5匹目:シープ/羊魔物/属性:雲
2016/01/06増量。
私メリーさん今あなたの後ろに居るの……。
ってあるじゃん?
なんかそういう気分なんだ――――まあメリーさん=羊じゃなく羊がメリーさんの物なんだが、まあ羊でメスだったら間違いなくメリーって付けるね、俺は。
――――野生の羊が草むらから飛び出してきた!
振り返るとなんかデッカイもっふもふの羊が居たのでレイを向けるとすぐさまページを開き情報を書き出した。
スラスラと書かれる情報、だが奴が今にも襲ってくるかもしれないと思うと気が気ではないが、ここはぐっと堪える……動いたほうが負けるかもしれないしな。
《図鑑番号・一七九》
『シープ、羊魔物、属性:雲。』
表示された情報はやはり仲間にしていないからか、少なく空白が多い。
それにしても随分と図鑑番号が飛んでるな、……ああそういえばこの辺に居るはずがないよなこの魔物。
イーグルに運ばれてきたとは言えどもまだそんなに遠くへと行っていた訳はない。
――――どうやら、はぐれのようですね、彼女の種族は群れで大移動をするのですがのんびりとしたものが多くたまにおいてけぼりにされるモノも多いようです。
のんびりするものが多いのにおいてけぼりにされるっていうことは余程のんびりしてるってことだな。
実際草むらから出てきたはいいが目の前に俺がいるにも関わらず襲って来る様子もなく、逃げ出す様子もない。
(なるほどな、で彼女ってことはメリー(仮)は♀なんだな?)
――――肯定。
希少種であるかは分からないがこの感じは多分大丈夫だろう、それにのんびりした群れの中で更にのんびりしている奴が希少種じゃないわけがない。
よし、早速仲間にしてやるぜ!
と意気込んだ俺はメリー(仮)をじーっと見つめた。
(……反応がない。)
――――マスター、どうやら彼女は寝ているようです。
確かによく見ると、体がわずかに上下しており、寝息も聞こえるところなどを見ると寝入っているようではあるが……。
(じゃあさっき飛び出してきたのは?)
――――寝相のようですね。
なんという寝相の悪さ、飛び上がってしまうとは……そしてその反動で目覚めないとか図太いなこいつ。
ふわもこした毛が衝撃を吸収したというのならば納得は行くが、それでも寝てて飛び上がるってどんな夢を見ているのやら。
(というかこいつが寝ている隙にシロでも呼び出せばいいんじゃね?)
――――それは、シロいきなりかぶりつきそうですね。
とりあえず揺すってみるか、顔がどこにあるか分からないけどとりあえず綿毛に向かってそーっと腕を突っこみ……おー、結構毛が多いな、肘ぐらいまで埋まってようやく体に触れられるみたいだ。
ラム肉の感触を確かめる……ほどよく柔らかくでもしっかりとした筋肉もある。
(……正直シロ触ってるのとあんまり変わらないな、毛が多いだけで。)
――――その割にはかなり揉み揉みしてますね?
(いや、だってこれでも起きないみたいだし……。)
「メ、めぇえ」
あ、起きた。
もぞもぞ……のっしのっしとメリー(仮)は動き出して俺の方に振り返り顔を見せてくれた、さっきまで俺が触ってたのってお尻だったのか。
流石に不快だったのか顔をしかめているが寝ぼけ眼を開くと目の前に知らない人……いやこの場合は生き物というべきかの顔がありこっちをじっと見ている状況、これで驚かないやつはいないだろうが。
こいつはそういった様子を見せることなく、目を見開き俺のことをじっと見つめてくるだけだった。
じぃー……見つめ合う俺とメリー(仮)。
――――シープ(金毛種・♀)を仲間にしますか?
来た、俺のことを認識していないんじゃないかと思うほどだったがちゃんと見ていてくれたようだ。
(もちろんだ、よろしくな! メリー!)
