18匹目:ゲート
俺は今とても気まずい状況にある……それは自業自得とも言えるのだが如何せんタブレット端末の扱い方がわからないことがデカイ。
ただでさえ若干遅れ気味にやってきたというのに説明の最中も操作の仕方がわからず担当者に何度も質問し終いには説明をしていない女性担当者が横に来てくれて俺の代わりにタブレットを操作してくれるのだ。
おかげで他の三人からは白い目で見られる。
「えー、ですからこの異世界ゼンラートでは……」
正直説明の半分も頭に入ってきてない……その理由は担当の女の人にあった。
最初は気がつかなかったがこの人、俺をテレビの中に引きずり込んだ人だ。
扇情的なストリップなどしてくれた人が目の前にいてしかも今の角度だと谷間が見えるっていう、これで野郎の話に集中できるわけないよね!
「ですのでこのプロジェクトは女神ドーヌからの支持であり我々ゼンラートの民にとっては重要……」
しかし一部聞き捨てならない事があったのでそれだけは覚えている。ゼンラートは基本服など着ない主義の国だったが異世界、というかこっちの世界から衣服文化が流れてきてなんとか。
元々の全裸文化が滅亡の危機云々、故に俺達は全裸生活を強いられたと。……そう、俺達つまり紅一点な名も知らぬ彼女もってことだ。
「みなさまは普段から服を着ない時間が平均して長く――――」
名前も知らない女の子があんな世界で全裸だったと思うとついついチラ見からガン見に変わっていて、いつの間にか気がつかれて侮蔑を含んだ睨みつけるが飛んでくるのだった。
「――――以上を持ちまして、説明を終了したいと思います。お疲れ様でした……ではこれより異世界に繋がるゲートを開きます」
担当の野郎が立ち上がると、女の方もそれに続き部屋の奥の壁に書かれた魔法陣の前まで進みそこで魔法陣に手を伸ばし、何やら呪文を唱えた。
すると壁にぽっかりと先も見えない暗く黒い穴が開く。
「最初は不安やもしれませんから今来ている服だけはむこうでも着用アリとさせていただきます。ではどうぞ、お入りください」
そう言うと担当者二人はゲートから一歩下がった。黒い穴は淵が脈動しておりどことなくそういう魔物のようでもあるがこの際気にしないことにする。
ところで準備はいいがレイはいつになったら返してもらえるんだろうか?
「じゃ、まず俺から行かせてもらうぜ……あ~つーかよ、俺がいままで使ってた魔本とかどうなってんだ?」
青いタブレットを持ったガラの悪い男が俺も気になっていたことを担当者に聞いてくれた。
「はい、それはお手持ちのタブレットがあちらの世界に戻ると元の魔本に戻りますのでご安心を、チュートリアル同様に力は使えますので」
それだけ聞くと青いやつはさっさと穴の中に入っていった、それに緑と黄色が続く……残される俺。
多分あいつらとは仲良く出来そうにないな、黄色い子は残念だが生身の人間は俺にはまだ早い。
「さあ、お早く……穴は直に閉じますよ?」
「ああ、わかった」
俺は意を決して暗闇に一歩踏み出すと、そのまま落下した――――それも横向きにだ。
何を言っているかわからないかもしれないが落下しているような浮遊感が確かにあるのに重心は立っている時のようであり、正面から風が吹き付けるようでもある。
そしてこの吹き付ける風が、俺の洋服をビリビリと切り裂いたのだった……一瞬にして全裸に剥かれる俺。
それに呼応するかのようにタブレット端末が赤く光り始めて、白い煙を吹き出したかと思えば、見覚えのある赤い魔本へと変わり、そして股間の位置に収まったのである。
――――ただいま戻りましたマスター。