21話
冒険者が村長の家に集められた。
ここのようにギルドホームが無いような村や町では、村長や町長、つまり長の家が集会所の代わりとなる。そのために長の家には、必ず一室以上、広い部屋が用意されているのだ。
冒険者がおおよそ30人ほどが集められた中、初老の男性が声を上げた。
「私がこの村の村長だ!冒険者の皆に集まってもらい感謝する!」
歳の割に澄んでよく通る声が響く。
それとともに、ざわめいていた室内が静かになり、村長の次の言葉を待つ。
「すでに知ってるいる者もいるだろうが聞いてほしい。ここから西に、徒歩で言えば半日ほど行った場所に谷がある。そこにカマキリ型魔獣が群れをなし、巣くっている」
冒険者たちからどよめきがわく。
ここから西の谷とは、存在は知っていても冒険者がほとんど行かない場所。なぜならそこは岩肌だらけの谷であり、生息する魔獣がほとんどいないからだ。討伐する対象もおらず、採取する植物もなく、距離も離れていて往復だけでも時間がかかる。つまりうまみがないのだ。
『間引き』の依頼があっても冒険者が行かなかった、そんな場所。言わば隙と呼べる場所に巣を作られたのだ。群れの規模がどこまで育っているかも不明。
しかも、カマキリ型限定。つまり、種を統率する上位種が発生した可能性が高い。ほとんどの冒険者がそう理解した。
どよめきが鎮まるのを待ち、村長の話は続く。
「既に斥候は出した。諸君には明日の朝を待ち、カマキリどもを殲滅しに行ってほしい!」
静まる室内。ひとりの冒険者が不平を叫ぶ。
「村長!実情はわかった。だが俺たちのほとんどは『間引き』の依頼で来ている。既に形成された群れ、それも単一種の群れとなると話が違う!」
集まった冒険者たちの大半が頷き、村長に目を向けて返答を待つ。
上位種が統率した単一種の群れは、その危険度を一段階上げる。群れの規模によっては二段、三段上がるのだ。
冒険者も正義感や義理でこの村に来ているわけではない。基本的には生活の糧を得るためだ。自分の身の丈に合った、下手を打たなければ達成できるはずの依頼を受けてここにいるのだ。多大な死の危険が伴う追加依頼を、さも当然のように言い渡され、受ける方がおかしい。
「分かっている!追加の報酬も出す!しかしこのままでは谷に一番近いこの村が奴らの標的になるのは明確。どうか頼む!既に王都とイリスの街には早馬を走らせて救援を頼んでいる。せめて援軍が来るまでの間、村の守りだけでも、頼む!」
村長はそう言うと頭を下げた。
しかし大半の冒険者はこう思うだろう。「頭を下げるだけならタダだ。その頭にどれだけの価値がある」と。
俺は思う。「光ってんなー、頭。苦労してそうね」と。
「ハーッハッハッ!勇なき者は村を守るべく待機しろ!どうせ群れは来ない。恐れるな!我らが殲滅するからな!」
場違いな笑い声が轟く。
ゴリってばイケメン!頑張ってね!
俺は心の中で絶賛した。
「勇ある者は明朝、我らと共に来い!絶望からの勝利の味を教えてやろう!な、トールよ!」
……はい?なんで俺が行くことになってんの?バカなの?バカなんだよね!?
俺の心の叫びが音になることはなく、英雄を讃える冒険者たちの歓声と、ゴリの笑い声にかき消されるのであった。
「ハーッハッハッ!」
なぜだ。
ストック切れ




