12話
3章開始です。
楽しんで頂ければ嬉しいです。
よろしくお願いします。
決闘騒ぎの当日は、前日の疲れもあってダラダラすごした。
そして翌日、ネルと朝食を食べている時だ。
「ネル、蓄えはあるから焦って仕事をする必要はないんだけど、なにかしたいことはあるか?三百年ぶりの外の世界なんだし」
そう問うと、ネルは少し考えてから口を開いた。
「トール、買い物に行きたい。洋服とか、下着とか……」
「!!!」
俺は衝撃を覚えた。何をやっていたんだ、俺は!こんなに可愛い子を着の身着のまま連れ回し、こんなに恥ずかしそうな顔で下着をねだらせるなんて!男として、むしろ人間として、こんなにダメなヤツはいない!
「というか、ネル、着替え必要なの?自浄効果あるよね?」
「もちろん、気分の問題よ。せっかく外に出られたんだし、オシャレもしたいなーって」
ですよね。でも、重要だよね。こんな可愛い子に同じ格好をさせているなんて、世界の損失だし。
そして現在、ネルのファッションショーを見学している。
出会ったときから着ているのは暗めのトーンの赤いワンピースだ。同色の髪の色も、それよりも明るい瞳の色とも合っていて、とても似合っていた。
しかしどうだ。白い服を着れば髪の色や瞳の色がさらに映え、黒い服を着れば手足の白さが引き立ち妖艶だ。
そして、着替える度に「どう?変じゃない?」と不安げに小首を傾げるその仕草たるや、筆舌に尽くしがたい!
ひとしきり着替えを楽しんだあと、ネルは「どれにしようかなー」と選んでいたが、俺は言った。
「今着たのを全部くれ!」
女の服は高い。今後一年間、俺はネルの姿をオカズにしてパンを食べる所存だ。変な意味でのオカズではない。決してない。
いや、子供の夢を壊すのは悪いから訂正しておくと、冒険者はそこまで薄給ではないよ。人によるけど。
次に下着屋に行き、上目使いで「一緒に選ぶ?」と問われたが、そんな罠にかかる俺ではない。「うん!」なんて意気揚々と店に入ったのなら、ネルからは「本当に入るんだ?」と冷たい声で罵られ、店員からは「なにこの美少女のストーカー。衛兵さん呼ぼうか?」とかヒソヒソ話をされるに違いない。
俺はネルに服の値段と同等以上のお金を渡し、一人で買ってくるように頼んだ。
結局、非番だった門番さんが通りがかって「トールさん……下着屋の覗きはダメですよね、人として。トールさんがクズで童貞なのは知ってますけど。臭っ!なんか臭う!童貞の臭いだ!」と誤解を受けてしまった。
出てきたネルに誤解を解いてもらった上に、「待たせてごめんね。三組買わせてもらった。ありがとうね」と微笑まれて、俺は嫌な気分をすっかり忘れたのだった。
それから、昼食を屋台の食べ歩きで済ませたり、日用品を買ったり、茶屋で休憩したりして過ごした。
宿での夕食の時間。
「今日は楽しかった。トールもなかなかやるじゃない!私、男の人と二人で出かけるのって初めてだったんだけど、凄く楽しかったの!」
「ん?勇者ファタールさんとは出掛けなかった?」
「そりゃ、二人で出かけたことはあるわよ?でも、アイツ、女の子だし」
……なんとまあ、あっさりと判明した新事実。
証明できたら歴史が変わるな。
「えっと、その前は?」
「ナイショ!秘密が多い方が良い女だってファタールが言ってた」
ネルはそう言って悪戯っぽく笑った。
女の子の過去を暴くのも野暮だしな。やめておくか。
俺は出会って三日目の女の子にすっかり操られているようだ。
まあ、いいか。




