13話
それから数日は街の近くで薬の材料になるものの採取やら、街の見回りやらの仕事をしてすごした。
採取中に弱い魔物と出くわして倒したが、ネルの魔剣ネルとしての性能は全く発揮されることはなかった。
武器としては退屈かな?と少し考えたが、「武器は闘うべき時にチカラを発揮できればいいのよ。それよりも、串焼きの次は甘いものが食べたいんだけど、いい?」と、買食いの方に興味があるらしい。
ならばよし。
そんな日々を過ごしていたわけだが、今は割と整備されている街道でもガタンガタンと揺れる乗合い馬車に、俺と人化したネルは揺られていた。
乗合い馬車のオーナーの名誉のために言っておくならば、この馬車が特別ボロいわけではない。こんなもんだ。
なぜ馬車の旅と洒落込んでるかと言えば、ギルドの依頼をこなすためだ。
「この街イリスから乗合い馬車で三日ほど行った場所に、タロスという村があるのはご存知ですね?最近になって、その村の周辺の魔物が増えているそうです。適当に間引いてきてください」
メガネをかけた女性のギルド職員から言い渡された、この無性にふわっとしたものが今回の依頼だ。
王都シュタルケに住まわれる王族を筆頭とする、それがこの国、リア・シュタルケ王国である。世界に五つある大陸の一つであるリアリタにおいて最大の面積誇り、事実上、リアリタ大陸を支配している。
王都シュタルケを中心に幾つもの街道が通っており、そのうちの一つが、幾つかの町や村を経由してタロスに繋がり、さらに幾つかの町や村を経由して俺の今のホームタウンであるイリスにつながっている。
街道沿いの町や村で魔物が氾濫すると、商人の行き来に支障が出る。そのため、魔物が増えすぎると、こうした『間引き』という依頼が出るのだ。
『殲滅』でないのは、それが不可能だからだ。魔物は魔素溜まりと呼ばれる魔力の濃い場所からの自然発生か、種類によっては交配から、次から次に生まれ、全滅させたと思ってもどこかで生まれている。
なので、『間引き』という言葉が使われる。つまり、この依頼を可愛く翻訳するならば、「なるべくいっぱい倒してね!でも、無理はしちゃダメだぞ?」になる。
「わかりましたか、ネルさん?」
「んー、なんとなく?」
ダメでした。この子、完全に飽きています。
しかしそれも仕方のないことだ。馬車での旅も三日目となり、始めは三百年ぶりの外の景色にはしゃいでいたネルだが、こうも変わり映えのしない景色に飽きるなという方が無理というもの。
俺も飽きた。
こういった弛緩した空気の中で、トラブルとは発生するものだ。
俺の口から溜息が漏れる。あと半日なんだからさ、大人しくしててくれよな……。
「ネル、客だ。一応、気を付けてな」
俺は馬車の進行方向を見ながら告げた。
ネルに剣化してもらう必要すらない。
「うん、トール、頑張って!」
そして御者にも告げる。
「前方から賊と思われる複数の蹄の音がする!視認できたところで馬車を止めてくれ!」
一応、護衛も兼ねるという条件で格安乗車しているのだ。仕事しないとな。
めんどくせーな。




