23話
俺は大きく跳躍して土壁の上に乗った。これが俺のズルのひとつ。魔力を外には出せないが、体内でなら使える。それを利用しての肉体強化だ。
まだそれほど出力を上げてはいないが、もっと上げるなら、筋力の他に、骨、皮、内臓、脳、神経系まで強化する必要があるが、それもできる。
「トール、すごい!」
「すごくねーよ、こんなの。ただのズルだ。他の人にはできないことを、能力に任せてやってるだけ。くだらない」
本当にくだらない。他の達人たちは、こんなのを使わずに剣や他の武器で技を磨いている。その技はとても素晴らしく、俺のズルとは格が違う。
下を見るとゴリが奮闘していた。
異変に気付いたカマキリたちが、一斉にゴリに向かって殺到していた。
「あー、これ、ゴリ死ぬな。どうしようか。死ぬまで放っておくか、助けるか……」
ネルに問うわけでもなく、呟いた。まあ、答えは決まってるんだけど。
俺はゴリの上へと、壁を飛び降りた。
「来い、ウィルオーウィプス!チカラを貸せ!チカラだけ貸せ!」
俺は叫んだ。
貸せ、チカラだけ。
体外に魔力を出せなくとも、体内でなら魔力が使える。よって、『体内で召喚魔法を使うこと』は可能だ。
半端に召喚し、己と融合させることで召喚対象と一体化する。
あまりに強い魔物を召喚すると、そいつの意識に俺の意識が乗っ取られる危険がある。実際にそれで国をひとつ滅ぼしたことがあるのだ。忌まわしきチカラ。
だから俺は言うのだ。弱い魔物であっても、強い意志を込めて。
チカラだけ貸せと。
顔、手。装備で隠れていない場所にも、緋い紋様が描かれていく。これが体内召喚の代償のひとつだ。召喚した魔物の特性に従って、色も柄も、違った紋様が描かれる。召喚を解除すれば消えるが、俺には禍々しい呪いにしか思えない。
ウィルオーウィプスを体内召喚した俺の身体能力は、飛躍的に上がる。弱い魔物であっても、俺の中の有り余る魔力を使えば、かなりの能力を発揮するのだ。
ゴリの上に飛び降りた俺は、そのままゴリの頭を蹴り落とす。
見られたくないから気絶してもらうに限る。
何が起こったのか分からないまま気絶するゴリ。そのままでは危ないから、蹴り上げて壁の上に乗せた。
……ふう、良いことした。