――――シープ(金毛種・♀)が仲間になった! ……シープに名前を付けますか? メリーですよね、承りました。
レイさんは分かっておられる、面倒な手続き? も省略されさらっと名前付けも終わり正式にな仲間になったメリーに駆け寄り、頭を撫でてやる。
――――メリーは喜んでいる!
さて、それじゃあ恒例の人化行きますか……と思ったらもう寝てやがる。
全くこいつどういう神経してるんだ? 確かに要件はもう済んだが、それですぐに寝るやつがあるか。
別に寝てても人化はできるだろうけど、こいつの性格がよくわからないな……レイ、いつもの情報を出してくれ。
――――こんな感じです。
レイの中のシープの情報が更新されていく。
サラサラと書き綴る音は最近心地よく思うようになった音だ……そして姿絵を書き直すレイ。
さっきのが正面じゃなくお尻だったからだろう。
《個体情報》
『名前:メリー、性別:♀、レベル:十二、特性:静電気、性格:図太い、技能:綿守、体当たり、のしかかり、眠る』
(やっぱり図太いのか、それになんかシロ達よりレベルが高いな――――そう言えばレイ、お前の情報って見れないのか?)
――――ありますよ?
そう言ってレイはパラパラとページをめくる――――のではなく一旦閉じて、表紙だけ一枚めくるとそこに、挿絵は無しで情報だけが書かれていた。
《図鑑番号・零》
『マジックブック、魔本、属性:全。』
《個体情報》
『名前:レイ、性別:♀、レベル:百、特性:浮遊、性格:冷静、技能:人化魔法、合体魔法、回復魔法、召喚魔法』
図鑑番号は……たしかこの数字俺の情報の時もそうだった気がするが零はもしかして図鑑に登録されない例外って事か?
種族名などは分かるが、属性の全ってなんだよ……略称? 略さなきゃならないほどこの世界には属性があるってことなのか。
(それにしてもレベル差がありすぎるだろ、なんだよ百って……それに俺が使える魔法って全部レイの技能だったのか。)
――――マジックブックですから。
魔法の本か、俺が所持しているから俺の技能に入っているんだとして、これはもしかして別の魔本を持てば他の魔法が使えるってことじゃ。
でも、俺の本はレイ一冊だけだそんな想定必要はない。
(そりゃそうだな、俺自身が魔法を覚えるわけないもんな。)
――――不可能はないですが他の人間との接触が現状絶望的なのでほぼゼロに近い可能性ですね。
となるとマジックブックっていうのは魔法の教科書みたいなものになるのか。
そして魔法の先生、魔法使いとか魔女とかがいて教えてもらえれば俺も単独で魔法の使用が可能?
ダメだな、レイの言うとおり人っ子一人見つけられない現状、可能性はほとんどゼロだ。
(やっぱり教えてもらったりしたら覚えられるものなの?)
――――肯定、でなければ魔本魔法ですら使えませんから。
魔法の才能はありってことか、というか俺が魔法を覚えなくても、レイに記述されてる魔法が増えればいいんじゃないかこれって。
あ、でも無理か……技能は一人に四つ、今ある魔法でレイの技能は埋まってるから新しく覚えるとしたら一つ消さなきゃならないかもしれない。
――――そんなことよりも、ここはメリーを収納してここから離れたほうが良いです、先ほどのイーグルがまだ上空をうろついていますので。
考え込んでいると、レイが声をかけてきた、どうやら警告のようだ。
執念深いやつめ、というかシロはもう居ないのにどうして襲ってこないんだ?
やっぱり木の下に入るのは避けたいのか、それとも……まさかメリーが怖いのか?
(マジか……でもそれって移動しても襲って来るんじゃね?)
もしメリーに対して警戒をしているとしたら、それはメリーを収納しないほうがいいってことなんだけど。
でもいつまでもここに居続ける訳にもいかないし……。
レイからの返答次第だが――――。
――――……。
(だんまりかよ! 何か言ってよ!)