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8匹目:ベビードラゴン

 風に流されて、谷から流れて――――俺達は大空を舞った。

 上昇気流に乗ったブルームは耳の回転を停めて大きく広げると上手に風に乗っちゃうわけだけど、それで愛しい地上をお別れして周りは一面を覆う雲の海とかいう状態とか。


 ――――全裸には厳しい寒さですね。


 そう、上空って冷えるからね……風邪を引いてしまう、と思ったらブルームが薄く広がって俺とレイをやさしく包み込み風から庇ってくれるわけですよ。

 なんていい子なんだろうか!


 ――――流石はマスターの最初のパートナーです。


 そういや、そうだったな……レイのおかげで忘れがちだけど。


 ――――私のせいにしないで下さい。


「というか、腹が減ったな……」


 こっちの世界に来てから空腹感というものはやたら薄くなってしまっているがたまにこうして空腹を感じることがある。


 ――――マスターそれは魔力切れです、魔物に技能を使わせ続けるとマスターの魔力が減ります。


 つまりこのままずっと飛び続けることはできないと?


 ――――そうなりますね。


 なんてこった……見渡す限り雲ばかり下がどうなっているかわからないしこんなところで落ちても洒落にならないぞ。


 ――――そうですね……幸い近くに島があるようです、そこに着地しましょう。


 島? ……ということは下は海なのか?


 ――――否定。空に浮く島が近場にあるというだけですよ。


 空に島があるのか、つくづく異世界でファンタジーだな、正直魔物とかだけでも手一杯だっていうのにそんな設定のというか情報は欲しくないかな。


 ――――他にもマスターが知らないだけで色々な情報や事情がありますよ? 聞かれなきゃ答えられませんが、時が来れば自ずと答えますよ。


 そうしてくれ、今は聞きたくない。


「それじゃ、ブルーム。あっちの方へ飛んでくれ着地できるとこがあるらしいから」


 そう言うとブルームは返事の代わりにぷるんと震えて方向転換し始めた。

 数分後、割と近かったためか目的地に着いた。

 到着してすぐにブルームを収納して近くにあった木によじ登る、一先ずは安全確保だ。

 腹は減っているが睡眠を取っても満たされるというし今は我慢しよう。


 ――――検索終了しました、この島に生息する魔物の種類が特定できました――――表示なさいますか?


 頼む。


 ――――生息しているのは以下のもので、ベビードラゴン、エルフ、ピクシー、イーグル、ハハネコ、トビハニワです。


 色々突っ込みたいがとりあえずベビードラゴンってなんだよ、火山の火口付近に生息しているんじゃなかったのか?


 ――――ああ、ブルーム以外の初期パートナー候補の話ですねそれは……ベビードラゴンと言っても属性によって住処や食料、進化する魔物など色々と差が出てくるんです。そして初期パートナーに選ばれた個体がたまたま火属性だったというだけのことです。


 そういうことだったのか、じゃあここでベビードラゴンが仲間になる可能性もあるって事か?


 ――――そうなりますね、ここには数体のベビードラゴンが存在するようですので運がよければ希少なメスのベビードラゴンなんかが現れるかもしれませんよ?


 その前にウチの戦力でベビードラゴンと渡り合えるのか?


 ――――レベルにもよりますね、現状数は分かっても個体ごとのレベルは不明ですので。


 まー、それはいいとして他のやつらの情報もくれ。


 ――――了解。


 《図鑑番号・三三三》

『ベビードラゴン、幼竜魔物、属性:雲・風・竜。』


 《図鑑番号・二八十》

『エルフ、森人魔物、属性:木・精・人。』


 《図鑑番号・三五》

『ピクシー、妖精魔物、属性:妖・精。』


 《図鑑番号・六二七》

『イーグル、鷲魔物、属性:風。』


 《図鑑番号・一八七》

『ハハネコ、葉猫魔物、属性:草・風。』


 《図鑑番号・三四三》

『トビハニワ、飛行土器魔物、属性:土・精。』


 図鑑番号飛び飛び過ぎないか? なんていうかちょっと序盤で出ていい連中じゃない気がするけど。

 イーグルは見たけど他のがちょっと見当つかないな……ベビードラゴンは火口のとは恐らく属性が違うから別物だとして、エルフが魔物っていうのも違和感だけどそれ以上にハハネコとトビハニワが分からないな。葉っぱの猫とハニワ? ここ実はヤバイ場所なんじゃ……。


 ――――否定はしませんが、とりえあず接触してみてからでもいいのではないでしょうか?


 そうだな、少し散策してみるか。


「そうとなれば『ノマソレド・シロ』」


 股間からビームが下方向に放たれ地面に魔法陣を刻み、その中からシロが現れる。俺は急いで木から降りシロに跨った。


「ボス?」


「いや、前から乗ってみたかったんだ……重いか?」


「大丈夫」


 俺を乗せていることも関係ないように駆け出すシロに俺は慌てて振り落とされまいとしがみついた。

 島は中央に山がそびえ立っていて、その周囲を森がぐるりと生い茂っている。


 ――――マスター、この先に魔物同士で争っているようです。


「シロ、あっちの方に行ってくれ」


「了解」



 森を進むと少し開けた場所で複数の魔物が一体の魔物と戦っていた。

 あれは……?


 ――――ベビードラゴンとエルフの群れですね。


 あれがベビードラゴンとエルフか……思ってたのと違うな。


 ベビードラゴン、ドラゴンというだけあって鱗に覆われているのかと思ったが全身は白い羽毛で翡翠色の瞳を鋭くしエルフ達を睨みつけながら翼を羽ばたかせなぎ払うように振り回している。

 対するエルフだが髪の毛は若葉のような碧さで腕は白樺の枝のように白く細い、その手からよくわからないエネルギーのようなものを飛ばしながらベビードラゴンに応戦している。


 ――――マスター、あのベビードラゴンは仲間に出来そうですよ? ただ現状戦闘状態なので一度落ち着かせないといけないので周りのエルフを追い払う必要がありそうですね。


 シロだけじゃ厳しいか? ならブルームも出しとくか?


 ――――マスター、朗報です。あのエルフ群れの中に一体だけ仲間にできる者がいるようです。




 何っ!? でもベビードラゴンを仲間にするにはエルフ達を追い払わなきゃならないんだろう?

 くそっ、どっちかしか選べないのか……俺は……どちらを選ぶべきか。

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