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4匹目:マジックブック/魔本/属性:全

2016/01/04ちょっと増量。

「パパー、いつまでこうしてたらいいの?」


 俺は芋虫にパパなどと呼ばれたくはない――――じゃなくて、俺は今アゲハに木の枝の先端に糸でぶら下がるように指示を出している。

 同じ存在であるはずなのにどうして人化と魔物状態ではこうも違うのだろうか、それとも蝶にでもなれば少しは変わってくるのだろうか?


「んーもうちょっとかな」


 遠くの空を見上げ獲物が周囲にいないかと確認する……が、今のところその姿はまだ確認できない

 俺の横には狼姿のシロが控え、スライム状態のブルームはアゲハのぶら下がる枝の上で待機。レイはいつもどおり俺の股間の前だ。

 今、俺達が何をやっているかといえば偵察要員の確保……イーグル捕獲作戦だ。


 イーグルの主食はワームである、だからワーム状態のアゲハを枝に吊るしておけばその内飛んでくるだろうという算段だ。

 もちろんアゲハを危険な目に合わせるつもりもないのでシロとブルームに待機してもらっている。

 いざとなれば収納することも視野に入れているので問題はないだろう。


 (ま、こんなんで本当に来るかどうか怪しいけどな。)


 ――――肯定します、彼女よりどちらかといえばマスターを吊るし上げた方が来るかと。


 (名前つけてから本当よく喋るようになったよね、レイは……つか俺の方がいいってどういうことだ?)


 ――――マスターの特性、フェロモンは特定の魔物を惹きつけるものでして、こうして彼女を餌にするよりはマスターが発汗した後風通しの良い所に居れば風下の方にいる仲間になる可能性のある魔物が沢山寄ってくるかと。


 汗かいて風通しの良いところに居たら風邪をひく気がするからやらないが、アゲハも退屈そうだしそろそろ辞めるか……そう思いアゲハの元へ近づいたその時だった。


 バサバサッ。


 凄まじい羽音と共に俺は空へ舞い上がった――――股間にはレイが居るがアゲハやシロ、ブルーム達を置き去りにして俺はイーグルに攫われてしまった。


 俺を攫ったとなると♀の可能性が高い、そんで希少種なら晴れて俺の仲間入りとなるが……。

 見た感じはそのへんのイーグルと姿形や色が違うということは感じられないが、ここから見えない部分が変わっているという可能性もある、頭とか背中とかな。


(やべぇ目が回るんだけど、レイ、こいつは仲間になるのか?)



 ――――否定、この個体は♂です……どうやら餌として捕獲されたようですね。


 もしかしたらホ……同性愛の可能性もあるがそれは嫌だなぁ。

 というか餌って、鳥って肉食なのか? いや虫は肉になるのか……どうなんだろうか、でも魚とかも食べるだろうしな、ネズミとか考えたら肉食余裕じゃん。


(なんでさ、アゲハが居ただろう?)


 ――――推察するに、きっと取り違えだったのでしょう、しかし思った以上に肉質でこれでいいかと思っているようです。


 そうだな、虫なんかより断然俺のほうがうまそうに見えるだろう……俺だって虫か人かの二択なら人を……いやこの話はやめよう。


(その魔物が仲間になりたいかどうかが分かるレイにとって魔物の感情を読み取ることは容易い事らしいが、俺はこのままこいつの雛の餌になるのか?)


 ――――どうでしょう? 一度どこかで降りてゆっくり出来るところで一度啄まれその後口移しで与えられるのではないでしょうか。


(どっちにしろ嫌だけどここで暴れて地面に落ちても死んじゃうからな俺……なんとかならないか?)


 ――――一度地上付近に降りてさえくれればなんとかなりますね、今シロが走って追いかけてきてくれてますから。


「マジかよ! 流石シロだぜっ後でモフモフナデナデしてやるからなー!」


 と叫んだら、少し遠くからワォーンという遠吠えが聞こえた……少し希望が見えてきたな。


 それからしばらくしてイーグルは近くの木の枝に止まってくれたので俺は全力で――――転げ落ちた、後先考えずにってやつだね、当然やつも追ってくるかと思ったがそうでもなかった、何せ。


「ボスー!」


 シロがすぐそこまで来ていたからである、空の上や木の上ならばいざ知らず地上では流石に分が悪いと判断したのか忌々しそうにこちらを見ている。鳥の表情なんてわからないけど。


 ――――肯定、相当悔しがっています……しかしこの後は如何なさいます?


 (そうだな――――そういえば俺って地面に落ちてる最中だったな……どうしよう?)


 ――――でしたら私にお掴まりください。


 そう言って俺の股間から移動したレイを俺は咄嗟に抱きしめた、と言っても本だが……ゆっくりと落下速度が落ちて……ようやく地面に足が付いたあたりで停止した。

 そしてそのレイが停止した位置というのが……大体俺が地面に立ったときに股間がある高さだった訳だけど。


 ――――肯定、これはマスターの股間位置の登録データを用いた緊急停止動作です。


(俺は自分の股間に助けられたと言うのか……)


 なんか嫌だな、そんな事を考えながら地面に腰を下ろすとそこにシロが突っ込んできて押し倒されてしまった、さらにシロは犬がじゃれる様に俺の顔をベロベロと舐めまわす。


「うわ、なんだよっや、やめろよ、シロ! お座り、お座りしろ!」


 しかしシロは止まってくれない――――こんな事なら芸を仕込んでおけばよかった。

 俺はそのままシロに蹂躙……モフモフペロペロされまくった別に嫌ではないがシロの唾液でべっとりとなった顔を今すぐ何かで拭いたいが……布なんてものはない。

 仕方がないので俺はシロの毛皮に顔を埋めて、擦りつけることによって拭き取るとこにした……口の中に白い毛がたくさん入ってしまったが。


(それでだ、ブルームとアゲハ置いてきたがどうしようか?)


 落ち着いたシロの背に跨り元居たところに帰ろうとしたのだが、俺もレイも飛んでいたため現在地がよくわかっていない、更にシロならば帰巣本能で! と期待したがそもそも群れで行動し決まった巣穴を持たないウルフにそんな本能はなかった。


 ――――提案、『ウカブマケロドム』を使われてはいかがでしょう? 元の場所には戻れませんが、彼女たちを回収する事は可能ですよ?


 ああ、その手が……ま、あの環境は気に入っていたがいつまでもスタート地点で燻ってもいられないだろう、今はブルームやシロ、ついでにアゲハもいる少し移動しながら仲間探しをしてもいいだろう。


「よし、じゃあそうするか……『ウカブマケロドム』!」


 呪文を叫ぶとまず隣で、ちゃんと『お座り』を学習したシロが赤い光に包まれて消え、次に少し離れたところに赤い光線が放たれ、直ぐ様引き返してきた……なんか舌を伸ばしたカメレオンみたいだよな、今の。


 ――――回収完了です。


(そうか、ご苦労さん)



 ここは魔物がうじゃうじゃ住んでる魔の大陸、そこかしこの茂みには数多の種類の魔物が潜んでいる――――俺は果たしてこの地で全裸で生き延びられるのだろうか?

 このどこまでも続く青空を眺めてそう思うのだった。


(…………。)


 ――――マスター後ろの草陰に何かいますよ?


(……気づいてたから現実逃避をしてたんだよ。)



  俺の異世界全裸生活の道はまだまだ険しそうだ。差し当たっては背後の気配をどうするべきか、俺は命の選択を迫られていた。

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