々と部屋に戻った。
今日は疲れた。さっさと寝ようと、寝支度を整えていると、ネルから声がかかった。
「ねえ、トール。お話があります」
来たか。来てしまったか。
女の子と付き合ったことはないが、これが噂に聞く別れ話か。
「よし、聴こう。覚悟は決まった」
「私は、トールに必要?」
「はい?」
「トールはさ、物理障壁突破の性能があったから私を連れ出してくれたんだよね?」
「まあ、そうだね」
「でもさ、トールは体内召喚で魔法も使えたじゃない。それでも、私はトールにとって必要?」
……俺は馬鹿だ。自分が嫌われることばかり気にして、ネルの不安なんて考えてもいなかった。
それだけ俺にとってネルが剣としても女の子としても魅力的だったということなのだが、そんなことは理由にならない。
「ネル、俺ね、ネルを見つけて嬉しかったんだ。これでやっと、素の俺のまま、ズルをすることなく、強い人に挑めるんだって。だから、ネルが嫌じゃなかったら、素の、弱い俺と一緒にいて欲しい」
「トール!私もトールの剣でいたい!」
「ネルは美少女だからな、なんなら剣としてではなく、嫁として一緒に……」
頬に衝撃が走った。今までで一番良いビンタだ。ネルも成長するんだな……。
薄れゆく意識のなか、「嫁だなんて……剣を嫁だなんて……」というネルの恥ずかしがっている声が聞こえた。
今日もよく眠れそうだ。
4章終了です。
ラストの話は少し駆け足になり申し訳ありません。
いったん完結にします。
要望があれば続けますが、ブクマも評価も付かない拙作ですので、ないと思います。
お読みいただいた皆さん、ありがとうございました。




