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愛剣ネルと俺のこと。  作者: TKM
4章 間引き?他力?点滴
20/25

20話

いない。カマキリがいない。俺は麦わら帽子で川原を駆け回る夏休みの少年か。今時そんな少年なんて見たことないけど。

確かに、少なくなっているとは聞いており、簡単に見つかるとは思っていなかったが。ガオさんの店での昼食後から、もう日が落ちかけている今に至るまで一匹も遭遇しないだなんて……。

場所が違うのかも知れないな。今日のところは一度村に帰って情報収集するしかないな。


「ネルー、とりあえず帰るよー」

少し離れたところでカマキリを見つけるべく、周囲を眺めているネルに声をかけた。

夕陽に照らされたネルは、やはり美しかった。赤い髪が夕陽を浴びてさらに燃える。


少しの間見惚れていたが、やっと諦めてくれたネルが、小走りにこちらに向かってくる。

ぽわん、ぶるんっ、ぶるるんっ、ぶるんっ、ぽわん……。

一歩ごとに効果音を変えながら俺を愉しませる一対の物体。

素晴らしい。とても素晴らしいよネル。


あれ?止まらない。近い!近い!ぶつかるよ!と思った瞬間、走ってきた勢いそのままにビンタが炸裂した。

草原をひねりを加えながら転げ回る俺の耳に、ネルの言葉が届いた。


「またエッチなこと考えてたでしょ!」


草原は転げ回るものではなく、駆け回るものだよ、ネルさん。そして、ちょっと凝視するくらい良いじゃないの……。

気絶はしなかったものの、立ち直るのにしばしの時間を要するのだった。


宿屋に戻り、とりあえず夕食をとった。ガオさんの店には劣るが、ここの宿のご飯もとても美味しい。

食事の後は作戦会議だ。


「しっかし、本当に全くいなかったな」

「全滅しちゃったのかな?」

「いや、一時的に数を減らすことはあっても、基本的に魔物は全滅しないんだよね」

「それなら隠れてるとか」

「誰から?なんのために?今は魔物が増えて困っているほどで、特に虫系の魔物は知能が低くて、隠れるなんて手は使ってこない。基本的には。……ん?まずいかも」


虫系の魔物は同種だからといって群れない。逆に、どんな虫系とも群れると言って良い。

たが、何事も例外があるものだ。その種に、イレギュラーな上位種が現れた場合。なおかつ、その上位種に群れるという智恵と意志があった場合。上位種が群れを率いて集団を形成する場合がある。

その集団は戦術を用い、連携も見せる。

今この辺りは魔物が多く繁殖してきている。その中で上位種が産まれる可能性は否定できない。さらに、多く繁殖している時期であるならば、産卵の頻度も高く……。


ダーン!

俺の思考を中断させるように、宿屋の扉が勢いよく開き、そこから冒険者風の男が入ってきた。


「この宿にいる冒険者に告ぐ!緊急事態だ!村長の家に集合してくれ!」

男はそう叫ぶと、次の宿へ向かったのだろう、走り去った。


これはこれは。嫌な予感が当たったか?

ふと、同じく食堂にいたゴリと目が合う。

ーーー楽しくなってきたな?

ゴリの目はそう言っていた。


楽しくないっす。面倒っす。


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