11話
ネルの意味深な発言の後、俺たちはギルドへと向かっていた。
ネルと会うきっかけとなった依頼の報告を、すっかり忘れていたからだ。だってしょうがないじゃない。帰ってきたときはヘトヘトだったし、今日は朝から決闘騒ぎだったし。
屋台で軽く買い食いしながらギルドまで道をのんびり歩いた。
そう言えば、女の子と二人で買い食いとか、デートじゃね?ででででデート!
普段女の子と話すのなんて、ギルドの受付のおねえさんだけで免疫はないけど、なんだろう、剣だからなのか、あんまり緊張もせずに自然体でいられる。会ったばかりなのに。
「トール、この串焼き、何の肉か分からないけど美味しい!」
「ほら、ネル、口に串焼きのタレが付いてるぞ!」
嬉しそうなネルの口をハンカチで拭いてやる。ネルはあごを上げて拭きやすいようにしてくれるが、その振動でワンピースの胸元が揺れる。ぽわんって。絶景かな、絶景かな。
すると突如、俺の背中に悪寒が走る。とっさに周りを見渡せば、屋台のおっちゃんを含めて男たちの視線が痛い。嫉妬、殺意、羨望。それらを混ぜた視線だ。なるほど、これはこれは。数日前まで俺がカップルに向けていた視線がこれか。ふふ、持つ者と持たざる者の違い。これが格差社会!
なんて、しょうもない事を考えているうちにギルド前に到着。
なぜか、ギルド内が騒がしい。
中に入ると、ギルド職員の男性がカウンター内から俺を見つけて手招きしてきたので、呼ばれるがままそのカウンターに行った。
「トールさん、探してたんですよ。ちょうど良かった」
「何かあったんですか?」
「あなたは当事者です。今朝、決闘されましたよね?従者の二人から妨害を受けませんでしたか?」
「ええ、まあ、妨害というか、障壁を張る魔道具は使われましたね」
「それです」
とりあえず俺が糾弾されるわけではないようだし、なんの話か分からず、先を促す。
ギルド職員公認の決闘での妨害。これがまずかったらしい。ヤーナはこの街でも既に数件、別の街でも何度も決闘騒ぎを起こしているらしく、その度に今回のような妨害工作を行っていたらしい。今回の決闘で、俺はヤーナ本人にも、取り巻き二人にも魔道具が尽きるまで使わせた。それにより、今まで怪しくとも掴めなかった証拠が手に入ったということだ。
そして、余罪調査のために、現在ギルド内がバタバタしているらしい。
「なるほど。それで、俺を探してたというのは?」
「はい、それなんですが、まず、ヤーナより賠償金が支払われます。次に、今回の決闘において、トールさんがヤツをボコボ……失礼しました。彼を戦闘不能にしてくれたことで、証拠の確保も彼の捕縛もスムーズに行きましたので、ギルドから報奨金が出ます」
おお、思わぬ副収入。ありがたく受け取らせて頂こう。
しかし、職員さんの口ぶりから、ギルドに対しても横柄な態度だったのだろうな。
それから俺は本来の目的である依頼の終了報告を行い、ギルドを後にした。依頼の方は、実はちゃんとこなしており、規定量の素材を渡すことができた。もっと沢山と欲張った結果……まあ、とてもいい剣を手に入れることができたからよし。
後日談ではあるが、ヤーナは貴族であったため、処刑や禁固刑はまのがれたものの、ギルドの冒険者である資格を失い、実家からも勘当されて、消息不明となったらしい。取り巻き二人も当然糾弾されたが、手のひらを返したように「脅されていた」「立場的に命令に逆らえなかった」と騒ぎ、減刑されたとのこと。
「全て私の計算通り!感謝しなさい!」
とは、ネルさんの談である。




