27匹目:エレキラット
むしゃ武者ムシャMusyaバリBari罵詈ばり……咀嚼音を立てながら美味しく無抵抗の魔物達を食す。
結局何もしないままただ食されるのを待つ皿の上の料理みたいに魔物達は微動だにしなかった……というか噛んでるはずなのに悲鳴すらあげない。
――――彼らはマスターが手を伸ばした段階で既に絶命してました。死因はショック死ですね……その、今度から合体をなされる場合は私は外してくださいね?
確かにこの姿は少々ショッキングだ、下手すると味方……アゲハやファイなんかもショック死しかねない。
――――そもそももう合体限界ですけどね、私かマスターは合体が固定されることはないので呪文を使わなくても時限性で勝手に解除されます。……三……ニ……一……零。
体を引き裂かれるような感触とともに俺は宙に投げ出される、その姿は人間の全裸、どうやら魔物化も同時に解除……というのか定かではないが元に戻っている様だ、レイも股間の位置にある。
マイは……あれ? 居ないぞ?
「マイ! どこいった?」
――――合体時に体力を全て使い果たしたので強制収納されました、そもそも私と合体した時点で半分収納されているようなものです。
(それって、俺も収納可能なのか?)
――――一応可能ですね、でもそれは緊急時の逃走などの手段です。
イーグルの巣の時にそれがあればもうちょい楽ができたものを……無いものねだりしても仕方ないか、それにもしそういう方法で脱出してたらヒスイやルナとは恐らく会えなかっただろう。
(ところでさっきの連中がこの辺にいる魔物の標準の強さなのか?)
レベル四十代がうようよしている様ならさっさと離れたほうがいい、そもそもチュートリアルをクリアしたとは言え俺はまだ初心者のようなものだ、なので出来ればテレポート前に居たあの研究施設みたいなとこに戻りたい、大分時間もたったしあいつらはもう居ないだろう。
――――そうですね、あれが際立って強い個体というわけではないです。周囲にこちらの様子を伺っている個体もいますから。
(じゃあさっさとここから移動しないとな、ルナは出せるか?)
先ほど合体限界で戻したばかりなので再度召喚する事ができるか分からない。
――――一応可能ですね、少し疲労していますがあそこに戻るぐらいなら頑張ってくれるはずです。
「よし、『ノマソレド・ルナ』」
レイの瞳から黒い涙が零れたかと思えば、それが地面に落ちてまるで水面かのように波紋が広がりそこから黒い闇が煙のごとく吹き出して、それが人型になると、色付きルナになった。
(召喚もリニューアルしてるのか)
――――ええ、一つの仕様変更をするとなると中々上手くいかないので全部変える羽目になりました。
少しトゲのある言い方をするレイ、これは労ってやらないとな。
(ああ、ありがとうな、俺のために)
言葉だけじゃ足りないと思うのでレイの表紙を軽く撫でてやる……傍から見たら股間を掻いているようにも見えるかもしれないが。
――――! っど、ういたしまして……私はマスターのパートナーですからね、サポートは当然です。
そんな事を言われたらブルームの立場がなくなるんだがな……まあいいや。
「……父上、どうなされましたか?」
そうだ、傍から見ている奴がいたな……というかすっごくお疲れのご様子。
「ああ、疲れてるとこ悪いんだがちょっとさっきテレポートする前のところに戻りたいんだが、可能か?」
「えっと、それはあの白い壁のあったところですか?」
白い壁……そんな建物だったか、色までは覚えてないが多分そうだろう。
「そこだ、行けるか?」
「大丈夫だと思いますけど……テレポートしてすぐに倒れると思いますのですぐさまその本の中に戻してくださいね? ……では」
ルナが俺と手を繋ぐとすぐさま周りの景色が変化し、先ほどの研究所と思わしきところになる。
戻ってこられた……と、安心していたら横からドサリと倒れる音がしたので俺は慌ててルナを収納した。
「おつかれ『ウカブマケロドム・ルナ』」
闇に包まれ、そのままレイの目に吸い込まれていくルナ、これで俺の護衛は居なくなったが一応ここは集落っぽいし魔物は居ないだろう。
そう、油断しているところで。
――――マスター! 危ないっ!
その声に驚き背後を向くと――――というかなんとなく背後を向いたら股間にドスンという衝撃を受けた……レイがいるから痛くはないが勢いで俺はその場で尻餅をついてしまう。
そしてその勢いでかどうか分からないがレイが舞い上がりページがペラペラめくれると一つの情報を俺の眼前に提示してきた。
《図鑑番号・二五》
『エレキラット、雷鼠魔物、属性:雷。』
なんかダメそうなのが来た。