25匹目:アンノウン
――――マスター言ってないついでで申し訳ありませんが……来ます!
(来るって何がだ?)
ガサガサと周囲の茂みから音を立て何かがこちらに向かってくる、それも四方からだ!
――――マスター! 上からも来ます!
レイの声に思わずしゃがみこむと、ヒユシルナとマイが俺を庇う様に背中合わせに立ちはだかる。
現れたのは、先ほどマイの素材に使った魔物と同種の物が一体ずつ、計五体の魔物だ。
――――どうやらそれぞれに番が居たようですね、そして伴侶を取られて怒っているようですが……。
もう既に存在しないがどうやらそれぞれマイに伴侶の面影を見ているようでマイに向かって何か叫んでいるが。
――――無反応ですね、むしろ少し困惑しているようです。マイには彼らの伴侶であった記憶など存在しませんから。
(なんか悪いことしたかな……)
――――ではどうしますか? マイを渡しますか?
(それはそれで違うだろう……倒すしかないかな)
――――そんなマスターに悪い知らせです。
(何?)
――――ヒユシルナの合体限界です、すぐに解除しないと合体が固定化されます。それと敵は全員レベルが四十超えですから解除後対抗できる戦力が居ません。
(詰んだ)
今のところ襲いかかってくる様子はない、恐らくはマイが牽制してくれているのだろうけど、所詮はレベル五……戦いになったら勝ち目などない。
「『オジアキアタゴ・ウカブマケロドム・ヒユシルナ』」
四つの属性エネルギーに分かれてそのままレイの目玉に吸い込まれ収納される、これに驚いたオスどもが騒ぎ出すがマイが牽制……でもこのままじゃいつ戦闘になるか分からない。
(レイ……前に言ったの試すぞ)
――――まさか、アレですか? 危険です……がそれしかないのかもしれませんね。呪文を唱える際は名前で唱えてください。
(了解、悪いな……お前も巻き込むわ)
――――え?
「行くぞ! 『オノマメロドム・ソータ』」
俺が光に包まれる、体が変質していくのが分かる、骨格が歪み前屈姿勢になり、髪や体毛が伸び皮膚を全て覆い尽くし、爪や牙が鋭く伸び、そして腰から尾が生える……俺の魔物化だ!
「ジョウホウヲダセ」
レイとの念話のようなものができなくなっている、声もおかしい。
「……!」
レイも無言でページをめくる、もしかしたら何かしらの繋がりが切れているのかもしれない、というか今までシロとかブルームとか仲間になった魔物がレイと会話していたことはなかったような気がするし、魔物とでは意思の疎通ができないのかもしれない。
《図鑑番号・二零一》
『アンノウン、未知魔物、属性:謎。』
《個体情報》
『名前:ソータ、性別:♂、レベル:十八、特性:威圧、性格:せっかち、技能:魔本魔術、戦闘指揮、成長促進、戦闘技能』
ほう、成長促進とな、そして戦闘指揮と技能、か技ではなく純粋に爪や牙、尾を使った体術的な技術のことだろうか。
しかしこのレベルではまだ奴らには勝てない……それに今にも飛びかかってきそうだ。
「サテ、ツギダ『オトニオジョオノマム・ソータ・レイ・マイ』」
「……!?……!」
レイが何か言いたげだが無視だ、それに意思疎通ができなくなる前に言ったよな、巻き込むからって――――そして俺達はそれぞれ属性エネルギーに変換され一つになった。